日経平均株価が乱高下しています。これまでは、米国の金融緩和期待を背景に同国の株価が上がる一方で、円高で日本株の上値が抑えられる展開で、好材料と悪材料が相殺し合ってきました。7/18(木)は米国株安と円高が重なり、日経平均株価は422円安となりました。しかし、翌日の7/19(金)は420円高と急反発。投資家はまさに、株価の乱高下に振り回された形です。
こうした中、投資家にとって難しいのは投資対象銘柄の絞り込みとなるでしょう。そこで今回の日本株投資戦略では、高配当利回りが期待されつつも、52週高値から大きく下げた状態が続いている銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。乱高下する株式相場を高配当利回り銘柄で「中央突破」したいところです。
株価が高値から大きく下落した高配当利回り銘柄はコチラ!?
それではさっそく、株価が高値から大きく下落している高配当利回り銘柄をスクリーニングにより、抽出してみたいと思います。スクリーニング条件は以下の7項目です。
(1)東証1部の上場銘柄であること
(2)時価総額1,000億円以上の銘柄であること
(3)予想配当利回り(市場予想ベース)が4%以上の銘柄であること
(4)52週高値からの下落率が20%を超えていること
(5)直近4週間の市場予想EPSが下げていないこと
(6)広義の金融や「その他」等を除く業種に属していること
(7)法令に関する問題等が指摘されている銘柄でないこと
上記の全条件を満たす銘柄を、(3)で計算した予想配当利回りが高い順に並べたものが表1になります。これらの銘柄は、高配当利回りが期待されつつも、高値(52週高値)から大きく下げた状態が続いており、乱高下が続く株式市場でも、投資家の注目を集めるものと期待されます。
表1:52週高値から2割超下げ、高配当利回りが期待される銘柄
コード / 銘柄 / 株価(7/19) / 対52週高値比 / 予想1株配当 / 予想配当利回り
<4544> / みらかホールディングス / 2,433 / -26.9% / 130.00 / 5.3%
<1808> / 長谷工コーポレーション / 1,160 / -21.2% / 60.00 / 5.2%
<2768> / 双日 / 343 / -21.0% / 17.20 / 5.0%
<1820> / 西松建設 / 2,081 / -36.7% / 101.60 / 4.9%
<8219> / 青山商事 / 2,061 / -45.4% / 100.00 / 4.9%
<4502> / 武田薬品工業 / 3,746 / -24.2% / 180.00 / 4.8%
<4508> / 田辺三菱製薬 / 1,175 / -46.8% / 56.00 / 4.8%
<5411> / ジェイエフイーホールディングス / 1,517.5 / -43.1% / 70.39 / 4.6%
<4631> / DIC / 2,890 / -30.1% / 130.00 / 4.5%
<1861> / 熊谷組 / 2,945 / -26.3% / 130.00 / 4.4%
<9412> / スカパーJSATホールディングス / 434 / -23.5% / 18.00 / 4.1%
<5214> / 日本電気硝子 / 2,680 / -27.8% / 110.00 / 4.1%
<1803> / 清水建設 / 880 / -25.8% / 36.00 / 4.1%
<1719> / 安藤・間 / 732 / -30.6% / 30.00 / 4.1%
<9503> / 関西電力 / 1,257.0 / -32.0% / 50.00 / 4.0%
※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。予想1株配当は、Bloombergが集計した市場コンセンサスであり、予想配当利回りもそれをもとに計算されていますので、会社予想ベースの予想配当利回りと異なることがあります。なお、配当利回りは株価や配当政策により、常に変動が予想されますので注意が必要です。
予想配当利回りを重視した投資戦略の注意点
図1は日経平均株価の予想配当利回りの推移をみたものです。配当利回りは1株配当を株価で割って計算されますので、株価が下落すると上昇することになります。ただ、日経平均株価が一時からみるとかなり持ち直していることを考えると、近年の予想配当利回りの向上は、企業の株主優遇策の強化の賜(たまもの)であると素直に評価することができそうです。
とはいえ、何らかの悪材料によって株価が下がり、配当利回りが高くなっているケースもあります。今回のスクリーニングでは、条件(5)により、業績面への配慮は行っていますが、それにより、業績下方修正リスクを完全に排除できるものではありません。特に現在、3月決算銘柄の第1四半期決算発表を直前に控え、業績の修正等が発表されやすい時期になっています。個別企業の業績動向等には別途、注意を払っていただきたいと思います。
なお、株式の単元株が100株に統一され、少額での株式投資が行いやすくなったというメリットがあります。予想配当利回りを重視した投資戦略をとるのであれば、複数銘柄に分散投資することで、個別銘柄へ集中するリスクを回避することができますので、検討されるとよいでしょう。例えば表1の銘柄の予想配当利回りが高い順に10銘柄投資した場合、合計金額(諸コスト未考慮)は204万弱の計算です。
なお、予想配当利回りの高い銘柄は、「低PER銘柄」のランキング上位であったり、「低PBR銘柄」のランキング上位であったり、いわゆる割安銘柄であることが多いようです。これらの銘柄の多くは、株式市場から長期的な成長力を疑問視されているケースがあり、それゆえ、株価が上がりにくいという短所もありがちですので、その点は注意が必要と思われます。
ただ、東証1部で時価総額上位の位置にありながら、予想配当利回りが4~5%にも達する銘柄がこれほど多数もあるというのは、正直、やや違和感があります。株式市場の評価はもしかすると、長期的には正しくない可能性もあり、将来、妥当な株価水準に修正される場面もあるかもしれません。その場合、予想配当利回りを重視した戦略により、インカムゲインとキャピタルゲインの双方を十分獲得し、高い投資パフォーマンスを上げられるかもしれません。
図1:日経平均株価の予想配当利回り(月足・%)
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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