(本記事は、三枝 元氏の著書『最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

疑問
(画像=PIXTA)

仮説検証サイクル

【使う目的】期限が迫っている中である程度の精度の決論を出す

シーン
旅行代理店に勤務するユタカは、上司から5日間で新しいパッケージ・ツアーの企画書を出すように命じられた。もちろん、提案するツアーの根拠や費用対効果を数字で示さなければならない。
「とりあえずインターネット上で市場情報に関する統計データや、最近の旅行事情についての記事を片っ端から集めなきゃな」「同期のみんなにも意見を聞いてみよう」「いやいや企画室にも相談していろいろ情報を集めないと。本当に間に合うのかな…」。他にも仕事を抱え、途方にくれたユタカは、どう対処すべきだろうか?

フレームワークの説明

仮説思考とは、まず先に「こうではないか」という決論を仮において、それに沿った根拠を集め、試してみて、その結果を最初の仮説に反映させて修正をし、仮説をブラッシュアップしていくという思考パターンのことです。

なぜ必要か?

よくあるパターンは、とりあえず入手できる情報を片っ端から集めるというものです。たとえば、いろいろな人の意見を聞いたり、沢山の雑誌や新聞、書籍にあたったり、ネット情報を検索したりしてしまうことです。場合によっては、時間と費用をかけてアンケート調査までするかもしれません。情報は多いほどよい判断ができるというわけです。

このやり方がマズイのは、恐ろしく非効率なことです。結局は使わない情報まで集めてしまったり、判断の前提となる情報の入手待ちで態度を保留したり(例:世代別の年間旅行回数と費用総額が分かってから考えよう)、とりあえず集めた数多くの多様な情報を見ても手にあまり、結論が出せなかったりして、時間だけがムダに過ぎていきます。そして、期限直前となって、最終的には、乱暴に「えいや」で1つの結論を出すことになるのです。

さらに、せっかく時間をかけて仕上げても上司からダメ出しされてまた一からやり直しなんていうことになったら、それまでの苦労は水の泡です。

仮説思考により、「限られた時間内で効率的にある程度質の高い結論を出す」ことができます。仮説思考を適切に行うには、①どんなに少ない情報からでも仮説を構築する姿勢、②「○○という条件だったら」といった具合に前提条件を設定して先に進む力、③時間を決めてとにかく結論を出す力が求められます。次のような仮説検証サイクルを展開していきます。

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
(画像=最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク)

シーンの場合はどうするか?

今回のシーンでは、まず新サービスの企画を1つたて、ある程度その根拠づけをしたら、さっさと上司に見せて検証してもらい、修正するべきです。そして期限内に仮説が練り上げられるまで、このサイクルを繰り返すのです。1人でうんうんと悩んで抱え込んだら最悪です。

おおよそ次のようなスケジュール感が考えられます。

【2日めまで】
コンセプトのラフな私案作成
(仮説) 私案を裏付ける情報収集(根拠づける)

【3日めまで】
上司にラフ案を提示し反応を見る(試す、効果を測定する)
上司からフィードバックをもらう(学ぶ)

【4日めまで】
私案を修正する(仮説の修正)

【5日めまで】
最終案を上司に再提出する


仕事とは「期限内で」「まずまずの成果(完璧な成果ではない)」を上げることである。
まず仮説をたて、試して、検証しよう!

重要度・緊急度マトリックス

【使う目的】やるべき事の優先順位をつ

シーン
OA機器販売会社の営業のアイは、入社2年がたち、毎日、忙しく働いている。日々の社内業務や緊急の顧客対応に終われ、将来の大 口案件獲得のための種まきの時間がなかなか取れないでいる。
また、アイはかねてより「TOEIC 900点」の目標があったが、残業に追われる毎日で、十分な勉強時間を確保できていないのが悩みである。
「こんなんじゃ、いつまでたっても今と変わらないじゃん!」深くため息をするアイに何かいいアドバイスはないだろうか。

フレームワークの説明

重要度・緊急度マトリックスとは、「自分がやるべきこと」を、重要度と緊急度の2つから整理し、手を付ける優先順位をつけるためのものです。

なぜ必要か?

社会人は、上司からの指示や顧客からの問い合わせの対応など、日々の雑務に追われています。確かにこうした仕事はこなさなければいけませんが、そればかりに追われていると、緊急性は低いが長期的に考えれば重要なことがおざなりになってしまったり、将来に向けた種まきができず、ちっとも成長できなかったりといった事態になりかねません。

頭の中で「いつかやらないとなあ」と考えるだけでは、思いついたときだけやることはあっても、普通は放置されたままです。まずは、「自分がやるべきこと」を実際に紙などにピックアップして整理し、優先順位をつける必要があります。

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
(画像=最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク)

ちなみに、意思決定をする際には、重要度と緊急度に加え、実現可能性を挙げることがあります。「重要性があり、緊急性が高く、実現可能性が高いものから優先的に手をつける」ということです。

シーンの場合はどうするか?

シーンの場合、次のような形で重要度・緊急度マトリックスを書いてみるとよいでしょう。

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
(画像=最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク)

当然ですが、「重要度も緊要度も高いもの」は最優先で処理します。「重要度は高いが緊要度は低いもの」については、「緊急だが重要でないもの」「重要度も緊要度も低いもの」を極力減らすことで、時間を確保します。

また、ほったらかしにしないためには、「1日(あるいは1週間)でいつやるか」を決めておくとよいです。たとえば、「毎日、出社前の1時間は必ず語学の勉強をする」「水・木は退社後2時間勉強する」といった具合です。


・頭の中を整理するために、まずは「やらないといけないこと」「やるべきこと」を書き出してみるのが大事。
・将来の成長に向けた準備をするために、決まった時間を確保すること!
最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク
三枝 元(さえぐさ げん)
ビジネスフレームワーク収集家、中小企業診断士。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。大手メーカーでの法人営業、資格指導校での教材作成と教室講義に従事(中小企業診断士講座)。
2015年に独立後は、企業支援、研修・セミナー講師、ビジネス関連の執筆などを行う。得意分野はビジネスモデル・ビジネスプラン、チームビルディング、モチベーションマネジメント、ロジカルシンキング、交渉術、生産性改善、経済学。
著書に「中小企業診断士のための経済学入門」(同友館)がある。

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