一流店は顧客に手間をかけさせない

先日、妻と都内のウォーターフロントエリアにある外資系ホテルへいく機会があった。ホテルのラウンジで私はコーヒーを、妻は紅茶を注文した。そこで他のホテルのラウンジとの違いを感じた。あまりにもさり気ない対応だったので、運ばれてきた飲み物に口をつけた後になって初めて気づいたのだが、注文時にウェイターはメモを取っていなかった。また、飲み物を運んできた別のウェイターは、何も言わずに私へコーヒーを、妻へ紅茶を給仕してくれたのだ。

一般店であれば、注文を取る人と給仕をする人が別であれば「コーヒーのお客さまは?お茶のお客さまは?」と尋ねるのが普通である。だが、この一流店の対応は実にエレガントで、あまりにも自然に、さりげない手つきで流れるように給仕をしてくれた。そのため、時間が経って後から「そういえば……」とようやく気づいたくらいである。これが一流店と一般店とのサービスの違いかと感激したものだ。

「注文の内容を尋ねない」というサービスの本質、それは徹底的なカスタマーファースト視点から来ている。ウェイターがメモを取る時間を削減し、注文を受けたら即準備を開始、用意が出来たらすぐに提供しているのだろう。実際、驚くほどの早さでコーヒーと紅茶が運ばれてきた。

また、それだけでなく誰が何を注文したのかを確認するのは、顧客に負担をかけることになる。顧客は注文する時に内容を伝え、運ばれてきた時にも「コーヒーを注文したのは私」とウェイターへ伝えることで2回注文内容をいっていることになる。スタッフが努力することで顧客に余計な手間を取らせないようにする、という考えはさすが一流店だと感じた。

そしてこの対応にはお金はかからない。それでいて「さすがファーストクラスの対応だ」と見事に顧客の期待値を超えて、ファンにしてしまうのだから、お金をかけない有益なブランディングといえるだろう。

一流店の素晴らしいサービスの源泉は「挑戦」

一流店の目指すところはたったひとつ、上述した通り「顧客の期待値を超えること」である。一流店はこの壁を超えるために、顧客側の「慣れ」という最大のハードルを超えることとなり、必然的に常に挑戦を余儀なくされる立場に置かれることになる。その挑戦を継続しようとする姿勢こそが、いつの時代も顧客から求められる「素晴らしい!」と評される一流のサービスを生み出す源泉となるのだ。(黒坂岳央、高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)

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