「女性脳」は企業に必要不可欠な戦力
最後に、女性上司の下についたときの心得もお話ししましょう。管理職ともなれば、性差よりも個人ごとの才覚や価値観のほうが前面に出ますが、それでも「女性脳ならでは」の特性が現れる場面もあります。
例えば、AとBの2案を提示し、メリットとデメリットを説明したとき、しばしば女性上司は「で、あなたはどちらがいいの」と聞くことがあります。
女性脳は比較検討より、直感的選択を重視します。相手にもそれを期待するため、即答しないと「真剣さが足りない」と思われかねません。「Bです」など、事前に答えを用意しましょう。
ちなみに、そう答えたとたん上司が「Aにする」と言うことがありますが、部下をないがしろにしているわけではありません。上司はむしろ、真摯に考えた部下に好感を持っています。出した答えがたまたま別でも、傷つく必要はありません。
──さて、ここまで紹介した数々のワザを「面倒だ」と思った方も多いはず。「ビジネスは迅速な問題解決こそ命なのに、共感なんて」と感じられたかもしれませんね。
その考え方も一理ありますが、ビジネスには、女性脳が役立つ場面も多くあります。直観力や発想力は女性の得意領域ですし、愛着を持った仕事には途方もない集中力を示します。それがイノベーティブな発案につながることは珍しくありません。
共感は、その能力を引き出すための栄養分。日頃のやりとりにひと手間かければ、女性はのびのびとその才能を発揮するでしょう。合理性の型にはめようとする前に、「急がば回れ」のこの選択、ぜひお試しください。
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)
感性リサーチ代表取締役社長/感性アナリスト
1959年、長野県生まれ。栃木県育ち。奈良女子大学理学部物理学科卒業。㈱富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて人工知能(AI)の開発に従事。2003年に㈱感性リサーチを設立、脳機能論と人工知能の研究成果に基づく五感分析法を開発し、マーケティング分析に生かす。性別や年代による脳の性質の違いを軽妙な語り口で解説、講演やセミナー、テレビ出演等幅広く活躍。『キレる女 懲りない男』(筑摩書房)ほか、著書多数。(『THE21オンライン』2019年5月号より)
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