またトラブルとならずとも、登記や税金の手続きで連絡やコミュニケーションをとることが難しく、手続きが進まないこともよくあります。さらに、兄弟姉妹がお亡くなりになっていて、その子(自分から見て甥っ子・姪っ子)がおられる場合、つまり、配偶者と甥っ子・姪っ子が相続人の場合は、遺言を作成しなければ、手続きの煩雑さ・揉め事の発生可能性が極めて高くなります。このような場合には必ず遺言書を作成しましょう。
そして、相続人が確定した後は、具体的な遺産の相続分の計算をすることになります。相続分の割合は、例えば、配偶者と子(あるいはその代襲相続人・以下同じ)ならそれぞれ2分の1。配偶者と直系尊属なら配偶者3分の2、直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1となります。
遺言書を残さなければ基本的にこの順位と割合で遺産は相続されることになります。代襲相続まで考慮に入れると相続人の確定は非常に複雑となり、かかる手続の手間や煩雑さ、紛争発生の可能性などが大きく異なります。
相続対策の前提として、まずは推定相続人を確定・予想することが手続きのスタートとなります。推定相続人の確定・予想は、わかりにくい時は身近にいる税理士や行政書士、弁護士、司法書士などに相談すれば明確にしてもらえます。また、人によっては、いわゆる隠し子がおられるケースもあることでしょう。この点の法律のルールについては別の機会に述べたいと思います。
この相続人確定ルールの基本を前提として以下では2点、相続人について誤りやすいポイント・注意したいポイントを見ていきます。
「配偶者は常に相続人となる」(民法第890条)の配偶者について
既に述べましたように、配偶者は常に相続権があります。ここでいう配偶者は法律上の相続人に限られます。つまり、婚姻届けを出した相手方だけです。例えば、不仲などで50年別居をされていて事実上全く交流がなかったとしても婚姻届が提出されていて法律上婚姻関係があれば「配偶者」として相続権は必ずあることになります。
一方でどんなに親しい間の関係であったとしても、婚姻届を出していなければ、「配偶者」となることは絶対にありません。相続権は絶対に発生することはありません。法律的には配偶者ではなく、「内縁」となります。婚姻届を出せないという場合、その理由は様々です。例えば、法律上の配偶者が決して離婚意思を持たないケース、おじと姪のようないわゆる「世間をはばかる」ケースなど理由は様々です(甥姪とは3親等の傍系血族として婚姻が認められていません。民法第734条)
内縁の方に遺産を残すためには、遺留分減殺請求という別な制度も考慮に入れた上で遺言などをしっかりと残すしか方法がないので、特に注意が必要といえます。(遺留分減殺請求については別の機会にご説明いたします。相続では非常に重要な制度となります)