「朝の時間を活用する」、「集中できる時間を増やし、業務の質を上げる」こういったことは、分かっていても案外できないものです。そんなときは、人の力を借りましょう。プライベートのパートナーや、結婚している人であれば旦那さんや奥さんと、朝の時間を活かすことのメリットを理解してもらい、毎日の生活を変化させる手助けをしてもらいましょう。

(本記事は、永井孝尚氏の著書『 残業ゼロを実現する「朝30分で片付ける」仕事術 』KADOKAWA(2017年6月15日)の中から一部を抜粋・編集しています)

早起きは何倍もお得!

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(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

朝早くから起きて活動していると、時々、「そんなに早起きして活動するなんて、ストイックですね!」と言われることがあります。

しかし、私は睡眠時間を削っているわけではありません。実は、起きている時間を3時間前倒ししているだけなのです。

私は、嫌なことを我慢して続けられるほど禁欲的なわけでもなければ、意志が強いわけでもありません。朝シフトをするのは、そうしたほうが得られるものがたくさんあるからですし、そのほうが楽だからです。

早朝出勤すると、それほど混んでいない電車にゆったりと座れます。とても楽ですし、本を読んだり、パソコンを広げたりして、自由に時間を使えます。

私からすると、普通の通勤時間帯に、ギュウギュウ詰めの超満員電車で、1時間も我慢して出勤するほうが、ずっとストイックです。わずか3時間、早い時間にシフトするだけで、この体力を消耗する状況を避けることができるのです。

しかも、誰もいないオフィスでは、仕事がどんどんはかどります。早朝ですから、電話もかかってきませんし、誰にも邪魔されずに、目の前の仕事に集中することができます。

さらに後ほどご紹介する朝シフトを前提にした仕事術を組み合わせることで、夜に残業するのと比べて、朝の生産性は6倍に高まります。

時間は増やせない。中身を濃くするだけ

時間には限りがあります。1日は誰にでも平等に24時間しか与えられていません。誰も時間という資源を増やすことはできません。増やせないのであれば、中身を濃くするしかないのです。

人生の限られた時間をうまく活用し、より密度の高い時間を過ごすことができれば、仕事だけでなく、プライベートもライフワークも充実します。朝シフトは、この限られた時間という資源を有効活用するための方法論。しかも、禁欲的ではなく、むしろ快楽的な方法論なのです。

どんなに眠たくても、いつかは起きなければいけません。布団の中から抜け出るのが辛いのは、何時に起きても同じです。それだったら、むしろ早く寝て、その分早く起きて、ゆったりと通勤したほうが、ずっと楽しいですよね。

ただ、朝シフトするのにはちょっとしたコツがあります。多くの人が朝シフトできないのは、このコツがわからないからです。本章では、朝シフトがうまくいくためのコツを順番にご紹介します。

周囲の目が気になって早く帰れない

高度経済成長期の日本は、遅くまで仕事をすることを美風ととらえる企業が多くありました。しかし最近ではそう考えない企業も増えています。

たとえば、全社残業ゼロで業績好調なトリンプ・インターナショナル・ジャパンや、良品計画(無印良品)は、早い時期から会社全体で「残業禁止」をうたっていました。

また伊藤忠商事は2013年に夜8時以降の残業を原則禁止し、早朝残業の時間外割増金を上げて大きな話題になりました。この結果、夜8時以降の残業者は30%から7%に減り、夜10時以降はゼロになりました。

SCSKも残業代目当ての残業をなくして生産性を高めるために、2015年に残業手当の支給額を一律にして、残業時間が短い人が得する人事制度を始めています。

日本電産は、2020年に残業ゼロを目指し、働き方の仕組みを大幅に変えて、会議時間短縮や資料簡素化にも着手すべく、大規模投資を計画中です。

世の中は「残業撲滅」の方向へと、確実に大きく変わりつつあります。しかしながら、まだ残業が多い職場もたくさんあります。

残業が多い職場で定時退社をするには、勇気が必要です。周囲の目が気になるという人も多いようです。「あいつはあれだけやっているのだから」と言われるような、誰もが認める成果を上げることができていれば周囲の目に対抗できるかもしれません。

しかし「そもそも、そういう成果をあげることが難しいんだ」という人も多いでしょう。
実は定時退社で周囲の人たちが気にするのは、「成果をあげているかどうか」ではなく、「あなたがどんな仕事をしているかが見えていないこと」です。

特に日本人は「不言実行」が美徳とされ、自分の仕事をアピールするのが苦手です。
そのため、「アイツ、早く帰宅しているけど、ちゃんと仕事をしているのか?」と言われてしまうのです。

こまめな「ほうれんそう」で仕事を「見える化」

そこで、あなたの仕事を周囲に「見える化」するのです。

「見える化」といっても、派手にアピールする必要はありません。「報告・連絡・相談」をまとめて「ほうれんそう」と呼びますが、地道に「ほうれんそう」を繰り返せば、あなたの仕事ぶりは上司や同僚の知るところとなります。

たとえば、仕事の進捗状況を上司に「報告」する。何か進展があれば関係者に「連絡」する。判断に迷ったら上司や仲間に「相談」する。そうやって日頃から「ほうれんそう」を心がけていれば、あなたの仕事ぶりに関する次のような情報が、同じ職場にいる人たちに共有されている状態になるはずです。

  • あなたが今取り組んでいる仕事は何か?その進捗状況は?
  • クリアすべきどんな課題があるのか?
  • その解決策は?
  • どんな創意工夫をしているのか?
  • どんな成果が出たのか?

あなたの仕事ぶりが「見える化」されると、単純に「成果」だけの問題ではなく、「あいつは誰よりも早く出社してきているから、早く帰るのは当然だ」といった空気を醸成することができます。

職場に理解者がいれば、周囲のプレッシャーもやわらぎますし、そのうち「じゃあ、私も朝早く出社してみようかな」という同調者が出てきてくれるかもしれません。そうなればしめたものです。朝の効用を思いきりアピールして、職場全体で「ムダな残業ゼロ」を目指せばいいのです。

成果の質と量は「集中できる時間の量」で決まる

実は、会社を早く出ることが問題なのではありません。むしろ、「遅くまで残って仕事をした気になっている」としたら、そっちのほうがよほど問題の根は深いのです。

8時間続けて仕事に集中すれば、誰でも疲労が蓄積します。その状態で残業しても、生産性は下がる一方です。こんなに遅くまで頑張っているのに、できあがった成果の質・量ともに満足のいくものではなかったという経験はありませんか。

同じ2時間でも、朝9時に全員が出社してからの2時間と、まだ誰も出社していないときの2時間では、密度がまったく異なります。ですからそういう経験がある人は、今すぐ仕事の時間を朝型にシフトすることをおすすめします。誰にも邪魔されず、自分の仕事に集中できる時間をどれだけ確保できるかで、成果の質と量が決まるのです。

自分のやるべき仕事をすべて完了し、かつ、仕事の「見える化」をしたうえで、自信を持って、堂々と帰宅したいものです。

一人きりだと続けるのに強い意志がいる

もしあなたが独身でしたら、早起きするかどうかは、あなたの決断次第です。自分で早起きすると決め、決めた時間にちゃんと起きて、始業前の数時間を自分なりに使いこなす。仕事をするのも自由ですし、個人的な勉強時間に充てるのもいいでしょう。

また、早起きを続けられるかどうかも、あなた次第です。「面倒くさい」「疲れた」「明日から早起きすればいい」と言って延ばし延ばしにするのも、「いやこういうときこそ頑張って起きよう」と自分に活を入れるのも、すべてあなたが決めることです。誰にも言い訳ができない分、自分で決めたルールを守るかどうかは、あなたの意志にかかっています。

でも、もしあなたが結婚しているのなら、朝シフトはより簡単に実現する可能性が高くなります。ただし、それにはひとつ条件があります。それは「家族のサポートが得られること」です。

ベッドや布団から抜け出せない自分を起こしてくれる家族がいれば、早起きをサボる確率はかなり減ります。夕食を家族と一緒に食べようと思えば、早く帰宅する必要があります。朝早く学校に出かける子どもと話をしたければ、早起きして朝食のテーブルを囲むのが一番です。
子どもが小さいうちは、保育園・幼稚園への送り迎えが悩みの種のひとつですが、朝シフトをして時間が自由に使えれば、そうした悩みの大半は解消されるはずです。

家族にもメリットがあれば協力してくれる

自分一人で「明日から毎日早起きするぞ!」と決意したとしても、「私は早起きなんてしたくない」と言う家族がいるかもしれません。そういうときは、家族にもメリットがあるようにすることで、相手のサポートを引き出すとよいでしょう。

これは私の実感ですが、生活のリズムを朝中心に回していくと、自分も家族も健康になり、一緒にいる時間が長くなり、夫婦の会話も増えていきます。

とはいえ、そこに価値を見出すかどうかは、あなたのパートナー(男性の場合はあなたの奥様、女性の場合はあなたのご主人)や家族が決めることです。

私の場合、残業続きで帰宅が遅かった私に朝シフトをすすめてくれたのは、実は妻でした。夫である私が朝早く出社してくれたほうが、妻も早く仕事に取りかかることができ、さらに私が早く帰宅するので夕食も一緒に食べることができる、と考えていたようです。
前述のように、2日連続で電車が事故でストップした日、私が「今日は仕事にならなかった」と言うと、妻は「始発で行ってみたら?電車事故が発生する確率も下がるし、座っていけるから楽だよ。満員電車で痴漢に間違われてクビになって一生を棒に振るリスクも減るよ」と提案してくれたのです。

さらに妻は私よりも早く起きて、お弁当づくりをしてくれました。朝シフトは妻にとっても大きなメリットがあったので、全面的にサポートしてくれたのです。

永井孝尚
1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。本業のかたわら朝時間の活用によりビジネス書の執筆活動を続けベストセラーを生む。2013年、30年間勤務した日本IBMを退社して独立。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任し、数多くの企業や団体に講演やワークショップ研修を実施。

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