職場での雑談がパフォーマンスを上げる!?
二つ目は、雑談です。
職場で雑談をする人のバイタリティスコアは、しない人よりも33%も高いという結果が出ました。しかも、グチやヒソヒソ話ではなく、ワイワイガヤガヤと笑いながら雑談をする人のほうが、バイタリティスコアが高いことがわかりました。
これは、かなり興味深い結果だと思います。調査からはそのメカニズムまではわかりませんが、例えば、職場に信頼関係があり、心理的安全性が高いと、雑談が活発になり、バイタリティスコアも高くなるということがあるのでは、と考えられます。
職場の心理的安全性を高めるためには、失敗をしても許される風土を作ることが重要だとされています。
この調査でわかったのは相関関係だけで、因果関係ではありません。雑談をするからバイタリティスコアが高いのか、バイタリティスコアが高い人が雑談をしているのか、どちらかはわかりませんが、もし、あなたが上司の立場なら、あなたのほうから積極的に部下に話しかけるようにするといいかもしれません。
少し話はそれますが、ハーバード大学のイチロー・カワチ教授は、社会関係資本、つまり、他の人たちとの社会的なつながりが寿命と関係していることを研究してきました。社会関係資本と健康との関連が明らかになったことは、20世紀最後の大発見だとも言われます。人間関係と健康は、密接にむすびついているのです。
ちょっと幸せな習慣をスケジュールに入れよう
バイタリティスコアに影響する要素の三つ目は、「ちょっと幸せになれる習慣」です。
「録画したテレビドラマを観る」「カフェで読書をする」「友達と食事に行く」「ガーデニングをする」「ボランティア活動をする」など、内容を問わず、自分が幸せになれる活動を予定に入れている人は、入れていない人よりも、バイタリティスコアが21%高い結果でした。
2014年のノースカロライナ大学チャペルヒル校などの研究でも、日々の生活の中で自分が幸せになれることを優先するとウェルビーイング度が高くなると報告されています。
忙しいビジネスパーソンの皆さんは、気がつくと、スケジュールが「やるべきこと」のTODOでいっぱいになってしまっているでしょう。そこで、「やりたいこと」についても、スケジュールに記入してはいかがでしょうか。
また、「To Feelリスト」を作ることもお勧めしています。これは、「楽しい」などの、経験したい感情を予定するものです。
楽しい映画を観るのでも構いません。脳は、実際に経験したことと映像などで観たことをあまり区別しないところがあります。
そうした習慣を持つことも、ウェルビーイング度を高めるために有効と考えられます。
《『THE21』2019年6月号より》
西本真寛(にしもと・まさひろ)
はたらく人の健康づくり研究者
東京大学客員研究員。組織における健康づくり(特にポジティブ・メンタルヘルス)を専門として研究。企業の健康経営に取り組みながら、ビジネスパーソン向けのヘルスケア・サービスの開発や企業の生産性向上のためのトレーニング、および、その開発を行なっている。これまで、経済産業省の健康経営オフィスレポートや都道府県の健康寿命研究、市町村の健康づくりの指針策定などに参画。東京大学大学院医学系研究科修了。(『THE21オンライン』2019年07月02日 公開)
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