要旨
- 中国では経済成長率の鈍化が続いている。中国国家統計局が10月18日に公表した19年7-9月期の成長率は実質で前年比6.0%増と、前四半期の同6.2%増を0.2ポイント下回り、2四半期連続で減速することとなった。中国共産党・政府が18年12月開催の中央経済工作会議で「反循環調節(景気減速の押し戻し政策)」と呼ばれる景気対策に舵を切り、デレバレッジによる下押し圧力は減じたが、米中対立による下押し圧力はカバーし切れなかった(下左図)。
- 個人消費の代表的な指標である小売売上高の動きを見ると、19年7-9月期は前年比7.8%増と前四半期の同8.5%増を0.7ポイント下回った。日用品や飲食などは好調だったが、家電や家具それに自動車が不調だった。都市部求人倍率が1.22倍へ低下し、都市部調査失業率も5.2%に上昇するなど今後の雇用情勢には注意が必要だが、消費者信頼感指数が引き続き高水準を維持しているため、個人消費が失速する恐れは今のところ小さい。
- また、投資の代表的な指標である固定資産投資の動きを見ると、19年7-9月期は前年比4.6%増と前四半期の同5.3%増を0.7ポイント下回った。地方政府債の増発などでインフラ投資は同5.3%増へ伸びを高めたものの、米中対立に伴う先行き不透明感から製造業は1%台で低迷しており、不動産開発投資は同9.7%増と高水準ながらも伸びが鈍化した。
- 一方、9月単月の景気指標には底打ちの兆しが見られた。9月の小売売上高は8月の伸びを上回り、自動車販売もマイナス幅を縮小した。9月の集積回路の生産は前年比13.2%増に回復、インフラ投資も7%前後の伸びを維持した。そして、ニッセイ基礎研究所の「景気インデックス」は、7月の5.97%、8月の5.99%から9月は6.14%へ回復した(下右図)。但し、米中対立という波乱材料が残るため、景気の先行きは必ずしも楽観できる状況ではない。