結果の概要:4月の個人所得、消費支出ともに予想を上回る伸び
5月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は4月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.5%(前月:+0.1%)となり、前月から伸びが加速、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%も上回った(図表1)。個人消費支出は、前月比+0.3%(前月改定値:+1.1%)と、こちらは+0.9%から上方修正された前月からは伸びが鈍化したものの、市場予想の+0.2%は上回った。一方、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は横這い(前月改定値:+0.9%)と+0.7%から上方修正された前月から伸びが鈍化、市場予想(横這い)に一致した(図表5)。貯蓄率(1)は6.2%(前月:6.1%)と前月から+0.1%ポイント上昇した。
価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.2%)と前月を上回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も前月比+0.2(前月改定値:+0.1%)と、横這いから上方修正された前月を上回った一方、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.5%(前月改定値:+1.4%)と+1.5%から下方修正された前月を上回ったものの、市場予想(+1.6%)は下回った。コア指数は+1.6%(前月改定値:+1.5%)と、こちらは+1.6%から下方修正された前月を上回ったほか、市場予想(+1.6%)に一致した(図表7)。
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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
結果の評価:好調であった前月から伸びが鈍化も消費拡大が持続
名目個人消費(前月比)は3月が+1.1%と09年8月(同+1.2%)以来の伸びとなっていたが、4月も+0.3%と市場予想を上回るペースで消費拡大が持続していることを示した(図表1)。
また、4月は後述するように可処分所得が前月比+0.4%と高い伸びとなった結果、貯蓄率が前月から上昇しており、4月は所得対比でみて消費余力を残していると言える。
順調な雇用増加、賃金上昇、消費者センチメントの回復基調と併せて引き続き個人消費を取り巻く環境は良好である。もっとも、5月上旬から関税強化策を含めた米中貿易摩擦のエスカレート懸念に加え、トランプ大統領が不法移民問題に関連して6月10日からメキシコ製品に5%の関税を賦課する方針を示したことは、雇用や経済、消費に対するリスク要因として今後の動向が注目される。
物価は(前年同月比)は、総合指数が18年11月以降、コア指数も19年1月以降はFRBが物価目標とする2%を下回る状況が持続している。もっとも、総合指数が2月の+1.3%を底に、コア指数も3月からは上昇に転じているため、足元でインフレ率の低下には歯止めがかかっている。
所得動向:可処分所得の伸びが加速
4月の個人所得(前月比)の内訳をみると、賃金・給与が+0.3%(前月:+0.4%)と堅調な伸びを持続していることが確認できる(図表2)。さらに、前月に農家に対する政府補助金が大幅に減少したことで大幅なマイナスとなった自営業者所得が4月は横這い(前月:▲1.0%)と前月から回復がみられたほか、利息配当収入が+1.6%(前月:▲1.0%)と大幅な増加に転じて所得を押上げた。
一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、4月が+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.1%(前月:▲0.2)と前月からプラスに転じており回復を示した。
消費動向:高い伸びとなった前月の反動から全般的に伸びが鈍化
4月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.2%(前月:+2.3%)、サービス消費も+0.3%(前月:+0.6%)と3月の消費が好調であった反動もあって、前月から伸びが鈍化した(図表4)。
財消費では、耐久財が▲0.8%(前月:+3.7%)と前月の大幅なプラスからマイナスに転じたほか、非耐久財も+0.7%(前月:+1.6%)と前月から伸びが鈍化した。
耐久財では、自動車・自動車部品が▲2.0%(前月:+9.1%)と大幅な伸びとなった前月の反動もあってマイナスに転じたほか、家具・家電▲0.1%(前月:+0.9%)、娯楽財・スポーツカー▲0.2%(前月:+0.8%)なども軒並みマイナスとなった。
また、非耐久財ではガソリン・エネルギーが+6.7%(前月:+5.3%)と前月から伸びが加速したものの、食料・飲料が+0.1%(前月:+1.0%)、衣料・靴も横這い(前月:+1.3%)と前月から大幅に伸びが鈍化した。
また、サービス消費も、住宅・公共料金が+0.1%(前月:+0.6%)となったほか、外食・宿泊が+0.2%(前月:+0.9%)、娯楽サービスも+0.2%(前月:+1.9%)と、いずれも高い伸びとなった前月から伸びが鈍化した。
価格指数:エネルギー価格の物価押上げが持続
価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+2.9%(前月:+3.6%)と前月から伸びは小幅に鈍化したものの、物価を押上げた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.3%(前月:+0.2%)と、18年10月(▲0.1%)以来のマイナスとなり物価を押下げた。
前年同月比では、エネルギー価格指数が+1.7%(前月:+0.3%)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、プラス幅が拡大し物価を押上げた(図表7)。食料品価格指数は+0.8%(前月:+1.4%)と前月からプラス幅は縮小したものの、こちらは17年7月以来22ヵ月連続のプラスとなった。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
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