5Gの先見据え関連企業に商機

6G
(画像=Wright Studio / Shutterstock.com)

5G(次世代高速通信システム)の利活用の本格局面が間近に迫り、情報通信をはじめとする周辺産業が忙しくなってきた。ただ、水面下では早くも一つ先を見据えた取り組みが動き始めている。NTT(9432)は5Gの次に控える「6G」のカギを握る伝送技術を開発。計測機器のアンリツ(6754)も、新規格で想定される高周波数帯での研究を進める。通信分野の新たな巨大市場が見えてきた。

米国や韓国でサービスが始まった「5G元年」の今年。株式市場でも最大のテーマとして関連銘柄の物色が盛んだ。

「4G」や「LTE」などの現行の通信規格に代わる5Gは、LTEの100倍、4Gの20倍に相当する20Gbps(ギガ・ビット毎秒)の高速大容量通信を可能にするほか、低遅延を実現し、より大量のデバイスを同時に回線に接続できる。

こうしたインフラが確立することで、スマートフォンでは動画をダウンロードするスピードと規模が飛躍的に拡大する。それだけにとどまらず、家電や産業機器がインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)の普及、車の自動運転、遠隔医療といったイノベーション(技術革新)を通信がけん引していくことになる――。

そんな5Gのさらに先にある6Gとはどのようなものか。

NTTは昨年、100Gbpsの無線伝送に世界で初めて成功した。5Gで実用化する高速大容量通信の5倍のスケール。6Gで求められる、ギガの1000倍の1Tbps(テラ・ビット毎秒)でのデータ伝送への大きな一歩となり、5Gの次のステージへの扉が開かれた格好だ。

超高容量の6Gの世界では、文字通りあらゆるものがネットワークにつながり情報を送受信するインフラが構築され、もはやスマホのような専用のデバイスが必要なくなるかもしれない。

また、5Gでの低遅延は「ゼロ遅延」に進化する。遠い距離にいる人々が通信という概念さえ意識せず、リアルな映像を介してコミュニケーションを取ることが当たり前の時代がやってくる。

では、それはいつ実現するだろう。現在は5G関連の需要が旺盛なアンリツの濱田宏一社長は、6Gが導入され始めるのは2030年ごろとみる。そう遠くない未来へ向け、同社は大学などと共同で、次世代に利用される高周波帯に対応した方式の研究を続けている。「機器の開発は25年くらいから」(濱田社長)表面化しそうだ。

通信をめぐっては、米国と中国が激しい覇権争いを繰り広げる。トランプ米大統領が当初もくろんだファーウェイなど中国の通信機器メーカーの締め出しは、5Gでは暗礁に乗り上げつつある。だが、6Gでは米国は譲らないとみられ、成就すれば、同盟国の日本にとっても中国勢の代替需要を含めた大きな商機が広がる。

半導体の需要は5G以上の急拡大が予想される。検査装置の大手アドバンテスト(6857)は、次世代の通信フィールドとして有力な「テラヘルツ波」の周波数帯の要素技術を開発する。

自動運転や自律作動が自動車だけではなく、船舶や航空機、ロボットまで幅広い領域に延伸する。対象物の距離を測るセンサーの技術がより重要になり、オムロン(6645)や村田製作所(6981)はこれまで以上に活躍の場が増えるはずだ。

遠くて近い6G。身に着けて使うウェアラブル端末の延長線上では、究極の伝達手段が実現する可能性もある。脳とコンピューターをつなぐ「ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)」の技術が発達し、6Gのインフラと組み合わせれば、頭に思い浮かべたことを瞬時にやり取りするテレパシーも夢ではない。島津製作所(7701)や積水ハウス(1928)は、NTTなどとネットワーク型BMIの開発に成功している。

3D(3次元)映像を用いたサービスの普及も視野に入る。米マイクロソフトは、テレポーテーションのように人物の姿を遠隔地に再現する技術を持つが、6Gのインフラを使えば転送される3D映像はよりリアルできめ細かいものになるだろう。

穴株として狙いたいのが、アスカネット(2438・M)だ。同社は空中に立体的な映像を浮かび上がらせる特殊なプレート(写真)を製造販売する。次世代の3D広告向けに潜在需要が大きいほか、センサーなどと組み合わせれば映像に触れて操作することも可能なため展開の幅は豊富だ。

「5G化で動画や映像コンテンツの配信が盛んになるほど収益機会が広がる」(アスカネットの管理部)。6G時代にはさらなる事業規模拡大が見込まれる同社。足元では主力の写真集作成や遺影写真加工といった既存部門を着実に伸ばす一方で、成長分野への投資を積極化する構えだ。(9月17日株式新聞掲載記事)

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