(本記事は、三枝 元氏の著書『最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

成功
(画像=PIXTA)

SUCCESsの法則

【使う目的】自分の話に関心を持ってもらう

シーン
旅行会社入社2年目の営業のノリコは、クライアント企業の社内旅行のプレゼンを担当することになった。明るい性格が買われての抜擢であったが、客先でのプレゼンは初めての経験であり、不安が一杯である。
企画書を練り上げたノリコは、本番の3日前に、親しくしている先輩にプレゼンのリハーサルに付き合ってもらうことにした。企画内容を徹底的に頭に叩き込んだノリコは、相手を見ながら、概要、具体的な内容、クライアントにとっての価値、採用実績について、企画書の順に説明した。
「我ながら過不足なく説明できたな」と自画自賛気味のノリコであるが、「う~ん、印象に残りにくいというか、何かインパクトが足りないんだよね。」と先輩の感想はひややかである。
ノリコのプレゼンにはどこが問題があったのだろうか?

フレームワークの説明

SUCCESsの法則とは、アメリカのベストセラー作家のハース兄弟によるメッセージの伝え方の6つのポイントのことです。

Simple:単純明快である
Unexpected:意外性がある
Concrete:具体的である
Credible:信頼性がある
Emotional:感情に訴える
Story:物語性がある

なぜ必要か?

企画書では「伝えるメッセージをなるべく絞る」ことや、「具体的な例やデータを用いたり、複数の根拠を示したりして、聞き手からの信頼感を得る」ことが重要です。

ただし、直接話し手が聞き手に訴えかけるプレゼンでは、企画書と異なるポイントがあります。それが印象を高めるための「Emotional:感情に訴える」と「Story:物語性」です。

話し手はアピールしたい点を熱く強く語る必要があります。弱々しい伝え方では信頼性に欠けてしまいます。

もちろん態度や姿勢、ジェスチャーなども大事です。フェイス・トゥー・フェイス・コミュニケーションにおける情報には、言語情報(話の内容)、聴覚情報(話し方)、視覚情報(見た目や表情など)の3つがあり、それらが一致しない場合、影響力は順に7%、38%、55%という研究結果があります(メラビアンの法則)。つまり、せっかくよい内容でも、早口だったり、弱々しい声で、視線が泳いでいたりすると、説得力がなくなってしまうのです。

ただ企画書を読み上げるということがよく見られますが、これでは聞き手にあなた自身やあなたの話に注意を持たせることができなくなります。その結果、印象には残りません。

企画書をただ順に読み上げるのではなく、起承転結など話にストーリー性を持たせると、聞き手を引き込むことができます。プレゼンは、内容もさる事ながら、印象で決まる部分が大きいです。相手に直接訴えかけることができるという貴重な機会を生かすために、話の展開を工夫してみてください。

シーンの場合はどうするか?

シーンの場合、「Simple:単純明快である」「Concrete:具体的である」「Credible:信頼性がある」はできていそうですので、残りの3つを工夫してみるとよいでしょう。

「Unexpected:意外性がある」は一見、ハードルが高いように思うかもしれません。しかしながら、こちらが当たり前と思っているようなことでも、知識がないクライアントにとっては、案外、知らないことであったりします。

どういう話が受けるのか同僚などに話を聞いて、取り入れるとよいです。意外性を持たせることができれば、「Story:物語性がある」もつくりやすくなります。

あとは、明るく、自信を持った態度と話し方でプレゼンすることです。


・プレゼンは、相手に直接訴えかけることができる絶好の機会。
・どうすれば相手の印象に残るか話の展開を工夫し、自信を持って臨もう!

3つの交渉パターン

【使う目的】交渉で互いの満足度を高める

シーン
オフィス用家具の営業マンのマサキは、主要取引先であるX社から、急な増員にともなう100名分のデスク、イス、キャビネットの引き合いをもらった。客先からは、以下の条件が提示されている。

・総額3,500万円以内に費用をおさえること
・週末を使い、月1回ずつ3回に分けての納品を希望する
・特に30名分は至急納品してほしい
・支払い条件は、これまでどおり、半年後に現金振り込みにて支払う
・条件をのんでくれなければ他社に発注することも検討する

X社は重要顧客であるため、他社に注文を取られるわけにはいきかない。かといって、相手の条件をすべてのんでいては赤字になる可能性がある。
マサキは、どのように対処すべきだろうか?

フレームワークの説明

交渉には、3つのパターンがあります。

(1)分配型交渉
限られたパイをめぐって、相互が自分の取り分(利益)の最大化を図るために行う交渉のことです。自分が得をすれば相手は必ず損をするし、相手が得をすれば自分は必ず損をするというパターンです。価格交渉が典型的です。

(2)利益交換型交渉
パイは限られていますが、自分が重要でない部分は譲り、その代わり自分にとっては重要だが相手にとっては重要でないものを引き出すというものです。
ある法人取引で、売り手は代金をその場で現金で欲しいというニーズがあり、買い手はできるだけ安く買いたいというニーズがあったとします。この場合、売り手側が多少価格を安くする代わりに、買い手側からその場での現金支払いを求めるという交渉が成り立ちます。

(3)創造的問題解決型交渉
交渉当事者が協力し合ってパイを拡大するというものです。パイを拡大すれば、互いの取り分は大きくなります。
例としては、隣同士で客の取り合いをしていた店同士が、遠方からもたくさんのお客を呼ぶことで互いに利益を高めるために、話し合いで協力し合って共同で販促活動を行うことにしたといったことがあります。

分配型交渉は「WIN-LOSE型」、利益交換型交渉と創造的問題解決型交渉は「WIN-WIN型」と言えます。

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
(画像=最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク)

なぜ必要か?

交渉を「自分の利益を最大化するためのかけひき」「限られた利益の奪い合い」と考えてしまうと、当事者同士が互いに譲らず、交渉がまとまらなかったり、力関係で上にある相手に押されて、十分な利益を得ることができなかったりといったことになってしまうでしょう。

できるだけ分配型ではなく、利益交換型(場合によっては創造的問題解決型)の余地がないか検討する必要があります。

通常、交渉から得られる利益は1つだけではなく、複数あります。交渉によって得られる自分と相手の利益をピックアップして、「自分には価値がないが相手には価値があるものがないか」「自分には価値があるが相手には価値がないものがないか」検討すると、利益交換型の余地が生まれます。

シーンの場合はどうするか?

シーンの場合、X社は5つの条件を示していますが、すべてが絶対条件とは限らず、何らかの優先順位があるはずです。マサキは客先に次のような問いをしてみるべきです。

「5つの条件のうち、絶対的なものはどれか(あるいは譲れるものはないか)」
「もし価格が絶対条件であるならば、効率化のために1回でまとめて納品してよいか(あるいは支払い条件を見直してもらえるか)」
「納入条件を飲めば、価格や支払い条件は考慮してくれるか」

客先だからといって、相手の要求を絶対視するのではなく、譲ってもらえる部分がないか尋ねる必要があります。「自分には価値がないが相手には価値があるもの」「自分には価値があるが相手には価値がないもの」があれば、条件を交換することによって互いに満足度が高まるでしょう。


・交渉は利益の取り合いではない!
・ただ相手の要求を鵜吞みにするのではなく、自分と相手がともに得する余地がないか検討してみる。
最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
三枝 元(さえぐさ げん)
ビジネスフレームワーク収集家、中小企業診断士。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。大手メーカーでの法人営業、資格指導校での教材作成と教室講義に従事(中小企業診断士講座)。
2015年に独立後は、企業支援、研修・セミナー講師、ビジネス関連の執筆などを行う。得意分野はビジネスモデル・ビジネスプラン、チームビルディング、モチベーションマネジメント、ロジカルシンキング、交渉術、生産性改善、経済学。
著書に「中小企業診断士のための経済学入門」(同友館)がある。

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