書きながら説明すれば正確に伝わる

私は、同僚や部下とコミュニケーションをする際にも、2軸フレームワークを使っています。

複雑な物事を言葉で伝えようとしても、自分も正確には伝えられないし、相手も正確には理解できません。情報や意思の伝達に必ず齟齬が生じます。

けれども、2軸フレームワークを使って、シンプルな図に落とし込めば、説明も簡単だし、相手も全体像の把握が容易になります。

私はいつも紙に図を描きながら説明をし、説明が終われば、その紙を相手に渡すようにしています。口で発した言葉はすぐに消えてしまいますが、紙なら、捨てない限りは何度でも読み返して再確認できます。それでも行き違いが生じたときには、説明したときに使った紙を持って来てもらって、図を一緒に見ながら再度説明をしています。

2軸フレームワークは、メンバーでアイデア出しをするときも有効です。

アイデア出しのときには、発想の枠を決めずに、メンバーが思いついたことを自由に言い合うブレストがよく行なわれますが、話が飛んだり広がったりしすぎて、非効率になる場合があります。

そこで、例えば出版社の編集者たちが、ある本が売れた理由についてブレストをするのであれば、「テーマ」「タイトル」「カバーデザイン」といったように、あらかじめ話し合いたい項目を洗い出してマトリクスのフレームワークを作り、「では、次はカバーデザインについてアイデアを出してください」というように、枠に沿って議論を進めていくのです。

このやり方だと、枠の中での思考になるため、「そんな視点は今まで思いつきもしなかった!」といったイノベーションは生まれませんが、改善や改良レベルのアイデアを出すには有効であり、効率的です。

このように、2軸フレームワークをマスターすると、物事をシンプルに考えたり伝えたりするのが容易になり、思考や仕事のスピードが加速度的にアップします。

最初のうちはなかなか2軸の図を作れないものですが、自転車に乗れるようになるのと同じで、何度も繰り返すうちに必ず自分のものにすることができます。

ぜひ、日々の仕事に2軸フレームワークを取り入れてみてください。

木部智之(きべ・ともゆき)
パナソニック システムソリューションズ ジャパン〔株〕現場プロセスプロジェクト部部長
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本アイ・ビー・エム〔株〕に入社。プロジェクト・マネジャーとして大規模システム開発プロジェクトに関わってきた。18年より現職。著書に『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』(KADOKAWA)などがある。《取材・構成:長谷川敦》(『THE21オンライン』2019年3月号より)

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