木材卸売会社を子会社化した理由とは?
――東集は今年9月に子会社化したばかりですが、なぜこのタイミングで?
永井 1年ほど前から、東集とは対話を続けていました。昨今、林野庁が木材業界を変革したいというメッセージを強く打ち出していますから、結果的に、良いタイミングだったと思います。せっかくやるのなら、日本が大事にしてきた木材産業に貢献したいという気持ちもあります。
例えばディスラプター的なベンチャー企業は、この業界を見て、「伐採、加工、卸売、小売を別々の会社がやっていて効率が悪いから、バリューチェーンを破壊して一気通貫でやりましょう」などというアイデアが出てきがちでしょうが、我々は業界の中に入って、そうした分業が進んでいることの必要性も理解したうえで、まずは自社の利益を上げながら、この業界の本質的に最適なスタンダードを作り変える必要があればそうすべきだと考えますし、残すべきスタンダードがあれば、古き良き歴史を重んじて大切にしていきたいと考えています。
――具体的に、東集の生産性を上げる方法は見えているのですか?
永井 まず、社内のあらゆるやり取りをデジタル化して、効率化します。そして、世界最先端レベルのマーケティングやブランディングを行ない、組織戦略や経営戦略をきちんと作り、理念・ビジョンもきちんと作って、経営全般を健全な状態に持っていく。
――やはり教科書通りですね。
永井 教科書通りのことに本気で取り組むんです。そして、やり抜くこと。そうすれば、必ず企業は利益を出せるようになります。
――その次の、技術によるイノベーションについては?
永井 経営をしていく中で、木材卸売業界の非効率な部分に気づくことが出てくると思います。先ほど申し上げた、木を切るところから販売するところまでに関わる企業の数が多いということも、本当に問題なのかどうか、経営しているうちにわかるはずです。本当に問題であることが何かわかれば、それを最適化する技術に投資します。
ベンチャー企業の経営者は、「日々、生活をしている中で、こういうことが問題だと体感したので起業しました」という話をしますが、木材卸売会社を経営すれば、木材卸売業界を体感できるわけです。すると、ビジネスアイデアはどんどん出てきます。利益を得ながらアイデアの宝庫も得られるなんて最高じゃないですか(笑)。
――東集の社員は、御社の子会社になったことについて、どう感じていますか?
永井 子会社化から1週間で全従業員約25名と会話をしました。そこで、レガシー産業を花形産業にするというビジョンについても話しました。初日は「?」がいっぱいという反応でしたが、2日目からはご理解いただいて、「私たちはなんのために働いているのか」という話ができるようになっている人材がすでに増えています。