筆者はこれまで億を稼ぐ社長たちとビジネス、プライベートでお付き合いをさせてもらってきた。その中には「もう一生働く必要なんてないのでは?」と思わず言ってしまうほどの巨万の富を得た社長もいる。だが、そうした社長は南国リゾートビーチでのんびりと波に揺られているのではなく、自分の稼ぎに関係なく猛烈に働き、そして「あえて危機的状況」に身を委ねているのだ。

あえて危機的状況にするIT社長

社長
(画像=El Nariz/Shutterstock.com)

筆者が懇意にさせてもらっているIT社長は、月収2,000万超、年収は2億円を超えている。彼の推定資産は30億円ほど。だが、彼はあることに危機感を覚えている。それは「ビジネスへのやる気が無くなってしまうこと」に対してである。

野生の動物を動物園に連れてくると、もはや野生に戻ることはできない。筆者は過去に、旭山動物園のスタッフからそう教えられた。自ら生活環境を整えたり狩りをしたりなどをしなくても、助けを受けて十分な生活ができてしまうためである。彼を見ているとそのことを思い出してしまう。彼はあえて自分を危機的状況に追いやり、時に自分を痛めつけるようなスタイルで日々、ビジネスに取り組んでいるのだ。

「その気になれば、東南アジアに住めば一生安泰で生きている。だが、楽を覚えるのが怖いから、あえてどでかい出費を続けて稼がなければいけない状況にしている」と彼は言う。彼が資金を投じるのは金融投資だ。シンガポールに住居を構え、日々サラリーマンの年収レベルの金額を金融投資に投じる。彼はトレードの腕もビジネス同様、プロフェッショナルなのだ。しかし、それでも完全なる敗北を喫することも少なくないと言う。にもかかわらず、「それでいい。ますますビジネスで稼ぎ続けようという気になる」と彼は語っていた。

つまり彼は、甘えた生活をすることでビジネスでの駆け引きを楽しめなくなることを危惧しているのだ。故に、危機的状況に追い込み、自分を鼓舞してビジネスに対するモチベーションを維持しているのである。その結果、月収2,000万を超える利益を出し続けている。

サイヤ人のような社長たち

社長には、サイヤ人のような人も少なくない。サイヤ人とは、漫画「ドラゴンボール」に登場する人種である。サイヤ人は死にかけるほどの状況に陥り、そこから回復すると以前により格段に強くなるという性質を持っている。

年収億超え社長を見ていると、ビジネスリスクを取り、あえて危機感を自らに煽り、そこから復活を遂げることで爆発的な成長を期待するのである。その姿は、まさにサイヤ人と言えるだろう。

一般的には、「あえて自分を痛めつけるなんて理解できない」と思われるかもしれない。しかし肉食的に稼ぐ社長は、何事にも屈しないメンタルタフネスを持っているのだ。危機的状況をどこかで楽しんでいるというフシすら感じられる。

自ら危険とも思えるリスクを取り、危機的状況から復活することこそ、稼ぐ社長の特徴でありビジネスを楽しむ要素の1つなのではないだろうか。

経営者は3つの坂に強くなれ

経営者は「3つの坂」に強くなることが大切だ。

3つの坂とは、

  1. 上り坂
  2. 下り坂
  3. まさか

のことである。

経営者にとってビジネスとは、人生と同義と言える。

ビジネスには、市場やニーズによって「上り坂」があれば「下り坂」もある。ただそこには「まさか」というもう1つの坂があることを忘れてはならない。この「まさか」に対処するには、強いメンタルタフネスが必要になるのだ。 ビジネスは何が起こるのかが全くわからないという不確定性に満ちており、その時に頼れるのが己の強さのみである。肉体はトレーニングで鍛えることが出来るが、心の強さであるメンタルタフネスは精神的にピンチに陥らせ、そこから脱する時の爆発的推進力で鍛えることが出来るのだ。

つまり、ビジネスでは「上り坂」や「下り坂」はもちろん、「まさか」の出来事にも屈しないメンタルタフネスが重要と言える。稼ぐ社長は、強いメンタルタフネスを持っているケースが非常に多いのだ。 「人並み以上に豊かに暮らせる年収があるからいいか」と慢心する時から経営は崩壊する。あえて危機的状況に自分を追い込み、メンタルを鍛える習慣を持ってみるのはいかがだろうか?

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)

(提供:THE OWNER