仕事の優先順位を考えるにあたって、重要度と緊急度は大きな要因です。スティーブン・R・コヴィー博士が『7つの習慣』で示した「時間管理のマトリックス」という考え方を見てみましょう。

(本記事は、永井孝尚氏の著書『 残業ゼロを実現する「朝30分で片付ける」仕事術 』KADOKAWA(2017年6月15日)の中から一部を抜粋・編集しています)

重要度と緊急度で仕事を分類する

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(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

仕事の優先順位を考えるにあたって、重要度と緊急度は大きな要因です。

スティーブン・R・コヴィー博士は『7つの習慣』(キングベアー出版)の中で、「時間管理のマトリックス」という考え方を紹介しています。時間の過ごし方を「緊急」と「重要」の2つの軸によって、4つの領域に分けたものです。コヴィー博士は緊急と重要を次のように定義しています。

緊急……「すぐに対応しなければならないように見えるもの」。「今すぐ」と私たちに働きかけてくるもの。典型的なのは鳴っている電話です。鳴りっぱなしの電話を放っておける人は滅多にいません。

重要……「あなたのミッション、価値観、目標の達成に結びついているもの」。

最終的な成果に関連しているものです。

「時間管理のマトリックス」は、この2つの軸により4つの領域に分けて考えます。ふだんのあなたの仕事を、この時間管理のマトリックスに当てはめて考えてみてください。どれが多いでしょうか?

「締切主導の仕事」が多い人は、つねに締め切りに追われている状態です。そのような人は、自分の仕事の進め方を見直す必要があります。日々の仕事で、”重要だが緊急ではない”「価値創造の仕事」を先送りした結果、”重要かつ緊急”な「締切主導の仕事」ばかりを抱えてしまっている可能性が高いからです。

「時間貧乏」が多い人は、他人の仕事ばかりしていて、自分がすべき仕事ができていない人です。この領域の仕事ばかりこなしている人は時間がありません。忙しい一方で自分のアウトプットはなかなか出せず、生産性は下がる一方です。

相手が本当に重要と思っているのであれば率先してやるべきですが、実は相手はそれほど重要と思っていないことも多く、あなたがその仕事をしていることを忘れてしまっていることもあります。それなのに、あなたは「締切主導の仕事」と勘違いしている場合が多いのです。

「時間のムダ使い」は、何のアウトプットも生み出していない状態です。リラックスすることも必要なので、家に帰った後はこのような時間も必要かもしれません。しかし、こればかりだとしたら問題ですね。

「時間貧乏」と「時間のムダ使い」の仕事は、できれば避けたいところです。重要でない仕事に時間をとられると、生産性が上がらないことはいうまでもありません。

重要だが緊急ではない仕事をどれだけ増やせるか

実は、「価値創造の仕事」こそ、ふだんから着実に実行すべきことです。しかしこの領域の仕事は、緊急性がないため、先送りしてしまいがちです。その結果、「締切主導の仕事」が多くなって慌ててしまう、ということが起きるのです。

「価値創造の仕事」を増やすためには、ふだんからこの「価値創造の仕事」を意識して重点的に行うことが必要になります。そうすることで、「締切主導の仕事」が徐々に減っていきます。

まず「時間貧乏」と「時間のムダ使い」の仕事をなくすこと。そして、できるだけ「価値創造の仕事」を増やして、結果的に「締切主導の仕事」を減らすことが、自分で主体的に仕事を進められるようにするカギです。

意識的に「重要だが緊急ではない価値創造の仕事」を増やして、自分で時間をコントロールできるようにしておきたいところです。

自分一人で完結する仕事はない

仕事の優先順位を考えるにあたっては、他人との仕事の関係も大切です。

仕事は一人で完結するものではなく、必ず他の人とのつながりの中で進んでいきます。前の人のアウトプットを受け取ったAさんは自分の付加価値を加えてBさんに渡します。それを受け取ったBさんが自分の付加価値を追加し、さらにそれを受け取ったCさんが……ということがつながって、最終成果物が顧客に渡ります。

なかには画家のように、一見、自分だけで完結できるように見える仕事もあります。

しかし、その場合でも、展覧会などを開催する場合は、作品をギャラリーに渡す必要があります。一人だけですべて完了できる仕事は、世の中にはありません。

仕事が、あたかも川の流れのようにうまく流れていくためには、上流にいる人からは期日どおり成果を受け取り、滞りなく下流にいる人に成果を渡す必要があります。

前工程の成果を待っている「待ち時間」には仕事は進みませんし、「付加価値」も生み出されません。仕事をスピードアップするためには、この仕事の「待ち時間」を減らすことです。

他人依存度の高い仕事から取り組む

実は個人で簡単な3つのルールを決めることで、待ち時間を減らせます。他人依存度の高い仕事を優先して行うことです。具体的には、次のような3つのルールで仕事を進めることになります。

【ルール1】相手への依頼は、最優先

相手の仕事の成果が必要な場合、まずは相手に仕事を依頼しないことには、何も進みません。このような仕事は最優先で、相手に「仕事の目的」「求めている成果の種類」「納期」を明確に伝えます。相手の処理時間も考慮して、早めに伝えます。ただ、あまりに早すぎると相手は忘れます。タイミングも大切です。

身近なわかりやすい例で考えると、「夕飯の食材がない。でも買い物に行けない」のが、まさにこのケースです。この場合、まず子どもに食材の買い物をお願いする必要があります。作る料理(目的)と、食材の種類と量(求めている成果の種類)、食材が必要な時間(納期)を明確に伝えます。

ただ子どもも意外と忙しいものです。直前にお願いしても別の予定が入るかもしれません。1週間前にお願いしても忘れるのは確実です。たとえば当日の朝にお願いする、というようにタイミングも重要です。

【ルール2】相手が待っている仕事は、2番目

相手が待っている時間は、何も仕事が進んでいないので、チーム全体の生産性は下がっています。この待ち時間を少なくすれば生産性は高まり、チーム全体の仕事時間は短縮され、その結果、自分の仕事の時間も短くできます。

たとえば夕飯づくりを、煮物が得意な妻と野菜切りが得意な夫で、分担するケースを考えてみましょう。子どもが食材を買ってきても、夫が野菜切りを終えないと、妻は煮物を始めることができません。ですから他に優先順位が高い仕事がなければ、夫が真っ先に行うべきは野菜切りです。こうして妻の仕事の待ち時間が短くなれば、家族全員がより早い時間に夕食をとることができます。

【ルール3】自分だけでできる仕事は、最後

他人に依存せず、自分だけで完了する仕事は、締切前であればいつでもできますから、優先順位としては最後です。

たとえば、お風呂洗いが夫の担当だとすると、お風呂を入れる前(締切)までであればいつでもできるので、優先順位を最後にします。

仕事では自分が使用する資料作成などが該当します。

この3つの優先順位のルールは、あくまで他人依存度で考えたものです。実際には納期などで優先順位が変わることもあります。仕事の生産性を上げるための一つの考え方として、お考えください。

毎朝手書きでTo Doリストを書き出す

これまで優先順位の基本的な考え方をご紹介してきました。ここからは、具体的にどのように優先順位を決めていくかをご紹介します。

私は社会人になってから、毎朝行っていることがあります。それは、朝一番でTo Doリスト(やるべきことリスト)を書き出すことです。おそらくすでにやっておられる方も多いことでしょう。

頭の中にある、やらなければいけない仕事をすべて、毎朝、書き出します。今日、明日、1週間、1カ月の範囲で、「やらなければいけない」とわかっている仕事をすべて、毎日書き出すのです。前日のメモも参考にしています。ここで注意すべき点がひとつあります。毎朝必ず「手書き」で書き出す、ということです。

実は私は、パソコンやスマホでTo Doリストを管理していた時期がありました。パソコンやスマホを使うと、再入力の手間がなく、一見効率的です。しかし、何かしっくりこないのです。

たとえば、同じやるべきことでも、数日経つとその内容も微妙に変わりますし、優先順位も変わります。パソコンやスマホを使うと、その変更を反映するのがどうしても面倒になり、一度入力した内容がずっとそのまま残ってしまうのです。結果的にTo Doリストの情報鮮度が古くなります。

結局、私は手書きでの管理に戻りました。実際に手を動かしながら考えることで、リストがどんどん変わっていくからです。

数日前は「やるべき仕事」だったのに、時間の経過とともに「やる必要のない仕事」になることはよくあります。このような仕事は、毎日リストを書き出す中で、自然にカットされていきます。パソコンやスマホでは、この大切な「考え直す」というプロセスを無意識のうちに省略してしまうのです。

永井孝尚
1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。本業のかたわら朝時間の活用によりビジネス書の執筆活動を続けベストセラーを生む。2013年、30年間勤務した日本IBMを退社して独立。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任し、数多くの企業や団体に講演やワークショップ研修を実施。

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