ブロックチェーンは、小さな企業からの革命を実現する

このように、ブロックチェーンは社会を変える大きな可能性を持っているのだが、「話のスケールが大きすぎて、自分には関係ない」と思っている人が大多数かもしれない。

しかし、実は大いに関係がある。ブロックチェーンは、小さな企業、それも社会性を持った事業をしている企業――インパクトカンパニーにこそ、大きなチャンスをもたらしてくれるからだ。

近年、第四次産業革命ということで、AIやIoTなどさまざまなテクノロジーが出てきているが、その多くは、巨大な資本力を持つ大手企業以外には参入の余地がない。

たとえば、AIやIoTの分野は、グーグルやアマゾン、IBM、オラクルといったアメリカの大企業が牛耳っているし、日本でも、日立、東芝、NECといった大企業が中心だ。

しかし、ブロックチェーンは、唯一、アイデア次第で、小さな企業が参入することが可能なのだ。

特に、ビジネスで社会的な課題を解決することを目指すインパクトカンパニーにとって、ブロックチェーンは非常に相性がいい。

ブロックチェーンによるビジネス立ち上げは、企業が「トークン」と呼ばれる仮想通貨を発行し、事業に賛同してくれる人たちがそのトークンを購入することで資金を調達することによりスタートする。

中でも社会性を持ったビジネスは、それを応援したいという人が世界中に現れる。そのためトークンの発行にも賛同を得やすく、資金が集めやすいのだ。

ブロックチェーンの仕組みがあれば、自分の考えたちょっとしたアイデアを、グローバルに展開することも夢ではない。

「ポイント」は、すぐにでも「トークン」に変えられる

一方、「自分はITに疎いから、結局新興企業に追い抜かれてしまうのでは」と考える人もいるかもしれない。

ただ、ブロックチェーンのビジネス活用については、むしろ旧来型の成熟企業のほうが有利な点もある。

というのも、ブロックチェーン事業立ち上げに要する約60%のコストが、マーケティングキャンペーン、すなわちトークンを使用するコミュニティの形成にかかると言われているからだ。

その点、地域社会で長く活動する会社は、すでに顧客コミュニティがある。また、自社ポイントを顧客に発行していることも多いだろう。こうした会社はブロックチェーンにより、自社ポイントをそのまま仮想通貨に紐付けてしまえば、旧世代からご愛顧いただいている「ポイント」を、そのまま新世代が好む「トークン」へとシフトすることも可能だ。

その結果、新旧両世代のどちらにとっても利便性の高いトークン経済圏が、ことさらに意識せずとも自然に形成されていく可能性があるのだ。

しかもトークン発行は、いまや驚くほど簡単にできるようになっている。今はまだ日本では法制度が整っていないが、整い次第、数多くのブロックチェーンビジネスが生まれてくる可能性が高いだろう。

(神田昌典著『インパクトカンパニー』(PHP研究所)より)

神田昌典(かんだ・まさのり)経営・マーケティングコンサルタント、作家 上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済局に勤務。その後、米国家電メーカー日本代表を経て経営コンサルタントとして独立。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本のトップマーケター」に選出。2012年、大手ネット書店の年間ビジネス書売上ランキング第1位。ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。主な著書に『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)、『ストーリー思考』(ダイヤモンド社)、『成功者の告白』(講談社)、『非常識な成功法則』(フォレスト出版)など多数。アルマ・クリエイション株式会社代表取締役。一般社団法人Read For Action代表理事。(『THE21オンライン』2019年01月25日 公開)

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