15世紀イタリアの「複式簿記」という革命

要するに、ブロックチェーンの最も革新的なことは何かと言えば、「信用のベースを容易に作れる」ことなのだ。

この「信用のベースを生み出す」ことに関して、約500年前にも一つの革命が起こった。それは、15世紀後半にイタリアから広がったとされる「複式簿記」だ。

初めて会った人とビジネスをするに当たり、その人が信用できるかを、どのように判断すべきか。実は、複式簿記が発明されるまでは、その人の勘か、誰か信用に足る人の推薦しかなかった。

あるいは、「神」におうかがいを立てるしかなかった。神父が白と言えば白だし、黒と言えば黒。つまり、客観的に判断する材料はなかったのである。

複式簿記の発明により、取引を正確に記録できるようになった。帳簿を見れば、その人や組織がどのくらいのお金を持っているのか、本当に信用できるのかが、誰でも判別できるようになった。その結果、お金の貸し借りが活発になって、経済が急拡大した。これが、複式簿記が革命的と言われるゆえんである。

「改ざんできない」ことはいかにすごいのか?

ところが、複式簿記をもってしても、その信用は国が公認した仲介人、つまり金融機関や公認会計士がいなければ、成り立たなかった。現代でもしばしば聞かれる「改ざん」の問題である。その複式簿記が本当に正しいのかは、専門家が判定しなくては証明できなかったのだ。

長らくその構造は変わらなかったのだが、ついに、その構造を5世紀ぶりに根本からくつがえす存在が現れた。それが、ブロックチェーンだ。

「一度記録されたものが改ざんされない」というブロックチェーンを使えば、金融機関や公認会計士がいなくても、国などの中央集権組織がなくても、すべての人と人とが信用によってつながれる。つまり、誰でも信用を創造することができ、社会体制の抜本的な変革ができてしまうのである。

そのことに気づいた世界の人々が、この信用創造の技術を使って、多様な新しい仕組みを生み出しつつあるわけだ。