不動産サブセクターの動向

(1) オフィス

オフィス市況は好調を維持しており、目下のところ需要が緩む気配はない。三鬼商事によると、2019年3月の東京都心5区空室率は1.78%(前月比±0%)となり最低水準が続く。平均募集賃料は21,134円/坪(前月比+0.2%、前年同月比+7.3%)と63ヶ月連続で上昇した(図表-12)。三幸エステートによると、2019年3月の東京都心5区の大規模ビルの空室率は0.52%と低下が続いている(図表-13)。旺盛なオフィス需要が高水準の新規供給を吸収し、オフィス床の品薄感が強まるなか、2次空室を含めて募集活動前から希望者が床を取り合う状況となっている。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2019年第1四半期の東京都心部Aクラスビルの賃料は38,733円/坪(前期比▲1.9%)と一旦調整となった。ニッセイ基礎研究所では、今後の東京都心部A クラスビルの賃料は当面上昇傾向が継続し、2019 年第3四半期 には約42,000 円に達すると見込むが、その後は、経済成長の鈍化などから成約賃料は下落に転じる見通しである(3)(図表-14)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、三幸エステートによると、他の主要都市でも空室率が低下しており、2019年3月の空室率は福岡が2.4%、大阪が3.2%、名古屋が3.5%、札幌が3.6%、仙台が5.2%となっている(図表-15)。札幌では今年に新規供給される3棟のリーシングが順調であり、その他の都市でも2019年の新規供給があったとしても既に満床の見込みで、タイトな需給環境が続いている。

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(3)吉田 資『東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2019年)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2019年2月15日)

(2) 賃貸マンション

東京23区のマンション賃料は上昇基調を維持している。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2018年第4四半期の賃料は前年同期比でシングルが+2.1%、コンパクトが+3.9%、ファミリーが+3.7%上昇した(図表-16)。また、高級賃貸マンション(2019年第1四半期)の空室率は5.2%(前年同期比▲0.6%)に低下し、賃料は前年同期比+3.3%の17,805円/坪と12期連続でプラスとなった(図表-17)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

(3) 商業施設

商業動態統計などによると、2019年1-3月の小売販売額(既存店、前年比)は百貨店が▲1.2%、スーパーが▲1.7%、コンビニが+0.9%となった(図表-18)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

日本不動産研究所によると、2018年下期の全国の主要都市のプライム店舗賃料は高水準を維持している(図表-19)。今回、表参道1Fの賃料単価が61,100円/坪と銀座1Fの賃料単価56,700円/坪を越え、表参道の引き合いの強さが示された。しかし、銀座のブランド力は顕在で、新規出店、既存ブランド店のエリア内優良立地へ移転などの動きも継続している。各主要都市ではインバウンド需要のドラッグストアの出店が続いており、賃料を押し上げている。ただし、中国検索エンジン大手(百度(バイドゥ))によると、2019年1月の中国の電子商務法施行により在日中国人バイヤーの7割が取引を休止し、そのうちの5割は「ドラッグストアやショッピングモールで仕入れていた」と答えていることから、今後のインバウンド消費を含めた商業施設売上への影響を注視したい。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)