ここにリンゴが1個あります。
このリンゴはAというお店で1個100円で売られていて、すぐ近くのBというお店では200円で売っています。あなたはどちらのお店でリンゴを購入しますか?

同じリンゴであれば、当然Aのリンゴを買うことでしょう。Bの店主はこのままではリンゴは売れないので、Aの価格に近づけて販売するようになります。その結果、AとBの価格は同じになります。これを経済学の世界では「一物一価の法則」と言います。

「一物一価の法則」は自由競争市場において一般的な考え方とされています。同一の商品は、同じ価格だけが成立する、と経験則的に考えられているのです。

もちろん、何事にも例外はあります。
それどころか、あえて「価格を差別化」することによって利益を増やす考え方もあるのです。具体的に見ていきましょう。

「シニア割引」が気になる年頃

起業,アイデア
(写真=Thinkstock/Getty Images)

私はもうすぐ還暦を迎えるのですが、この年頃になると「シニア割引」が増えてきます。映画を観るときはシニア割引、ショッピングでもシニア割引、飲食店でもシニア割引……歳はとりたくないものですが、割引は大歓迎です。

それにしても、なぜ、60歳以上の「シニア」になると割引の機会が増えるのでしょうか。シニアだけではありません。他にも子供割引、学生割引、レディスデーといったように年齢・性別等に応じた割引サービスもあります。

映画館を例にとると、シニア割引でも学割でも座席が特別豪華なものに変わるわけではなく、サービスの違いもありません。ただ、値段が違うだけです。「人を見て値段を決めている」ということです。

経済学では、これを「価格差別」と呼びます。
「価格差別」とは、買い手をいくつかのグループに分けて、同じ商品でも「そのグループ」によって異なる価格を設定し、利益を増やす考え方です。

一般の社会人は、映画館の料金が少し高くても、時間さえあれば映画を観に行く回数はそれほど減りません。しかし、学生は、たとえ時間があっても金銭的な余裕がないのでたくさんは観に行けません。そこで学生の料金を割安にすることで、映画館を利用できる「機会を増やそう」と考えるのです。シニア割引も同じです。

「価格差別」という考え方は、携帯電話の料金体系にも活かされています。
携帯電話の料金は利用頻度や年齢等でいくつかのグループに分かれ、それぞれの価格が設定されています。なんとも複雑な料金体系ですが、「価格差別」を設けることによって、企業の利益を増やすことができるのです。

「価格差別」で利益を増やす考え方

具体的に「価格差別」で利益を増やすプロセスを見ていきましょう。

ここに「原価が500円」の商品があります。この商品を販売するターゲットは10人です。

10人のターゲットのうち3人は「1000円を出しても購入したい」と考えています。「800円なら出してもいい」と考えている人は5人、そして2人が「600円なら買いたい」と思っています。

さて、あなたは、どのように価格を設定しますか?

600円で販売をすると10人全員が買ってくれますよね。この場合、利益は1000円です(販売価格600円-原価500円×10人=1000円)。

しかし、上記の商品を600円と800円の2種類の価格に「差別化」すると利益は2600円と大きく増やすことができます(販売価格600円-原価500円×2人=200円、販売価格800円-原価500円×8人=2400円、合計2600円)。

このように、「価格差別」を図れば利益を大幅に増やすことが可能となります。

駅前のあれも「価格差別」ですね

「価格差別」が効果を発揮するのはターゲットの年齢や性別だけでではありません。「時間」の差別化も有効です。

たとえば、正月や夏休み等のオンシーズンになると航空運賃やホテルの宿泊費は割高となります。それは、この時期に「需要が集中」するからです。割高でもそれを利用したいと考える人が多いからです。逆にオフシーズンには、旅行客が減ってしまうので、割引料金を設定するケースも見られます。

こうした「時間」の差別化は、深夜のタクシー料金や電気料金にも見ることができます。

駅前などで見かける自転車の駐輪場も「時間」の差別化がなされています。ちょっとした買い物で利用する場合、2時間までは無料、それ以降は8時間までは100円といったような料金設定です。駐輪場の登場により、駅前の放置自転車もずいぶん解消されたように思います。

私は出版プロデューサーとして活動しているのですが、ターゲットのニーズや属性、時間等に応じて「価格差別」を図ることが、収益の最大化を目指すうえで有効であると経験的に理解しています。

「女性に人気のお店」には男性客も集まる

ところで、最近は見知らぬ男女が「相席」する居酒屋等が話題になっているようです。相席になれば、女性だけは無料になるのだとか。無料にすることで、たくさんの女性が来店するようになると、それを目当てに男性客もたくさん集まり、結果的にはお店の利益になる……という考え方なのでしょう。なかなかの評判のようですが、これも「価格差別」の一つです。

さて、読者のみなさんがもし起業されるとしたら、どんな「価格差別」を考えるでしょうか。そんな観点から思いを巡らせてみるのも楽しいものです。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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