秋から年末にかけては、ハロウィンやクリスマスといったイベントが目白押し。さらに忘年会シーズンということもあり、飲食店にとっては一番の繁忙期に入る。ここでいかに売上をUPできるかが、勝負の分かれ目と言ってもいいだろう。
しかし、売上や客数ばかりを追いかけて、クレームが増えるような店になってしまっては意味がない。繁忙期を上手に乗り切るためにはどのような準備が必要なのだろうか。今回は、繁忙期を迎えるにあたって必要な「準備」をずらりと紹介していく。
宴会メニューやコースメニューの準備
最初に準備したいのは、売上に直結する宴会メニューやコースメニューの企画だ。忘年会やクリスマスディナーなどの場合、告知の期間を考えると、10月中にメニュー内容を決定しておきたいところ。
年末は1年で最大の繁盛期といえるだけに、他店も魅力的なメニューを打ち出してくるはず。常に旬の食材やトレンドをチェックしておく必要があるだろう。メニューを早めに告知し、いわゆる「早割」などで早期に予約を確定しておくのも、スムーズな運営をするためには非常に有効な手段だ。
スタッフの確保
どれだけたくさんの予約が入ったとしてもスタッフが足りなければ店は機能しない。大量にスタッフが必要な場合は求人広告の掲載。少人数であれば、自社ホームページや店内で求人告知をしてみるといいだろう。
繁忙期の数か月だけといった短期間のスタッフが必要な場合には、派遣会社を利用するのもいい。人件費は高くなる傾向があるが、採用から契約終了までの流れはスムーズだ。宴会メニュー等と同様に、2か月くらい前には準備をしておく必要がある。
シフトの見直し
飲食店には、必ずピークタイムとアイドルタイムがある。客数の多い時間帯に多くスタッフを配置し、そうでない時間帯にはスタッフを減らすのが鉄則だ。前もって、昨年同時期のPOSレジデータなどを参考に、ピークタイムの分析をしておくといい。忙しい時期は、スタッフにも事情を理解してもらった上で、より効率的なシフト改善をしていこう。
店舗外観チェック
意外と見逃しがちなのが店舗の外観だ。繁忙期には多くの新規客来店も見込めるので、第一印象を悪くしないように必ずチェックしておきたい。
店頭の清掃はもちろんだが、看板は破損していないか、メニュー表は汚れたり破れたりしていないかなどの確認を。せっかく来店してくれた客が気持ちよく中に入れるような店構えになっているか、客観的にチェックする当番を決めておいてもいいだろう。
クレーム対策&衛生チェック
繁忙期には、オーダーミスや料理の提供が遅いといったクレームも増えやすい。もちろん、クレームは起こさないのが一番だが、起きた後の対応がより重要となる。クレームに対してどのように対応するべきか、マニュアルをスタッフに周知し、いざという時に備えておこう。
また、飲食店で最も気をつけてなくてはならないのが「食中毒」だ。気温が下がると発生しにくくはなるが、布巾やまな板の消毒などを忙しいからといって忘れないように。ランチタイム後にまな板を取り替える、営業終了後には布巾を煮沸するなどルールを決めておくことが重要だ。
オペレーションの見直し
お水をセルフサービスにする、取り皿を多めにテーブルに置いておく……といったちょっとした工夫でピークタイムでも少ない人数でこなすことが可能になる。スタッフの動きをできるだけ少なくできるようにオペレーションの改善を検討してみよう。
テーブルごとに接客担当を決めておく方法や、レジ担当、オーダー担当というように作業をあらかじめ分担しておくとピークタイムでもパニックになりにくい。大規模店であれば、テーブルオーダーシステムや、電子マネー決済を導入して業務効率化を図るのもいいだろう。
SNS広告
まだまだ知名度の低い店であれば、この時期までにしっかり集客力をつけておきたいところ。グルメサイトでの広告掲載は少しハードルが高く感じるかもしれないが、SNS広告であれば、未経験者でも比較的容易に出稿可能なので検討してみるといい。
フェイスブックやインスタグラムの広告では、写真1枚~数枚と短い文章だけで広告が掲載できる。例えば、1日500円の予算で1週間だけというような低予算出稿も可能だ。また、店の近くにいるユーザー限定で広告を表示できるなど、細やかな広告設定が可能なのもSNS広告の魅力だ。
予約システムの準備
ネット予約は忙しい時間帯や営業時間終了後でも予約が受けられるのが最大のメリットだ。無料で利用できる予約システムも多く提供されているので、まだ導入していない店舗は一度検討してみてはいかがだろうか。
ただし、最近問題化している「ドタキャン」の対策もしっかりと行っておく必要がある。特に団体の宴会予約などは注意が必要だ。会計の一部を前金でいただくなどの対応も検討しておこう。予約フォームにキャンセルポリシーや注意事項の記載も忘れずに。
アンケートを用意
繁忙期は、アンケートを取る最大のチャンスだ。もちろん、接客の不行き届きが指摘されることもあるかもしれない。しかし、こうした意見は店の改善を検討する際に大変役立つ。厳しい意見ともしっかり向き合って次に繋げる姿勢が大切だ。
ただ、なかなかアンケートの協力をしてもらいにくいケースもあるだろう。そのような場合は、次回使用できる割引券を用意したり、スマホを使って匿名でアンケート送信できる仕組みなどを利用し、できるだけ多くの意見を集めるようにしよう。
売上計画を立てておく
繁忙期は「稼ぎ時」なので、しっかり売上計画を立てて臨みたい。客数、客単価ともに目標数値を設定しておき、毎日チェックを欠かさないようにしよう。少なくとも週に一度は振り返り、修正をしていこう。スタッフには少額でもボーナスを設定して、売上目標を達成したら支給するという形をとってもいいだろう。
また、繁忙期に特に注意をしたいのは、食材ロスの増加だ。忙しいと、計量のし忘れや無駄使いが増えてしまう傾向がある。売上だけでなく、原価率や仕入額の管理もできれば毎日行いたい。1年の間には、繁忙期があれば閑散期もある。年間を通じて利益が出せるように入念に売上計画を作成しよう。
全ての項目に関して言えることだが、繁忙期前にはとにかく早めの準備が必要だ。告知や広告、人材募集には特に時間がかかるのだ。また、アンケートの結果や売上記録は来年の貴重なデータにもなる。日記のような形でどういう出来事があったかなども残しておくといいだろう。繁忙期の過ごし方次第でお店の評判は大きく変わる。しっかりと準備をして乗り切ってもらいたい。(提供:Foodist Media)
執筆者:大槻洋次郎