飲食業界が慢性的な人手不足に陥っていると言われて久しいが、昨今は人手不足解消のための動きも活発化しつつある。そこで今回は、飲食店.COMのデータをもとに、飲食業界の人手不足の実情を求人や給与などから分析。現在の状況とともに、昨今話題となっている人手不足対策も紹介していく。人手不足に悩む飲食店は、ぜひ参考にしてほしい。
昨今の給与事情は?
まずは、求人@飲食店.COMに掲載された求人データを集計しながら、どの職種、どの業態で求人が活発に行われているか、つまり人手不足が発生しているのかを見ていきたい。最も募集が多かった職種は「サービス・ホール(27.5%)」で、全体の3割近くを占める結果となっている。一方、業態別では「イタリアン(17.3%)」が最も多く、「居酒屋・ダイニングバー(16.9%)」「カフェ・ベーカリー(13.6%)」がそれに続く形だ。
【 調査概要 】
◆調査期間:2018年1月1日~2018年12月31日
◆調査対象:「求人@飲食店.COM」に掲載された求人117,969件(全国の正社員・アルバイト)
続いて求人募集時に提示されている給与額から、東京と大阪の平均給与を算出した。すると東京・大阪ともに給与が上昇していることがわかる。こうした給与の高騰は慢性的な人手不足が背景にあるとされているが、一概に給与を上げれば人手不足が解消するわけではないので、その辺りは注意が必要だ。実際に、20代は給与よりも休日や勤務時間を重視するというデータもある。人手不足に悩む飲食店は、職場環境や待遇の見直しなども図ってほしい。
業態別の平均給与データでは、東京・大阪ともに「居酒屋・ダイニングバー」の給与上昇率が高い。業態ごとに給与差があることから、採用が厳しい業態ほど平均給与が高く、採用がしやすい業態ほど給与が低くなっている傾向がうかがえる。
【 調査概要 】
◆調査期間:2018年1月1日~2018年12月31日
◆調査対象:「求人@飲食店.COM」に掲載された求人85,638件(正社員・アルバイト)
◆算出方法:求人募集時の給与下限額の平均より算出
国をあげて進む、飲食業界の人手不足対策
日々、人手不足対策を講じている飲食店経営者も多いだろう。最近では、飲食業界の人手不足解消のために国も動き出しつつある。昨今話題になった人手不足対策について改めて見直していこう。
外国人雇用
これまでも、人手不足を解消するために外国人の雇用を検討する飲食店は多かったが、その動きが2019年4月以降さらに活発化するかもしれない。というのも、昨年末話題になった「改正出入国管理法」が2019年4月よりスタート。新設される在留資格“特定技能”が外食業も対象となっていることから、業界全体での人手不足解消が期待されている。外国人雇用を考えている飲食店経営者は、その動きに注視してほしい。
働き方改革
昨今の日本では「働き方改革関連法」をはじめ、国をあげて働き方改革に取り組んでいるが、人手不足に悩む飲食業界でも働き方改革の波が押し寄せてきている。近年、スタッフにとって働きやすい環境を整えようという飲食系企業が増加。大手チェーン店を中心に営業時間を短縮したり、一斉休業を行ったりといった動きが見られ、今後もその動きは続くとみられる。人手不足に悩む店舗は、スタッフの働き方についても見直してみてほしい。
超短期バイト募集サービス
これまで飲食店のアルバイトといえば、数か月以上の長期雇用が当たり前だったが、思うようにマッチングせず人手不足に悩むケースも少なくなかった。そんな中、続々と登場しているのが、「超短期バイト募集サービス」だ。1日だけ、数時間だけといった超短期アルバイトを雇うことができるサービスで、欲しいときに欲しい人材を確保できる。飲食店経験者とマッチングできたり、飲食店特化型であったりとさまざまなサービスも登場。新たな人材雇用システムとして、飲食業界で注目されている。
IT機器の導入
IT機器を導入し、人手不足をカバーしようという動きもある。セルフレジやセルフオーダーシステムといったIT機器を導入することで、業務の効率化やスタッフの負担軽減が期待できる。一部のIT機器導入に関しては、国が「IT導入補助金」を用意しているので、導入を検討している飲食店は併せてチェックしてほしい。
人手不足に悩む飲食店が多い一方で、募集をするとすぐに人が集まる飲食店も少なくない。新たな人材を雇うため採用活動をするのはもちろんだが、働きたいと思ってもらえる職場になるよう、給与や職場環境、待遇など、現在の状態を今一度見直すのも忘れないでほしい。(提供:Foodist Media)
執筆者:サトウカオル