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ヒアリングすべき適切な顧客
人は5つのグループに分けられる
では、具体的にどのような人が適切な顧客なのでしょうか?
それを知るために、まず、イノベーター理論を説明します。
イノベーター理論とは、新しいアイデアや技術がどのように世の中に普及するのかを説明した理論になります。1962年にスタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授が『イノベーション普及学』という著書の中で提唱しました。
この理論では、時間の経過とともに採用する人の群を5つのグループ、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードに分けています。
- イノベーター(革新者)……新しいアイデアや技術を最初に採用するグループで、目新しさで採用を決定する。
- アーリーアダプター(初期採用者)……採用時期が2番手のグループで、プロダクトそのものの良さを判断して採用を決定する。
- アーリーマジョリティ(前期追随者)……アーリーアダプターが採用してから採用する一般的なグループで、アーリーアダプターが使用していることを1つの判断軸として採用を決定する。
- レイトマジョリティ(後期追随者)……平均的な人が利用して一般的に広がってから採用するも、基本的には導入に懐疑的なグループ。
- ラガード(遅滞者)……もっとも採用に懐疑的な、変化を嫌う、旧来のものを使い続けるグループ。
そして、イノベーターは市場の全体の2・5%を占めており、ラガードは市場の16・0%を占めているとされています。
ヒアリングすべきはアーリーアダプター
このイノベーター理論を元に考えると、アーリーアダプターが適切な顧客(ペルソナ)です。
なぜなら、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードは他人が使っているのを見てから導入を決定するグループなので、この人たちにいくら良いプロダクトを提供しても導入に至らないからです。さらに、初期で導入することは検討しないのに、機能についてアドバイスをする評論家のような行動をします。「ここはこうするべきだ」といったことです。しかし、そのアドバイスに従って改良しても採用しないのがこのグループになります。
また、イノベーターも適切な顧客ではありません。イノベーターは新しいものであれば取り入れる傾向にあるため、本当の意味であなたが提供するプロダクトを評価しているわけではありません。目新しさが導入の1つの基準となるため、本当にあなたのプロダクトを欲しているとは限らないのです。そのため、彼らの意見は本当の顧客ニーズとは必ずしも一致しない可能性があります。
これらに対してアーリーアダプターは、周りの意見に左右されず、自分自身がそのプロダクトを欲しいか欲しくないかで採用を判断します。課題を解決することを切望しており、プロダクトの多少のマイナス面も許容できる層になります。ですので、アーリーアダプターを意識してペルソナを作ることが重要なのです。
ペルソナの決め方
ペルソナを具体化するための主な切り口
では、ペルソナを具体化していきましょう。
ペルソナをどこまで細かく定義するかは、競合他社との兼ね合いで決まります。それこそ、携帯電話がない時代でしたら「どこでも目の前にいない人と瞬時にコミュニケーションが取れる」というコアな解決策で十分でしたので、20歳から70歳の人といったレベルの顧客でよかったですが、今日のようにさまざまな携帯電話(スマートフォンを含む)が出ている場合は、より具体的なペルソナが求められます。
例えば、「40代男性で、年収1000万から3000万円の人で、メインに使う携帯を1台持っており、大きなカバンを持ち歩かない人」とすると、カード型のスリムな携帯電話となるかもしれません。
ペルソナは以下の切り口などで細分化しましょう。
- 氏名 ・年齢 ・性別 ・住まい ・年収 ・趣味 ・特技 ・職業
- 仕事内容 ・所属(コミュニティなど) ・業務内容 ・世帯(家族構成)
- 学歴 ・好きな●● ・ライフスタイル ・価値観 ・よく見る媒体
- よく使うSNS ・課題の背景
注意点としては、これらの切り口に制限されず、あなたの起業アイデアを求める人がどのような人なのかを考えて、必要な要素を追加することです。
具体的な誰かをイメージするのがコツ
なお、ペルソナを明確にするコツは、具体的な誰かをイメージすることです。
起業アイデアの「誰の」を考える際に、具体的な誰かをイメージしたり、もしくは自分自身を対象に考えたと思います。その時考えた対象が具体的にどのような人物かを深掘りします。
課題(ニーズ)の背景には、その人が置かれている環境が影響したり、課題を抱えている結果、何かしらの行動が引き起こされていたりします。ですので、具体的な人をイメージしてペルソナを深掘りしてください。
例えば、「ペルソナは同僚の田中さん」とすることで、田中さんがどのような人なのか、属性やライフスタイルなどを明確にしやすくなります。自分自身がターゲット顧客であれば、「自分自身はどのような属性の人間か」を考えることでペルソナを明確にしやすくなります。
ペルソナへのアプローチ方法
主なアプローチ方法は3つ
ペルソナが明確になったら、次はペルソナにアプローチします。ペルソナへのアプローチ方法に正解はありませんが、ここでは主なアプローチの仕方をお伝えしましょう。
①ペルソナが集まる場に行く
ペルソナがどのような職業か、ライフスタイルか、趣味は何か、所属するコミュニティは何かなどを明確にすると、その人がどこにいるのかをある程度想定できます。
例えば、ランニング時に使用する商品・サービスだとすれば、皇居の周りを朝もしくは夕方訪れれば、顧客となるランニングをしている人に会えるでしょう。皇居にいけなくても、近くの公園とか、ランニングがおこなわれる場があるはずです。
また、世の中にはさまざまなイベントがおこなわれているので、そこに参加するのも良い方法です。起業家を探したいのであれば、経営セミナーに参加すれば出会えますし、システムエンジニアに会いたければ、そのような勉強会に参加すれば出会えます。
ターゲットの趣味・嗜好・ライフスタイル等を考えて、その人たちが集まる場へ足を運んで、声をかけていきましょう。
②SNSを活用する
フェイスブックやツイッターで「○○な人を探しています」と投稿するのも良い方法です。
昔、テレビで「6人目(5人に仲介してもらう)で世界中の誰とでも繋がれるか」を実験して検証していた番組がありましたが、その概念が実際に実証されているようです。「6次の隔たり」と言われるもので、知り合いを5人辿れば世界中の人と繋がれるというものです。
補足しますが、起業アイデアの検証は有名人と繋がりたいわけではなく、ペルソナとなる一般の人と繋がるのが狙いなので、SNSを活用することで間違いなくあなたが希望するペルソナに出会うことができます。
③身近な人に紹介してもらう
SNSと同様に、人伝いにペルソナを探す方法です。
イベント会場へ行っても声をかけにくい場合もあるかと思います。そこで実際の身近な人を伝ってペルソナを探していきます。
例えば、会社の同僚や家族、知人など、「〇〇(属性)な人が知り合いにいないか」を聞いてみましょう。意外と聞いた人自身が対象であったりするかもしれません。
または、学生がペルソナならあなたの学生時代の恩師に繋いでもらったり、同級生から学生時代の先生に繋いでもらったりと、いろいろなやり方ができます。
必ずペルソナに繋がれますので、諦めずにどうすれば、誰なら繋がれるかを自分が持つネットワークを見て考えてみてください。
ターゲット(ペルソナ)は芋づる式に!
上記のような方法でターゲットを一人捕まえたら、芋づる式に捕まえましょう。
どういうことかというと、一人目のターゲットに声をかけられたら、その人から別の人を紹介してもらうようにします。同じ趣味の人や似たようなライフスタイルを送っている人が身近にいることが多いからです。
また、1回ヒアリングして終わりではなく、その後も何度もヒアリングができるように、関係を築いておきましょう。ターゲットは当然にあなたの商品・サービスを使う可能性のある将来のお客様なので、もし、あなたがその人の課題を解決しようと取り組んでいるのであれば、進んで協力してくれるはずです。
課題ありきの探し方はNG
なお、ペルソナを探す際は、「○○のような課題を抱えている人」を探すのではなく、「〇〇をしている人」「〇〇の状況にある人」というように属性で探します。あくまで課題ありきにならないようにしましょう。
例えば、あなたのビジネスが、ランニング中に荷物の保管場所に困るランナーの荷物保管を提供するサービスだとすると、「ランニング中に荷物保管に困っている人」という探し方ではなく、「ランニングをしている人」で探します。
当たり前ですが、困っているかどうかを判断するため、ペルソナの仮説として「〇〇の人」は困っているだろう、と想定して「〇〇の人」を探すようにしましょう。