契約更新を機に家主から一方的に「家賃の値上げ」を言ってくる場合もある。値上げは困るが、抵抗すると契約更新をしにくい雰囲気である。どのように話し合ったらいいのだろうか?
契約更新と家賃の関係
先日家賃の値上げについての相談があった。
相談者のAさんは2年前にマンションを借りた。間取りは3DK、築30年ながら、駅から5分という利便性もあり、家賃14万5000円、共益費1万円である。来月は2年に1度の契約更新であるが、先月家主から「家賃の値上げ」について通知があった。
家主は、「昨年から駅前が大規模開発を行っており、近辺の地価が上昇している。それに伴って周辺マンションの家賃も上がっているので、ここのマンションの家賃も値上げしたい」と言う。
確かにマンションの最寄り駅では、大規模開発が進行中で、新しいマンションが次々の建設されている。当然地価も上がっており、家主が「次回の契約更新から家賃を10,000円値上げする」という主張もわからないではない。
しかしAさんは、「現在勤めている会社の給料は2年前から上がっていませんから、10,000円の値上げは、きついです」と言われた。「どうしたらいいでしょうか?」と、筆者の事務所に相談に来られた次第である。
・【保存版】2019年、知らないと損する「お金のはなし」
・相続対策に失敗した「元富裕層」の悲惨な末路
認められる理由とは?
まず筆者はAさんに、家賃の値上げが認められる条件を説明した。
家主が、マンションの借主に家賃の値上げを申し出るには、借地借家法第32条1項に記載されている3つの条件のいずれかを満たすことが必要である。
1.土地や建物の租税等の増加によって、土地、建物の価格が上がり、現在の家賃が不相当となった場合
2.経済事情の変動により、現在の家賃が不相当となった場合
3.周辺の類似物件の家賃と比べて、不相当となった場合
つまり、「税金の増加によって建物の価格が上がったこと」「経済事情が変動した、つまり物価が上がったこと」「周辺の類似物件と比べると安価になったこと」のいずれかに該当しなければならない。
対抗策はないのか?
基本的に、家賃の決定は、家主と借主との合意があって初めて成り立つ。これは、「家賃の値上げ」も同様だ。従って、できるだけ両者の話し合いで合意するべきで、いきなりの強硬な手段は、話をこじらせるだけである。
そこで筆者は、Aさんに次の3点を確認するようにアドバイスした。
まず現在住んでいるマンションの「固定資産税評価額」である。つまりマンションの価値が上がったという根拠である。最もわかりやすいのが、毎年度市区町村役場から送られてくる固定資産税支払通知書である。家賃値上げの根拠となる「固定資産税の増額」、つまり建物の価格の上昇が確認できるはずだ。これは家主が持っているはずだ。
次にマンションの賃料が前年と比べて上昇しているか否かの資料である。多くの調査会社で、1平方メートル当たりの賃貸マンションの賃料の変動について、報告書を公表している。これによって、自分の住む地域の家賃が上がっているか否かが分かる。
3つ目は周辺の同じようなマンション(間取り、築年数など)の家賃を調査することである。借主がインターネットで調べられる。
以上3点の資料がそろったら、できるだけ早めに家主と交渉をしてみる。両者の意見が真っ向から衝突することが考えられるが、感情的にならずできるだけ穏やかに話し合ってみるのである。
もしそこで、値上げについて納得できるのであれば、そのまま更新の手続きを行うことになるが、納得できなければ、「納得できないので現状の家賃しか払いません」と宣言し、毎月家主に手渡し、あるいは振り込むことになる。
もし家主が「値上げした家賃しか受け取らない」と拒否する場合は、自分に家賃の支払いの意思があることを示すために、近くの法務局に行って、供託の手続きを行えばよい。
家賃は光熱費などと違って自分で節約しようがないので、一度確定してしまうと確実に毎月出ていくお金となる。もちろん「絶対値上げに応じされない」と意固地になるのは、後々の家主との付き合えを考えると得策ではないが、根拠となる資料をたたき台にして納得いくまで話し合うことが必要だ。(井上通夫、行政書士)
・【保存版】2019年、知らないと損する「お金のはなし」
・相続対策に失敗した「元富裕層」の悲惨な末路
【関連記事】
・入居者とのトラブル発生の原因、その対処法
・10年後も食える人・食えない人の決定的な違い
・老後破産に陥りやすい人の特徴とは 予防対策を考える
・実は不動産投資で失敗している人は多い!
・投資でよくある失敗事例。なぜ相場で負けてしまうのか?