要旨
- 4月10日のEU首脳会議で英国のEU離脱の期限の再延期を決めた。5月の欧州議会選挙への参加を唯一の条件に長期の延長を認めた点で、EU首脳会議は寛容だった。
- メイ首相は、与野党協議を通じて妥協点を探り、早期の協定承認を目指す方針だ。2回の「示唆的投票」結果からは、メイ首相の協定案、あるいは、関税同盟などソフトな将来関係のソフト化案と、協定の信認を問う国民投票を組み合わせるという党派の妥協の余地はありそうだが、切り捨てられる強硬離脱派には容認し辛い方向転換だ。
- そもそも、2度にわたる期限延期の結果、妥協を通じて離脱を推進しようという機運は低下している。世論調査では、離脱プロセスを舵取りしながら、期限内の離脱に失敗した与党・保守党への風当たりは強く、ナイジェル・ファラージ氏率いる「Brexit党」という受け皿の出現が、支持率低下に拍車を掛けている。労働党のコービン党首にとっては、政権交代への好機と言え、敢えて与野党合意を急ごうとはしないだろう。
- 英国のEU離脱プロセスは、離脱日に終るわけではない。離脱後に予定される移行期間中の将来関係協定のための協議の対象は、離脱協定よりもはるかに広範だ。
- 世論の分断を抱え、政治の混乱が深まるばかりの英国が、果たしてEU離脱のプロセスを遂行しきれるのか、疑念を抱き始めている。