内外株式を中心に資金流出
2019年4月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、国内株式から2,700億円、外国株式から2,500億円と大規模な流出があった【図表1】。また、外国債券と外国REITからもそれぞれ800億円、300億円を超える資金流出があった。バランス型と国内REITには資金流入があったが、3月と比べて流入金額はやや鈍化した。
ファンド全体だと、4月は資金流出が6,000億円を超えた。2月から外国株式や外国債券を中心に資金流出が続いていたが、2月の2,700億円、3月の700億円と比べて4月は資金流出が大きくなった。外国株式からの資金流出が加速したことに加えて、株価が堅調に推移したため利益確定の売却が膨らみ国内株式も大規模な資金流出に転じたためである。ちなみに、流出金額が6,000億円を超えたのは2016年12月以来のことである。
過去最大の外国株式からの資金流出
外国株式では、4月は2,500億円の資金流出と集計できる1997年4月以降で最大の流出となった。これまで最大の資金流出はリーマン・ショック当月の2008年9月であり、2400億円であった。ただ、外国株式の純資産総額は2008年9月初時点で10兆円程度であったのに対して、2019年4月初時点では18兆円と倍近く膨らんでいる。そのためリーマン・ショック時と単純に金額を比較すること自体には意味がないかも知れないが、それを差し置いても4月は外国株式の流出が特に大きかったといえるだろう。
外国株式の中には売れているファンドもあった。実際に4月に「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」や「グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)」は300億円前後の資金流入があった【図表2:赤字】。その他にも資金が4つのコース(為替ヘッジの有無×分配金の有無)に分散されているため上位には出てこなかったが、「野村ACI先進医療インパクト投資」は4ファンド合計で270億円の資金を集めた。
ただ、一方で4月は資金流出が50億円以上あったファンドが19本もあり、200億円以上の流出に限っても5本あるなど、大規模な資金流出があった外国株式ファンドが多かった。特に、50億円以上資金流出があったファンドの13本、200億円以上でも4本がテクノロジー系のテーマ型ファンドであり、特に資金流出が顕著であった。
資金流出が大きかったテーマ型ファンドは2018年前半以前に人気を集めたものであり、以前から資金流出が続いていたが、4月に流出が加速したファンドが多かった。やはり足元のパフォーマンスが影響していると思われる。
4月は世界景気の減速懸念が後退したことなどから世界的に株式が堅調で、特にハイテク株式が好調であった。4月の高パフォーマンスのファンドをみても上位にテクノロジー系のテーマ型ファンドがきていることからもそのことが分かる【図表3:赤字】。資金流出が大きかったテーマ型ファンドも4月は総じて高パフォーマンスであった。元々、それらのファンドは昨年10月から12月にかけて20%前後急落していたが、足元の高パフォーマンスによって多くのファンドが急落以前の水準まで基準価格が回復した。そのため、昨年の急落を受けて塩漬けにしていた投資家にとって4月は格好の売却機会となった。特に昨年10-12月の下落幅が大きかっただけに、利益が出ているうちに整理しようとする投資家が多かったと思われる。
積立投資も変調か
外国株式ではテーマ型ファンドからの大規模な資金流出の影に隠れているが、積立投資している投資家の行動も足元、変調をきたしていた可能性がある。外国株式の確定拠出年金専用ファンドと つみたてNISA対象ファンドの資金動向をみると、2月以降、資金流入が鈍化しているが、特に4月は一段と鈍化したことが分かる【図表4】。特に、確定拠出年金専用ファンドは資金流出に転じていた。また、バランス型についても、つみたてNISA対象ファンドへの資金流入は急減速し、確定拠出年金専用ファンドは資金流出に転じていた【図表5】。
つまり、確定拠出年金や つみたてNISAを使って外国株式ファンドやバランス型ファンドの積立投資をしている投資家が4月は新規購入を控える、もしくは保有しているファンドの一部を売却したのかもしれない。
4月は株式市場ではリスク回避姿勢が和らぎ世界的に株価が上昇したが、投信市場ではリスク性資産を売却している傾向がみられ、冷静に行動している投資家が多かったものと推測される。
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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
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