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(画像=お客様のことを第一にしながら、積極的に経営の効率化を図っているという)

ワイン文化と経営効率をつなげる「すべてお客様のために」

もっとも、こうした効率化を方法論だけで見ると、藤森社長の経営理念の本質を見失ってしまう可能性がある。日本にワインを文化として根付かせるという高邁な理想も、健全な経営があってこそだが、それもあくまでもお客様ありき。大事なのは方法ではなく、目的であることを強調する。

━━そうした効率化は努力すれば、誰でもできるように思います

藤森 大事なことは、方法を真似るだけでなく、目的です。コーヒーの件なら、お客様もテーブルで慌てて飲むよりオフィスでゆっくりと、場合によっては仕事をしながら飲めます。お客様のためでもあります。こうした効率化は店の都合だけだと絶対に失敗します。

━━あくまでもお客様ありきということですか

藤森 そうです。予約の話も売上だけではありません。それまで多くの方をお断りしていた経緯があり、断らないためにはどうすればいいだろうというのが出発点です。これを、とにかく売上増という考えだと、言葉や態度に出てお客様も気づきます。「お前の心、透けて見えとるワ」みたいな(笑)。売上や自分たちの給料を先に考えている店は、大抵、うまくいきません。まずはお客様が喜ぶことを最優先で考えるということです。

━━目的あっての方法ですね

藤森 お客様がわざわざ電話をしてくださった、店の前まで来ていただいた、それなのに店が断らないといけないというのは、これほど失礼なことはありません。それを防ぐための予約の工夫です。そこを間違えてはいけません。あらゆる効率化、すべてはお客様のためにです。

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(画像=藤森社長はシャルパンテ・カレッジというワインスクールも主宰している)

脅威のコンビニ、競争に勝つために伝える「知識」「経験」「技術」

ワインが徐々に浸透していく傾向を考えれば、『ヴィノシティ』の将来も大きく開けているように思える。藤森社長に会社の将来像を聞くと様々な考えを披露してくれたが、意外だったのは大きな危機感を抱いている点である。

━━『ヴィノシティ』や会社全体の将来像について、どのように考えていますか

藤森 コンビニは最高度の脅威になるでしょう。はっきり言って商品クオリティーは向こうが上です。500円であのクオリティーの弁当を出されたら、コストパフォーマンスを考えても勝てません。僕たちは500円で出せませんから。

━━そういう相手に勝っていくにはどうすればいいでしょう

藤森 僕らは知識や経験や技術をちゃんと提供できます。ただ美味しいではなく、こう美味しい、だから美味しいと伝えていける、ぬくもりのあるサービスができます。そうした人の心がある限りは、コンビニに勝てると思っています。お客様に思いを持って接する、まさに「お客様のために」です。

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(画像=10年後のシャルパンテについて語ってくれた藤森社長)

直近で進む共同事業構想、10年後にかける総合商社化への夢

━━会社の将来像についてどのようにお考えでしょうか

藤森 今、G-FACTORYさんと、一緒にビジネスの話をしています。ウチとしては『ヴィノシティ』よりもカジュアルに、2,000円前後ぐらいでパッと飲んで帰れるような店、そこを一緒にできたらと思っています。3年で30店舗ぐらいを目標にしましょうと言われています。うちの強みは業態開発能力や運営能力やブランド力、G-FACTORYさんの強みは大掛かりに展開するための資金や、物件の情報など。2社でタッグを組むことでお互いのメリットを活かしあえます。ただ、どちらにも足りないのが人“財”です。そこで、あまり技術がなくてもできる業態ができればと考えています。半分立ち飲み、出店のイニシャルコストがかからないような業態。概ね5年ぐらいがメドでしょうか。

━━その先はどうでしょう

藤森 今いるスタッフが一人一人、やり甲斐のある店、自分たちが考えた業態の店にしてあげたいということです。今ある店は僕がやりたい店です。でも、料理人が「和食をやりたい」と言えば、その業態でやらせてあげたいと思います。完全に独立すると一からやるのはリスクが大きいですが、グループなら自分が具合が悪くなった時などにも助け合いができます。そのためにスタッフには日々、勉強をさせています。

━━グループ全体の発展につながりますね

藤森 グループで言えば、総合商社を目指したいと考えています。事業の軸の一つ一つを大きくする。今、ウチは飲食業だけでなく、酒販業、輸入業、スクール業もやっているので、その一つ一つを事業として育て、全部を支える柱になってほしいと思っています。ワインの生産については自分たちが生産するというより、ワイナリーを作りたいという若い人がいれば、そこに出資するというのもいいでしょう。そうしたことは10年から、その先です。

ワインを社会に根付かせる、ワインを楽しむ文化を広げるという高邁な理想を持ちつつも、徹底的な経営の効率化という一見異なる顔を持つ藤森社長。しかし、その根っこは「すべてはお客様のため」という部分に収斂されていく。あるいは同根であると言っていい。5年後、10年後に向けてビジョンを広げる中、芯が一本通った経営は見ていて心強い。

藤森真(ふじもり・まこと)
1972年、東京都板橋区出身。株式会社シャルパンテ代表取締役。学生時代から複数の飲食店でアルバイトをし、そのやりがいや面白さに魅せられ、バーテンダーを目指し飲食業界に就職。都内のホテルなどでバーテンダーとして勤務後、ソムリエを目指し、世界一のソムリエが経営する会社に就職し新規店舗の店長などを経験。その後、株式会社スティルフーズや株式会社バルニバービで勤務の後、2010年に独立しワイン居酒屋『ヴィノシティ』をオープンした。酒販店、輸入業、ワインスクール運営、コンサルタント業等も行なっている。

『VINOSITY(ヴィノシティ)神田本店』
住所/東京都千代田区鍛冶町2-4-1 佐伯ビル1F、B1F
電話番号/050-2018-2411
営業時間/17:00~フードL.O.翌3:00・ドリンクL.O.翌3.30、15:00~L.O.22:30(土曜)
定休日/日・祝
※それ以外にも都内と名古屋市に飲食店舗を4店舗、酒販店を5店舗、ワインスクール1校など

(提供:Foodist Media

執筆者:松田 隆