困難な課題にどう向き合うか

伸びる会社、沈む会社の見分け方,小宮一慶
(画像=THE21オンライン)

例えば、就職したいと考えている会社が、将来性がある良い会社なのか。取引先の会社は、これから成長が期待できるのか。いまはネットで調べれば、簡単になんらかの情報を得ることができるが、それは「誰か」の知見やものの見方だ。それを参考にしながらも、自分自身で実際にその会社のよしあしを見抜く”確かな目”を養っていくことが大事だと、経営コンサルタントの小宮一慶氏は言う。具体的には、どこをどう見ればいいのか。一例を教えてもらった。

※本稿は、小宮一慶著『伸びる会社、沈む会社の見分け方』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

クレームを飛躍のチャンスにした会社

熊本に本社を置くウェディングボックスという会社があります。事業の柱の一つが成人式の振袖レンタル・販売業です。現在、全国に51店舗を構えています。

振袖というのは、一式全部をそろえて購入すると何十万円とかかります。着るとしても人生で2、3回程度ですから、今はレンタルをする人が増えているのです。成人式に着たいとなると、1年、2年前から予約をしておく人もいます。

ところが、レンタルの着物の場合に起こりやすい悲劇があります。せっかくの晴れ着なのに他の人と着物が重なってしまうことがあるのです。

データ管理をしておけば、自社が貸し出した着物に関しては、同じ成人式会場で同じものが重なってしまうようなことがないようにチェックはできます。しかし、よそでレンタルしたり買ったりしているものまでは確認しようがありません。

晴れやかな笑顔で成人式に出かけた女性が「着物も帯もまったく一緒の人がいた。こんなことなら、成人式なんか来なければよかった」と泣いていたこともあったそうです。

その会社に責任があるわけではありませんが、せっかくの成人式の晴れ着がお客さまにとってそんな残念な思い出にならないようにするにはどうしたらいいか、そんな事態を避ける方法はないだろうか、と考えました。

そして、それを解決する方法を見つけたのです。京都の着物会社に頼んで、自社だけの独自の柄、オリジナル柄の着物を作ってもらうことにしたのです。その分、値段は多少張りますが、他の人と重なってしまうようなことは起こりません。

なぜオリジナル柄の着物を制作してもらうことができたかと言うと、全国で2番目に振袖を購入する会社にまで成長していたからです。しかも、1回限りの話ではありません。今後も仕入れる着物の枚数を増やせば増やすほど、オリジナル柄を増やしていけますから、よそと重なることはますますなくなるわけです。会社にとっても、お客さまにとってもメリットです。

「他の人と着物が重なるのは、レンタルであれば仕方がないこと。それがイヤだったら一点ものの高価な着物を買えばいいじゃないか」とは考えなかった。

お客さまの立場になって考えた結果、それまで業界全体があきらめていた問題の解決が可能になったのです。