リサーチ不足の「なんとかなるさ」は禁物
自分のキャリアは自分で創り出すもの─―。終身雇用と年功序列を担保してもらう代わりに、会社命令には逆らえず縛られてきた日本のサラリーマンにはそれが難しいことになってしまっていたと、400社以上で人材育成を手がけてきた〔株〕FeelWorks代表取締役・前川孝雄氏は指摘する。組織に依存するのではなく、自分自身で自分のキャリアをコントロールできるようになれば、きっと働くことは今よりもずっと楽しくなるはず。しかし、そのためには、会社を「まだ」辞めてはいけないと言う。辞める前にやるべきこととは?
※本稿は、前川孝雄著『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
思いのほか世の中の実情を知らない大企業のミドル
大企業のミドルからの相談に乗っていると、「自分の市場価値も、世の中の実態も驚くほどわかっていないな」と感じることがしばしばあります。
30年近く社会人としてのキャリアを重ねてきたベテランがなぜそのようなことになってしまうのかとも思いますが、大企業の恵まれた環境、その恵まれた環境に依存する内向きな思考が、自分や世の中を客観的に見る力を鈍らせてしまうようです。
一方、大企業でそれなりのポジションを得て、高い収入を得てきたことは、中高年サラリーマンにとって大きな自信となっています。自分にはそれだけの社会的価値があるというプライドが彼らを支えているのです。
その結果、生まれるのが根拠なき楽観主義です。
「大手で課長を務めていた自分なら中小企業の仕事など簡単に務まるはずだ」「転職先の年収? ぜいたくは言わないけど700万円くらいはほしい」……etc.
新聞やインターネットなどで二次情報、三次情報を収集するだけでなく、会社を辞めて転職した元同僚などにじっくり話を聴くなどして一次情報に触れれば、自分の考えが見当外れであることはすぐにわかるはずなのですが、それすらしていない。このようなリサーチ不足の状態で「なんとかなるだろう」と転職・起業といったアクションを起こすのは危険です。まだ辞めてはいけません。