「応援してくれた人」にはちゃんと報告をしよう
――個人のネットワークが資産になる評価経済では、フォロワーが多い人は有利な気がします。あまりソーシャルメディアを使わない人達にお金は集まりにくいのではないですか。
米良 フォロワーが多いほどお金が集まりやすい傾向はありますが、必ずしもそれがすべてではありません。10万人と1万人のフォロワーがいる人を比べたとき、10万人のほうが多く集金できるわけではないんです。
むしろ、フォロワーの熱量のほうが重要かもしれません。その人を応援する熱狂度が高いほど、次の応援者が自然と巻き込まれていくんです。活躍している領域が狭くても、真剣に取り組んでいる人や事業のほうが、強い興味関心・共感を集められることは多い。
結局、自分を初めに信頼してくれている人を中心に、さらに支持してくれる人を増やしていく仕組みが、クラウドファンディングでは大事なのかもしれません。
――今のお話、自分にとって耳の痛い話です。忙しさにかまけて、自分を最初に応援してくれた人をないがしろにして、不義理を働いてしまうことって、あると思うんです……。米良さんは、そのあたりはいかがですか。
米良 個人的には、応援していただいた方とは縁が切れませんね。自分のことを応援してくれる人がいるのは嬉しいですし、その人たちに自分の仕事が上手くいっていることを報告することで、喜んでくれるならもっと嬉しいじゃないですか。そう考えると、応援してくれる人たちとのコミュニケーションを自然と大切にしています。
――お話をうかがっていると、米良さんのパーソナリティが、今の事業につながっているような気がします。
米良 結果的に、そうかもしれません。自分がやっていること、共感してくれた人に対して、ちゃんと報告をする。それを一番大切にしています。
人からお金をもらったとき、例えば100円を出資してもらったとしても、1,000円のうちの100円だったら大金ですよね。出資する側の気持ちになってみれば、「あのお金、どうなったんだろう」って気になるところです。
でも、プロジェクトが実現したことをしっかり報告したら、「この100円でこんなことができるんだ!」ということが出資者にも伝わるはずです。そうしたら、「また、この人のプロジェクトにお金を出してみよう」と思えるはず。これが、信用を積み上げていくことにつながるのかなと思います。
――最後に、今後の展望や戦略などを教えていただけますか。
米良 担保がなくて、お金がなかなか借りられない創業期の事業者。ビジネスモデル的には難しいけれど社会にとって、必要な事業に取り組む団体。あるいは公的な資金だけではサポートが十分ではない公共のニーズなど、既存の金融サービスではお金が行き渡らなかった分野に対して、民間からもっとお金を流していきたいと思っています。
NPOや医療機関、大学、自治体や地域の事業者など約200件のパートナーと連携してきましたが、今後はさらに様々なパートナーと共にすることで、想いの乗ったお金の流れを増やしていき、誰もがやりたいことを実現できる世の中を作っていきます。
米良はるか(めら・はるか)
READYFOR代表取締役
1987年生まれ。2010年、慶應義塾大学経済学部卒業。12年同大学院メディアデザイン研究科修了。大学院時代にスタンフォード大学に短期留学し、帰国後11年に日本初のクラウドファンディングサービス「Readyfor(レディーフォー)」を立ち上げ、14年、READYFOR㈱として株式会社化、代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任。現在、Readyforは国内最大級のクラウドファンディングサービスである。《写真撮影:まるやゆういち》(『THE21オンライン』2019年3月号より)
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