9月相場が到来となります。年度前半の最終月ということもあり、投資成績が気になる季節です。ただ、お盆休みから9月・月替わりのこの時期は売買代金が縮小し、盛り上がらないことも多いようです。さらに、9月は過去の統計でみても値下がりすることも多い「要注意月」のようです。米中通商摩擦が長期化していることもあり、ここは慎重な投資スタンスが求められる所です。
そこで、日本株投資戦略では改めて、好配当利回りが期待できる銘柄に注目したいと思います。8月の日経平均株価は結局、前月末比3.9%の下落となる軟調な月でしたが、こうした投資環境は、配当等インカムゲインを確保しながら、中長期スタンスで着実に投資成績を上げようと試みる投資家にとっては投資チャンスに映るかもしれません。
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それでは早速、好配当利回りが予想され、着実な投資成果が期待される好業績の銘柄をスクリーニングにより抽出したいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額1千億円以上の銘柄であること
(3)広義の金融やREIT等を除く業種に属していること
(4)3月決算銘柄であること
(5)営業利益について、第1四半期の増益率が通期の予想増益率(会社予想)を上回っていること
(6)通期の会社予想純利益が赤字予想でないこと
(7)法令違反等に関する指摘や報道が行われていない銘柄であること
これらの条件をすべて満たす銘柄を、予想配当利回りの高い順に並べたものが表1となります。
今回、3月決算銘柄を対象にしたのは、9月末に中間配当の実施を控えている銘柄が多く、高い配当利回りを享受するためには、中間配当を確保することが前提になるケースも多いためです。
表1の最上位にある新明和工業(7224)は予想配当利回りが7%に達しています。中間期末に普通配21.0円の他、創立70周年記念配当45.0円もあり、計66円の中間配当を予定していることが大きく影響しています。同社は期末に21円配当も予定し、通期では1株配当が87円になる見込みです。8/30(金)終値は1,241円であり、87円はその7.01%に相当しています。
表1 4%台も複数あり?~「日株戦略特選」好配当・好業績銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(8/30) / 予想配当利回り / 2019/9末予想配当 / 20/3通期予想配当 / 営業増益率19/4~6 / 営業増益率20/3通期
<7224> / 新明和工業 / 1,241 / 7.01% / 66.0 / 87.0 / +65.6% / +2.7%
<4508> / 田辺三菱製薬 / 1,174 / 4.77% / 28.0 / 56.0 / -50.2% / -77.1%
<9437> / NTTドコモ / 2,682.0 / 4.47% / 60.0 / 120.0 / -10.1% / +18.1%
<4208> / 宇部興産 / 2,034 / 4.42% / 45.0 / 90.0 / +19.7% / +5.5%
<4569> / キョーリン製薬ホールディングス / 1,774 / 4.23% / 30.0 / 75.0 / +19.3% / +1.4%
<1861> / 熊谷組 / 2,932 / 4.09% / 0.0 / 120.0 / +80.1% / +5.8%
<1803> / 清水建設 / 886 / 4.06% / 18.0 / 36.0 / +39.8% / +1.8%
<3116> / トヨタ紡織 / 1,432 / 3.91% / 28.0 / 56.0 / -1.0% / -13.5%
<6995> / 東海理化電機製作所 / 1,678 / 3.81% / 32.0 / 64.0 / -5.1% / -5.5%
<1860> / 戸田建設 / 591 / 3.72% / 0.0 / 22.0 / +137.6% / -11.1%
※Bloomberggデータ、および会社公表データをもとにSBI証券が作成。予想配当は会社予想ベース。20/3期通期の予想営業増益率も会社予想ベース。
好配当銘柄投資の注意点
予想配当利回りは、予想1株配当金を株価で割って求められます。したがって、予想1株配当金や株価が変動すれば当然異なる値になってきます。前者は会社の配当政策の変更等によって変わりますし、会社の配当政策はその会社の業績によって変わります。また、株価は常に変動しています。すなわち、予想配当利回りも常に変動するものです。
なお、予想1株配当金の「予想」は会社予想であったり、アナリスト予想であったり、その平均(市場コンセンサス)であったり、様々な数字が存在しています。予想配当利回りのデータを利用して投資する時は、予想の主体がどこにあるのか、十分注意することをお勧めします。今回の分析では、会社予想数値を用いています。
なお、配当利回りの計算のベースになる予想1株配当金は、年間に受け取るすべての配当金を指しています。したがって、中間配当が予想されている銘柄では、9月末の配当を受け取らない場合、3月末の配当だけを受け取っても、表記の予想配当利回りを確保することはできません。新明和工業(7224・図1)の場合、中間配当が記念配当込みで高額になっているため、いっそうの注意が必要です。
なお、上述したように会社の配当政策はその会社の業績によって変わります。業績が予想よりも悪化し、配当予想が減額されるようでは、当初期待していた配当利回りを確保できなくなりますし、おそらく株価下落で損失発生も懸念されます。
そこで、冒頭のスクリーニング条件に(5)を入れることで、業績予想の下方修正リスクを下げることを狙っています。ここでは、(5)の条件を満たした銘柄を「好業績」と表現しており、必ずしも増益銘柄になっていない点をご注意ください。例えば田辺三菱製薬(4508・図2)の場合、第1四半期の営業利益は前年同期比50.2%の減益ですが、もともと通期予想営業利益は77.1%の減益予想になっており、その分、下方修正リスクは限定されていると考えられます。
なお、業績下方修正による場合も含め、株価下落リスクをコントロールするには分散投資を検討することもお勧めします。表1の銘柄の場合、上位5銘柄に100株ずつ投資するのであれば、投資金額(諸コスト未考慮)89万円余りで5銘柄に分散投資できる計算です。なお、分散投資する時は、同様の銘柄に投資することは避けるのがセオリーです。例えば表1の場合、建設株が3銘柄あるので、1銘柄に絞っても良いかもしれません。
この3銘柄のうち、予想PERがもっとも低いのは熊谷組(1861)で、PBRが低いのは戸田建設(1860)という評価です。中間配当が唯一実施される点を重視すならば清水建設(1803・図3)が優位かもしれません。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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