10連休を控えた前倒し生産が押し上げ
経済産業省が5月31日に公表した鉱工業指数によると、19年4月の鉱工業生産指数は前月比0.6%(3月:同▲0.6%)と2ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.2%、当社予想は同▲0.3%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比1.7%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比0.0%の横ばいとなった。10連休を控えた前倒し生産が押し上げ要因になったと考えられる。
4月の生産を業種別に見ると、世界的なIT関連需要の落ち込みを受けて、電子部品・デバイスが前月比▲7.7%の大幅低下となったが、3月の大幅減産(前月比▲6.2%)の反動で生産用機械が前月比5.3%の大幅上昇となったほか、新型車効果による国内販売の好調を受けて自動車が前月比3.2%と高めの伸びとなった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は19年1-3月期の前期比▲7.4%の後、4月は前月比0.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は19年1-3月期の前期比▲1.8%の後、4月は前月比3.1%となった。
GDP統計の設備投資は19年1-3月期に前期比▲0.3%と小幅ながら減少となった。好調を続けてきた企業収益は海外経済の減速に伴う輸出の減少を主因として製造業を中心に悪化している。企業収益の悪化を受けて設備投資は減速傾向が続くことが予想される。
消費財出荷指数は19年1-3月期の前期比1.6%の後、4月は前月比3.5%となった。耐久消費財が前月比6.3%(1-3月期:前期比▲0.5%)、非耐久消費財が前月比2.7%(1-3月期:同3.7%)といずれも高い伸びとなった。
19年1-3月期のGDP統計の民間消費は前期比▲0.1%と2四半期ぶりの減少となった。4月の消費関連指標は、GW10連休の影響もあり強めのものが多かったが、連休明けには節約志向が強まっている可能性がある。消費の基調をみるためには5月の結果を待つ必要があるだろう。
景気動向指数の基調判断は「悪化」で据え置き
製造工業生産予測指数は、19年5月が前月比5.6%、6月が同▲4.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(4月)、予測修正率(5月)はそれぞれ▲1.9%、0.0%であった。
5月の予測指数は非常に高い伸びとなっているが、今年はGWが10連休となったため季節調整が難しくなっていることには注意が必要だ。鉱工業生産の季節調整は、平日が例年に比べて少ないほど季節調整値が大きくなるような調整がなされている(季節指数が小さくなる)ため、今年の5月は平日の日数が少ない分、季節調整値が高めに出やすい(1)。
予測指数を原指数でみると、5月は前年比▲1.2%(6月は同▲2.8%)となっており、見かけほど強い生産計画とはいえない。
19年4月の生産指数を5、6月の予測指数で先延ばしすると、19年4-6月期は前期比2.7%となる。ただし、生産の実績値が予測指数の伸びを大きく下回る傾向があることを考慮すれば、4-6月期の増産が確実とは言い切れない。少なくとも1-3月期の落ち込み(前期比▲2.5%)を取り戻すことはないだろう。
内閣府の「景気動向指数」では、CI一致指数の基調判断が19年3月に「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正された。
一致指数を構成する9系列のうち7系列の4月分が本日公表された。このうち、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除く輸送機械)、商業販売額(卸売業)の4系列が前月から改善、商業販売額(小売業)の1系列が前月から悪化(鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率は前月と変わらず)した。この結果、4月のCI一致指数は前月差プラスとなるが、3ヵ月後方移動平均(前月差)のプラス幅が小さく「下げ止まり」の条件を満たさないため、基調判断は前月から変わらず「悪化」となることが予想される。
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(1)季節調整値=原指数÷季節指数
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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