株式市場は7月、比較的堅調に推移してきました。日経平均株価は同月、前月末終値に対してわずかながら上昇して終わりました。これに対して8月は一転、波乱含みのスタートになっています。特に8/2(金)は前日比500円超の急落となり、一時は7/18(木)以来、取引時間中に日経平均株価が21,000円を割り込む展開になりました。
しかし、「日本株投資戦略」では下値不安はそれ程大きくなく、押し目は買い場になる可能性があると考えています。そこで、全体的な株価急落の環境下で、投資好機になり得る好業績銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。
株価急落で投資好機の好業績銘柄はコチラ!?
それではさっそく、全体的に株価が急落する中で、投資好機になり得る好業績銘柄をスクリーニングにより、抽出してみたいと思います。ここで好業績銘柄とは、アナリストの予想EPS(市場コンセンサス)が上昇し、決算発表で営業利益が市場コンセンサスを上回った銘柄を指しています。
(1)東証上場銘柄であること
(2)時価総額1,000億円以上であること
(3)広義の金融を除く業種であること
(4)2月または3月決算銘柄で、第1四半期の決算を発表済み(8/1現在)の銘柄であること
(5)過去4週間で市場予想EPSが上昇している銘柄であること
(6)第1四半期決算で営業利益が事前の市場予想を上回った銘柄であること
(7)4/26(金)以降の株価下落率が10%以上であること
これらの条件をすべて満たした銘柄について、(7)で計算した株価下落率の大きい順に並べたものが表1です。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄は全体的な株価急落の環境下で、投資好機になり得る好業績銘柄であると考えています。
なお、抽出された銘柄は結果的に3月決算銘柄だけとなりました。現在、3月決算銘柄を中心に、四半期決算の発表が佳境を迎えていますので、決算発表を終わった銘柄を投資対象とするのが無難な投資戦略であると考えられます。
なお、8/2(金)には東証で時価総額最大のトヨタ(7203)が四半期決算を発表しました。四半期の営業利益は市場コンセンサスを上回りましたが、為替見通しを円高方向に修正したこともあり、通期予想の下方修正につながりました。同社の決算発表が終了したことで、決算発表シーズンは質の面で、大きなヤマ場を越えたと考えられます。
表1:株価急落で投資好機の好業績銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(8/2) / 騰落率(4/26~) / 過去4週EPS上昇率
<4921> / ファンケル / 2,511 / -23.9% / 4.4%
<6981> / 村田製作所 / 4,810 / -19.3% / 1.6%
<3116> / トヨタ紡織 / 1,437 / -12.6% / 7.5%
<6923> / スタンレー電気 / 2,632 / -12.6% / 0.2%
<7752> / リコー / 975 / -13.2% / 4.2%
<9022> / 東海旅客鉄道 / 21,290 / -10.9% / 0.5%
<4684> / オービック / 11,550 / -10.2% / 0.8%
※会社公表データ、Bloombergデータ等を用いてSBI証券が作成。過去4週EPS上昇率は、予想EPS(市場コンセンサス)の過去4週における上昇率です。
株式市場に過度な不安は不要か?
8月に入り、日経平均株価は波乱含みの展開です。(1)FRB(米連邦準備制度委員会)のパウエル議長が、利下げ局面の長期化観測に否定的な見方を示したこと、(2)米国のトランプ大統領が中国からの輸入品3,000億ドルに10%の関税を賦課する方針をツイートしたこと等を背景に、米国株が波乱になったことが影響しました。
前者については、これまで市場では、米国の利下げ期間は今後本格的にスタートし、2019年・2020年ともに2回程度の利下げが予想され、それが米国株の上昇につながってきただけに、市場にとってショックとなりました。ただ、表2にみられるように、米国で利下げ局面が本格化した場合に、必ずしも、株高につながった訳ではありません。
特に日本株にとっては、米景気が拡大し、同国の金利が上昇する局面の方が、円安・ドル高が期待でき、株高を望みやすいという面があります。したがって、(1)について過度な懸念は不要とみられます。
(2)についても、過度の懸念は不要であり、投資家は米中通商問題を冷静にみていくべきだと考えられます。
昨年10/4(木)のペンス演説で、米国が中国の台頭を許さない姿勢が明確になって以降、市場は米中覇権争いという新しい投資環境の下に置かれているのであり、そのことは基本的に今後も変わらないと思われます。
近い将来、両国の間に合意が形成された場合でも、それが部分的な妥協にとどまる可能性があります。中国との対立については、トランプ大統領だけが強硬なのではなく、背景に控える共和党も、対立する民主党も一致していると言われます。米トランプ大統領のツイートは、米中対立の「再燃」を示すのではなく、米中対立が続く過程における通常の駆け引きである可能性が大きそうです。
仮に今回の米中対立が起こらなかったならば、中長期的には中国が世界一の経済・軍事大国になり、日米経済は没落し、中長期的な株価下落時代を迎えることになったのかもしれません。米中対立の向こうにはむしろ、日本企業が復権するシナリオも残っており、過度に悲観する必要はないと思われます。ただ、今回のような短期的な混乱が繰り返されることは避けられないとみられます。
表2:米政策金利低下局面と日米株価
利下げ局面直前 / 利下げ局面最後 / 株価騰落率
米政策金利 / 20.00 / 12.00 / -
S&P500 / 132.59 / 122.55 / -7.6%
TOPIX / 559.07 / 570.31 / 2.0%
年月日 / 1981/5/29 / 1981/12/4 / -
米政策金利 / 11.75 / 8.25 / -
S&P500 / 164.62 / 166.76 / 1.3%
TOPIX / 822.75 / 891.63 / 8.4%
年月日 / 1984/10/1 / 1984/12/24 / -
米政策金利 / 9.75 / 3.00 / -
S&P500 / 325.52 / 417.08 / 28.1%
TOPIX / 2501.56 / 1420.38 / -43.2%
年月日 / 1989/6/2 / 1992/9/4 / -
米政策金利 / 6.50 / 1.00 / -
S&P500 / 1347.56 / 975.32 / -27.6%
TOPIX / 1283.67 / 884.53 / -31.1%
年月日 / 2001/1/2 / 2003/6/25 / -
米政策金利 / 6.25 / 0.25 / -
S&P500 / 1476.65 / 913.18 / -38.2%
TOPIX / 1544.71 / 828.62 / -46.4%
年月日 / 2007/9/17 / 2008/12/16 / -
※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。政策金利は上限のデータです。利下げ局面直前は、連続した利下げ局面となる直前営業日の政策金利、利下げ局面最後は、連続した利下げ局面の最低金利になった時の政策金利を指しています。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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