(本記事は、大久保 豊、西村 拓也、稲葉 大明、尾藤 剛、小野寺 亮の著書『人工知能と銀行経営』きんざいの中から一部を抜粋・編集しています)

フィナンシャル・デジタライゼーションの世界で人間だけができること

半導体
(画像=Getty Images)

 フィナンシャル・デジタライゼーションの世界において、人間が先鋭化すべき価値とは何でしょうか。
 AIと人間の“新結合”によってDPRイノベーションを最高のものとするために重要な考察となります。
 それは信用創造から将来創造へとパラダイム・シフトして行動することと考えます。お客様にとっての“過去の延長線上”をなぞるのではなく、“より良い次元への誘い”“いまの次元を超える”ことにこそ、人間の本源的価値があります。なぜなら、AIは“過去の延長線上での良判断”にすぎないからです。

前掲の急成長会社への融資案件は、お客様が“次元超越の端緒”にいたという事案です。“次元超越の可能性”を人間が評価し、確固る“扉”をファイナンスとして提供できるかの問題です。

一方、ある会社では、経営環境の変化や未知のライバルの出現によって急激に業績が悪化し始めるケースもあるでしょう。

HALCA-A(口座出入俯瞰モデル)やHALCA-B(商流連関俯瞰モデル)、HALCA-C(マクロ・ミクロ経済俯瞰モデル)は、その端緒に“気づく”ことはできます。しかし、その後の行動はとれません。

もちろんHALCA-G(コミュニケーションモデル)ではコミュニケーションができます。しかし、その後の対話が続かない。なぜなら、“過去非延長”のうえ、“悪構造問題”であるからです。

ハルカたちにより形成される“仮説”はもちろん利用できます。しかし、お客様の“未来”に関してコミュニケーションできるのは人間だけなのです。

人工知能は、不断に全件全社に対して自動モニタリングし、将来の“仮説”を産出します。そのなかから、「良展望」「悪展望」を問わず、“次元変化の端緒”を判定し、お客様の適切な事前行動、対処行動を導き出せるのは人間だけなのです。

第9章で、「良構造×低規模性(高規模性)」における、AIと人間の有機結合の必要性を、AI棄却(承認)案件の再審査機能のところで述べましたが、“次元変化の端緒”を判定し、お客様との適時有意なコミュニケーションを形成するようAIと人間の“新結合”を行うことは、DPRの具体設計における重要なポイントとなります。

 もう1つの『人間が先鋭化すべき価値』は、過去の延長線からの“新たなパス”の創造により、「次元を変える」「次元を超える」能動アクションを企業経営にもたらすことです。
 これこそ、人間にしかできません。「事業転換サポート」「BPRサポート」「抜本合理化サポート」「事業再生サポート」「事業承継・M&A・MBOサポート」がまさにそれに当たります。
 これらの業務は、近年、各銀行・地域金融機関が注力している重要分野です。それらを加速できるよう、人間が十分に配置できるよう、AIと人間の全体的な役割分担を新設計することが、DPRの重要なポイントです。

「次元を変える」「次元を超える」人間価値の発揮はほかにもあります。

「地域の戦略エコシステム形成のためのマクロ的M&Aサポート」「他地域・プラットフォーマーとの電子連結サポート」です。銀行・地域金融機関の重要な使命は、地域経済を支える企業の育成です。これからのフィナンシャル・デジタライゼーションの世界において、コアカスタマーは“法人”となるのでなおさらです。

しかしすべてが、常時電子連結、多次元相互、即時共鳴する巨大な電脳社会において、1社1社の個別育成支援では限界があります。地域経済全体で、強大な電脳社会に“新次元での組込み”がなされるよう、他地域・他業態・有力プラットフォーマーとの戦略的な電子連結へと地域経済を大きく新設計する必要があります。

新たな次元の“地域戦略エコシステム”を総合プロデュースするのです。また、地元ハブ企業による地域エコシステム内のM&A(事業承継案件もあるでしょう)、商流連結している上流・下流の他府県企業に対するM&Aを積極展開するのです。

そこにおいて、HALCA-B(商流連関俯瞰モデル)、HALCA-C(マクロ・ミクロ経済俯瞰モデル)は有意なサポートとなるでしょう。しかし、新たな行動を生起することは人間にしかできないのです。そう“実現したい世界観”はAIには想像も創造もできないのです。

人工知能と銀行経営
大久保 豊(おおくぼ・ゆたか)
西村 拓也(にしむら・たくや)
稲葉 大明(いなば・たいめい)
尾藤 剛(びとう・つよし)
小野寺 亮(おのでら・りょう)


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