(本記事は、三枝 元氏の著書『最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

PDCA
(画像=PIXTA)

PDCA

【使う目的】一度決めたことを確実に実行する

シーン
医薬品メーカーのMR(医薬品の営業担当者)のクニヒコは、大学病院を担当している。昨年度の販売実績がノルマに達しなかったため、本年度は是が非でもノルマを達成しなければと意気込んでいる。
「まずは訪問頻度を上げなくちゃな」「医師の先生になんとかアポイントをとらないと」「提案内容の質を上げる必要があるな」と思いついたことを片っ端からやることにした。
自分なりに闇雲に頑張ったつもりであるが、半年経ってもなかなか売上実績が上がらない。気合だけが空回りして場当たり的になってしまい、個々の営業スキルが上がっていないことに苛立ちすら感じている。
これから巻き返しを図りたいクニヒコが、個々の営業スキルを上げつつ販売実績を上げるためには、何が必要だろうか?

フレームワークの説明

PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の一連のプロセスからなるマネジメントの考え方です。決められたミッション(課題、目的)を着実に実現するためのツールです。

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
(画像=最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク)

①目標を設定し、それを具体的な計画に落とし込む(Plan)
②次に組織構造と人員を配置し、組織メンバーの動機づけを図り、具体的な行動を指揮・命令する(Do)
③途中で成果を測定・評価する(Check)
④必要に応じて修正を加える(Action)

1つのサイクルが終わったら、反省点を踏まえて再計画のプロセスに入り、次期もまた新たなPDCAサイクルに入ります。

なぜ必要か?

一度決めたのに実行されない、実行できない、尻つぼみになるということがよくあります。ほとんどの場合、その理由は、「計画段階での作り込みが甘い」か「やりっぱなしで途中段階での評価がなされていないか」のいずれかです。このような事態に陥るのを防ぐためには、PDCAの手順に沿ってマネジメントする必要があります

(1)PLAN(計画)
計画とは、実行するための仕掛けや段取りをつける作業です。大元となるプラン(主計画)を立て、必要なヒト・モノ・カネ・情報を調達して割り振り(リソース計画)、主計画を細分化したアクションプラン(実行計画)に落とし込みます。

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
(画像=最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク)

特に目標達成まで時間がかかる計画は期間ごとの計画、複雑な過程を経る計画の場合はタスクごとの計画といったように計画の細分化が必要です。

たとえば1年程度と長い期間のプロジェクトであれば、月間の計画、さらに1週間単位(最低でも2週間単位)の計画を立てるべきでしょう。プロジェクトであれば、プロジェクトメンバーごと、タスク(作業)ごとに落とし込みます。

計画は最初の段階ですから、これが適切に設定されていないと後の活動はすべて台無しになります。「具体的にどのように行動すればいいのかが明確になるような計画」、「何をどこまで達成できればよいのかがイメージできる計画」が求められます。

製造業の生産管理では、生産計画を手順計画・工数計画・日程計画の順に検討します。

<手順計画>
「どうやって作るのか(作業方法を検討する)

<工数計画>
「必要な人員と設備は何か?」「どれくらい必要か?」を検討する

<日程計画>
いつまでに何個作るかを検討する

このことは、ビジネスの計画全般に共通して言えます。「方法の明確化」「必要資源の算出と確保」「スケジューリング」の順で検討しましょう。

(2)DO(実行)
重要度・緊急度マトリックスを使って優先順位が高いアクションプランから順に実行します。

人は計画を立ててもなかなか実行に移さず、その結果、最後にバタバタしてしまい雑になる、期限が守れなくなるといった傾向があります。さらに計画実行の課程で不測事態が生じ計画どおりにいかないことはよくあります。期限が守れなくなることを回避するためには前倒しで作業するよう心がけたいところです。

(3)CHECK(評価)
評価は「どこまで行ったか」の進捗管理だけではなく、次の改善活動につながるためのものでなくてはなりません。そのためには結果・プロセス・ノウハウの3つの観点から評価する必要があります。

●結果の評価
売上や利益、コスト削減額、リードタイム短縮期間、不良率の改善度合いなどの定量評価が中心となります。

●プロセスの評価
望ましい手順を経ているか評価します。結果が出ていなくても適切なプロセスを経ていれば責任は問わないのが基本です。

●ノウハウの評価
プロジェクトを行うことで蓄積されたノウハウを評価します。
こちらもできれば計画段階で結果、プロセス、ノウハウの目標を設定しておくことが望まれます。

(4)ACTION(改善)
評価の結果、必要があれば修正を加えます。比較的順調な場合は部分修正でよいでしょうが、そもそも計画そのものがマズかった場合は計画の抜本的な見直しが必要になります。

そもそも事前に完璧な計画を立てることは不可能です。最初に立てた計画はあくまで仮にすぎないという意識で修正するのが望ましいです。

シーンの場合はどうするか?

シーンの場合、アドバイスとしては次のようなことが考えられるでしょう。

まず、販売実績を上げるための要素を抽出します。一般的には次のようになります。

MRの販売実績=訪問頻度×訪問認知率×説明率×提案のインパクト

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
(画像=最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク)

訪問頻度:何回病院に訪問したか
訪問認知率:訪問回数のうち実際に医師に会えたのは何回か
説明率:医師に会えた回数のうち、医師が薬の説明を受けたと感じているのは何回か(実際にセールストークを行ったのは何回か)
提案のインパクト:1回あたりのセールストークからどれくらいの売上が上がっているか

次に要素ごとに目標を定め取るべきアクションを考えます。

目標は進捗を把握しやすくするためにできるだけ数値で設定しますが、提案のインパクトのように定量化が難しい場合は定性的でも構いません。

あとは週ごと、月ごと、半期ごとにPDCAサイクルを回し、計画やアクションの改善・調整を測っていきます。


・決めたことを確実に行うためには、こまめにPDCAを廻すことが必要。
・計画段階で、実行するための仕掛けや段取りをしっかりつけておくこと!
最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
三枝 元(さえぐさ げん)
ビジネスフレームワーク収集家、中小企業診断士。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。大手メーカーでの法人営業、資格指導校での教材作成と教室講義に従事(中小企業診断士講座)。
2015年に独立後は、企業支援、研修・セミナー講師、ビジネス関連の執筆などを行う。得意分野はビジネスモデル・ビジネスプラン、チームビルディング、モチベーションマネジメント、ロジカルシンキング、交渉術、生産性改善、経済学。
著書に「中小企業診断士のための経済学入門」(同友館)がある。

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