江戸時代には約1500種類あって、今は約50種類しかないものはなんだろうか。それは税金である。税金についての理解がきちんとあれば、損をする機会も少なく出来るだろう。しかし税金は難しいので、なかなか覚えることが難しい。ここではポイントをざっくりと分かりやすく紹介していこう。
(本記事は、さんきゅう倉田氏の著書『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』総合法令出版、2017年12月24日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
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税金とは日本というグループに支払う「会費」
「税金のことを知りたい」「得をしたい」と思ったらまずは、税金とは何かという基本的なことから考えてみましょう。
税金については、「国民の義務である」と、学校で習ったと思います。憲法第30条には「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」と定められています。
福沢諭吉さんは『学問のすすめ』で「税金とは国と国民との約束である」と言いました。また、「税金とは社会に対する会費である」とも言われています。
何かしらの集団を運営するには、お金がかかります。趣味のサークルや同窓会などの小さな集団でも、その集団に入りたければ会費を払わなければいけません。
税金は日本というグループに入るための「会費」なのです。現在の日本では、お金をたくさん稼ぐことが悪いこととされる風潮があります。
しかし、実際はお金持ちがほとんどの税金を払っていて、所得の低い人はすこぶる恩恵を受けています。年収1000万円以上の人は労働者全体の4%程度で、彼らが納めた所得税は、日本の所得税の約半分になるというデータもあります。
効率よく稼ぎ、税を負担している人たちに敬意を払えば、払っていない人たちももっと過ごしやすく快適で文化的な生活を送ることができるでしょう。
税金はこんなことに使われている
学校、警察、消防、医療、道路、信号、図書館、公務員の給料など、私たちが納めている税金は生活に欠かせないありとあらゆるところに使われています。
小中学校の教科書は無料、授業料も無料です。警察にお金を支払うこともありませんし、火事で消防車を呼んでもお金はかかりません。
病院に行って治療しても、治療費は3割の負担で済みます。あなたが毎日歩いている道路も税金で作られています。そういった、公的な施設で働く人や公務員、国会議員の人たちは、税金で給料を払うことで、働いてくれています。
主な税金を1分で理解しよう
現在、日本には約50種類の税金があります。
国に納める国税が24種類、地方自治体に納める地方税が約25種類ですが、都道府県ごとに定められている地方税は地域によって若干の違いがあり、税金に携わる職業の人でもすべてを把握している人は稀です。
また、江戸時代には約1500種類の税金があったそうです。
ここでは、 50種類の税金の中で、みなさんの生活に大きく関わり、社会人として知っておくべき7つの税金を紹介します。この7つさえ知っていれば、一般的な社会生活を送る上で恥をかくことはないでしょう。
主な7種類の税金
所得税
所得にかかる税金。所得は10種類ある。
印紙税
印紙を貼って納める税金。印紙を貼ることが義務付けられている書類がある。
相続税
亡くなった人から財産をもらったときにかかる税金。
贈与税
生きている人から財産をもらったときにかかる税金。
法人税
法人の所得にかかる税金。
住民税
所得にかかる税金。地方自治体に納める。
消費税
物を買ったり、サービスを受けたりしたときに、支払った金額の8%を負担する税金。納めるのではなく負担している。納めるのは商売をしている人や会社。8%の内訳は、消費税(6.3 %)+地方消費税(1.7%)
所得の種類は10個ある
所得とは、収入から経費を引いたものです。会社から給料をもらったり、自営業で物を売ったり、マンションの賃貸料をもらったりと、所得はその性質によって10種類に分かれています。
それぞれに課税の方法も異なりますので、自分が得た所得が10種類のうち、どれに該当するかを把握しておく必要があります。
10種類の説明の前に、もっとも身近な2つの所得について簡単に紹介します。
(1)給与所得…会社員、パート・アルバイトの人の給料。納める税金は収入によって金額が変わります。勤務先が計算してくれているので、気にする必要はありません。
(2)事業所得…いわゆる自営業やフリーランスと呼ばれる個人事業です。年間の旅費交通費や接待交際費などの合計が経費になります。
節税するなら忘れることなかれ 主な控除
控除とはなんでしょう。広辞苑には、「金額・数量をさしひくこと」とあります。
確定申告に関わる「控除」は、所得から差し引くことができるお金のことをいいます。
所得に税率を掛けると、所得税が計算できます。所得から差し引く控除が多ければ、納める所得税が少なくなります。
つまり、控除が多ければ多いほど、みなさんは得をするわけです。
控除は、たくさんあって、それぞれ条件や控除金額が異なります。
代表的な控除は、年金や健康保険料の支払金額を控除できる社会保険料控除や、扶養家族がいるときの扶養控除など。
あまり知られていませんが、盗難や災害に遭ったときにも控除があります。
主な控除と控除金額
雑損控除
(1)損失-所得の10% (2)(損失のうち災害関連)-5万円
お金や物が、災害、盗難、横領によって損害を受けたときに受けられる。
医療費控除
最大200万円
医療費を支払ったときに受けられる。年間で10万円を超えると控除。配偶者や子ども、親の分も合計して控除できる。
社会保険料控除
支払った保険料の額
年金や健康保険を支払ったときに受けられる。配偶者や子ども、親の分も合計して控除できる。
小規模企業共済等掛金控除
支払った掛金の額
確定拠出年金(iDeCo、DC、401K)や小規模企業共済の掛け金を支払ったときに受けられる。
生命保険料控除
最大12万円
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払ったときに受けられる。
地震保険料控除
最大5万円
地震保険を支払ったときに受けられる。
答えられる?年末調整と確定申告の違い
会社はあなたに給与を支払うとき、所得税の源泉徴収を行っています。源泉徴収というのは、給与から所得税を天引きすること。給与明細を見れば、いくら源泉徴収で天引きされているのかがわかります。
でも、会社が1年間に源泉徴収をした所得税(甲)は、あなたが1年間に納めなければいけない所得税(乙)と同じになりません。
会社はほんのちょっぴり多く源泉徴収していますので、甲の方が多くなります。12月になり、あなたの年収が確定したら、この甲と乙を同じにする手続きを行います。これが、年末調整です。
ほとんどの場合、年末調整によって、所得税が還付されます。年末調整の手続きにおいて、あなたは何もする必要がありません。
1年間の所得と所得税を計算し、3月15日までに税務署に確定申告書を提出して、納税する手続きが、所得税の確定申告です。会社員の方なら、年末調整されたあとに源泉徴収票がもらえるので、それを使って確定申告をします。
所得税以外にも、法人税や消費税、相続税、贈与税の確定申告があります。会社員として一般的な生活を送るのであれば、所得税以外の確定申告はする機会がないかもしれません。
会社員の方が、所得税の確定申告をするのは、医療費控除を受ける場合、ふるさと納税がたくさんある場合、給与所得以外の所得があった場合などです。
やり方がわからなくても、税務署に行けば、無料で優しく教えてもらえます。また、税理士の先生にお金を払って確定申告をやってもらうこともできます。
有料ですが、節税のアドバイスもしてくれるので、所得の多い方や、給与所得以外の所得のある方は、一度相談に行ってみるといいかもしれません。
どんな税理士の先生と契約すればいいかわからない方は、紹介できますので、僕にご相談ください。
つまり、年末調整は会社がやってくれる手続き、確定申告はあなた自身がやる手続きになります。
ぜんぜん違う所得控除と税額控除
所得控除は、所得を計算した後、所得から差し引く基礎控除や配偶者控除、医療費控除のことです。
一方、税額控除は、所得税額を計算した後、税額から直接差し引く控除です。住宅を購入したときの住宅借入金等特別控除などがこれにあたります。
日本の所得税は所得が高いほど税率が上がる累進課税制度なので、所得控除はお金持ちの方が有利(1)、税額控除は、所得の低い方が有利(2)になります。
例えば、(1)所得が1000万円の人は、最大で33%の税率で所得税を払います。所得控除が5万円あれば、5万円の33%、1万6500円の所得税が減ります。
(2)所得が200万円の人は、最大で10%の税率で所得税を払います。所得控除が5万円あれば、5万円の10%、5000円の所得税が減ります。
給与と給料と賞与の違い
会社員であれば、ほぼ毎月もらう給料。給与と言ったり、ボーナスは賞与と言ったりします。これらは、言葉は似ていますが、意味合いがほんのちょっぴり違います。
給料=基本給
給与=給料+残業手当など
賞与=ボーナス
賃金=労働の対価として支払われるもの
給料と給与と賃金は、ほとんど同じものです。それぞれを言い間違えても特段の問題はありません。
ただ、賞与は全然違うものなので、それだけ覚えておけば十分です。
ちなみに、昇格はクラスが上がること、昇級もクラスが上がること、昇給は給料が上がること、昇進は地位が上がることです。
(1)給料
基本給。毎月変動がない
(2)給与
給料に残業代や住宅手当といった手当を加えたもの
※賞与は毎月の給与とは別に支払われるボーナスのこと
節税と脱税と租税回避の縮税三兄弟
納税額を減らすように工夫しようとすると、その方法は3種類に分けられます。合法なもの、非合法なもの、曖昧なもの。それら3つをかんたんに紹介します。
節税
納税が少なくなるように合法的にがんばること。経費で物を買い、特例などを活用することで、納税額を下げる方法です。独学で勉強するか、税理士の先生に依頼して行います。
脱税
ルールを破って納税を減らすこと。厳密にいうと、国税局の査察部に強制調査を受けて逮捕されるような事案が脱税になります。
税務署や国税局の税務調査で、重加算税の対象となるような否認事項があっても、脱税にはなりません。それらが報道された場合は「所得隠し」と表現されます。
租税回避
圧倒的に大きな会社が、税率の低い国や各国の税法の違いを利用して、納税を減らすこと。基本的に、国際的な企業が資金や優秀な人材を使って、とてつもなくよく練られたスキームを考えて行います。
これらのスキームは、ほかのグローバル企業も模倣して行うようになりますが、中小企業では、コストに見合ったパフォーマンスが得られないので、大企業のみが行い、大きな会社になればなるほど法人税の納税率が下がることが問題視されています。
社長たちが震え戦く税務調査
税務調査とは、確定申告の内容が正しいか、帳簿や証拠書類を確認するものです。確定申告をしない会社員の方には縁がありませんが、会社や個人事業者には税務調査が行われ、その結果、税金を追加で納めることになります。
所得税も法人税も消費税も贈与税も相続税も、確定申告をすれば税務調査があります。事前に連絡があって調査の日程を決めることもあれば、いきなり会社にやってくることもあります。
調査官がやってきたら、確定申告書を作るために使った書類を見せます。いわゆる、「帳簿」です。
帳簿には、損益計算書、貸借対照表、総勘定元帳が含まれ、これら以外にも、領収証や請求書、見積書、契約書、パソコンのデータ、従業員に関する資料、預金通帳を確認します。
確認して誤りがあれば、後日、確定申告をやり直します。これが「修正申告」です。修正申告をすると、加算税や延滞税がかかるので、支払う税金が最初から正しく申告していた場合より増えます。
調査は、大きな会社でなければ、半日~2日で終わります。その後は、電話やFAXでやりとりをして、修正申告をし、納税すると終了です。
あなたの会社にやってくる調査以外に、取引先に行く「反面調査」や、あなたがお店をやっていれば調査の連絡をする前にこっそり来店する「内観調査」があります。
内観調査では、飲食店であれば食事をし、美容院であれば髪を切り、パチンコ屋であれば1万円分遊び、風俗店であれば女性と戯れます。
税務調査では、専門的な知識を持った職員に対して、納税者は太刀打ちできません。山王工業にカクとヤスと洋平と高宮と野間で挑むようなものです。
デスピサロに、ひのきのぼうとかわのよろいの装備のみで話しかけるようなものです。DIOと波紋だけで戦うようなものです。
必ず、税理士を雇いましょう。納税者にとっての税理士は、ぬ~べ~にとっての鬼の手です。
加算税と延滞税
加算税とは、確定申告が期限より遅れたり、確定申告の内容に誤りがあったり、確定申告の作成過程で不正を行ったりすると課せられるペナルティです。
財務省によると、加算税は、「申告納税制度の定着と発展を図るため、申告義務が適正に履行されない場合に課されるもので、一種の行政制裁的な性格を有する」とされています。
つまり、「ちゃんと確定申告しないと罰を与えるよ。罰がないとちゃんとやらないでしょ」と言っています。
加算税には、4種類あります。
(1)過少申告加算税最大15%
確定申告や帳簿書類が誤っていた場合
(2)重加算税最大50%
確定申告や帳簿書類に仮装・隠ぺいがあった場合
(3)無申告加算税最大20%
確定申告の期限を過ぎた場合
(4)不納付加算税最大10%
源泉徴収した所得税の納付期限を過ぎた場合
また、確定申告が遅れた、税務調査によって払うべき税金が増えた、そんなときには税金に利息がかかります。これを延滞税といい、最大年利は14.6%です。
さんきゅう倉田(さんきゅうくらた)
お笑い芸人。ファイナンシャルプランナー。1985年、神奈川県生まれ。大学卒業後、東京国税局を経て、よしもとクリエイティブ・エージェンシーで芸人になる。国税局では主に法人税の税務調査を担当。好きな言葉は「増税」