(本記事は、大久保 豊、西村 拓也、稲葉 大明、尾藤 剛、小野寺 亮の著書『人工知能と銀行経営』きんざいの中から一部を抜粋・編集しています)

デジタル・プロセス・リエンジニアリングとイノベーション

AI分野育成
(画像=PIXTA)

いよいよ本書の本題に入ります。“人工知能をどう経営実装するか”です。

ここまで、フィナンシャル・デジタライゼーションの世界では、銀行・地域金融機関のデジタル・プロセス・リエンジニアリング(以下、「DPR」)は必要不可欠であり、“人間はそもそもお邪魔”な存在で、“デジタルが流れ、流れ込む”よう、ビジネス工程をデジタル化しなければならないこと、そのためには人工知能(AI)を“電脳歯車”として機能するよう、最大最強最良の口座取引明細履歴情報から精錬精製すること、そして現在紡ぎ出されている“ハルカたち”を紹介してきました。

本章より、精錬精製したハルカたちをどうビジネス工程に配置し、“電脳歯車”として駆動させるかの基本設計に関する考察を進めます。

 DPRの設計はもちろん、“人間にしかできない”ことです。フィナンシャル・デジタライゼーションの“世界観”を打ち立て、人間価値を新たに創造し、“AIと人間の協業組上げ”を成し遂げること、それは人間にしかできないことなのです。

飛躍的に発展しているディープラーニングは、ニューラル・ネットワークの「隠れ層」を多層に増やしていくものです。

説明変数と目的変数の関係を、人間の脳を模したネットワーク構造によって表現する数学モデルで、各変数が「神経細胞」を、変数間の関数が「ニューロン間の信号」のアナロジーとなっています。

一方、“人間の脳”はといえば、人工知能とは比較にならないすごさです。隠れ層は数十のレベルではありません。1,000億個の脳細胞、シナプス100兆本のニューラル・ネットワークです。

DPRをどう設計し実行するか、私たちの“脳の腕の見せ所”なのです。

図表1
(画像=人工知能と銀行経営)

 “イノベーション”の概念を初めて提示したヨーゼフ・シュンペーターは、「生産要素の新結合」と定義しました。「人工知能」と「人間」を“新結合”するイノベーション行為こそがDPRなのです。

銀行・地域金融機関こそがAI人財の“苗床”となる

AI
(画像=Getty Images)

わずか数年で大きく飛躍した人工知能と新結合できる私たちは、きわめて幸せなフロンティアにいます。この“新結合”が、数年で完成するとは到底思えません。産業革命は100年にも及ぶものです。私たちは、「人工知能」と「人間」をどう結合し、イノベーションを起こすかの“発起点”にいるのです。

AIが人間機能を代替し、錆びれた社会になると悲観するのはおかしな考えです。“発起点”にいま生きている私たちは、“やりたい放題”のワクワクする時代に生きているのです。そんなチャンスを、きっと後世の人たちは羨むことでしょう。AIと人間の協業設計・実行・修正・発展は、2~3年で終わるものではありません。

そして、AIとの協業は、『新しい人間価値』と『働きどころ』を生むのです。私はそう確信しています。そして、読者の皆さん全員がそのチャレンジャーとしての有資格者です。20代、30代の若手はとにかくAIにかかわった仕事をしたいと考え、チャンスを希求しています。

しかし、産業構造の集約が進んでいる製造業、流通業や商社において、それができるポジションは多くなく、なかなかその輪に入れません。

一方、銀行・地域金融機関は特殊な環境です。同一都道府県内にて多数の企業体が存在しています。そこに皆さんは在籍しています。AIと人間の新結合の世界に自らの立場を置けるチャンスが目の前にあるのです。このチャンスをしっかりとつかんでください。さらに幸運なことに、つかんだチャンスは2~3年では決して終わらず、皆さんの長い人生の活躍場所となるでしょう。

そして皆さんの行動が日本のAI人財の“苗床”となり、地域経済、中小企業へのAI展開の活動原子となるのです。なんて恵まれて、ワクワクする時代と環境に皆さんが生きているか、ぜひ感得してください。

人工知能と銀行経営
大久保 豊(おおくぼ・ゆたか)
西村 拓也(にしむら・たくや)
稲葉 大明(いなば・たいめい)
尾藤 剛(びとう・つよし)
小野寺 亮(おのでら・りょう)


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