(本記事は、野呂泰史氏の著書『金持ち社長のお金の残し方・増やし方〜売上を下げて、資金を増やす経営〜』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)
金持ち社長・貧乏社長のキャッシュフローの違い
事業を拡大する計画は、借入金を増やすことに繋がります。
理由は、売上を拡大する前に投資が必要となるからです。新たな設備や増員・在庫も必要となり、その原資は借入金で賄うからです。
そのため、売上を回収すると借入金の返済が最優先となります。次に仕入れの支払い、経費の支払いとなります。売上が予算どおりに増えなければ仕入れの支払い、経費の支払いがピンチになります。
社長も「もっと売上を上げて良い会社にしたい」と考え、そのために銀行から運転資金を借りて投資をします。このように、売上を増やそうとすると、同時に借入金も支出も増えます。これを繰り返していては、資金は増えるわけがありません。
金持ち社長は、利益と資金を伴わない売上は不要と考えます。
独自で開発した専売品を販売強化するなど、利益率の高い商品を売り、自社の利益と資金を高める経営を基本としています。利益率の低い売上は、原価が高いため、取引をやめることで資金の支払いを少なくします。
利益率の高い売上は、原価が低く、販売が増えれば増えるほど利益と資金が同時に増え、借入金が返済できます。利益率の低い売上をなくすことで、経費も下げることができます。
このようにして金持ち社長の会社は、より資金が増える会社へと成長するのです。
売上を軸に考えるか、資金を軸に考えるかの選択で、資金が大きく減る会社と資金が大きく増える会社に分かれます。売上を追い求める経営と資金を増やす経営の違いは、まさに社長の考え方の違いなのです。
身銭を切って資金の大切さを知れ
NBC式資金改善術は、自社で実践してきたことです。
資金改善術は増資から生まれました。増資のために、社長は自分の資金を会社に入れるべきです。
当社は創業34年目を迎えますが、現在の社員数は150名、総資産40億円(純資産30億円)、全国(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡)に支社を持つまでに成長しています。本業の会計事務所、経営コンサルティング事業に加え、東京の新宿区、千代田区にビル(4棟)を保有しています。景気変動の影響が少ない安定した収益が得られ、損益分岐点がとても低く、赤字になりにくい会社を作ることができました。
こうした経営ができるようになったのは、創業から7年間にわたり増資を繰り返してきたことによる効果が大きかったと創業者の野呂敏彦(現会長)は振り返っています。
野呂会長は、役員報酬=「社長の個人資産を増やす」のではなく、会社を大きく成長させるための資金であると考えてきました。そこで創業以来、増資を繰り返してきました。創業当初より、月額役員報酬100万円から生活費30万円を除く70万円を7年間増資にあててきました。
理由は、社長は経営のすべてに責任があるからです。
資金を増やさなければ会社は成長できません。
オーナー社長である限り、良くも悪くもすべての責任は社長にあります。
そのため、資金は万が一に備えて増やしておかなければなりません。将来、資金を増やして安定した会社になれば、社長はいくらでも役員報酬を取ることができます。それならば、個人の預金としておくのと、会社の預金にするのと、どちらに価値があるかを考えたのです。
会社の資金を増やす方法は、利益を計上して課税された残りを資金として増やすか、役員報酬から源泉所得税を控除した分を増資するかの選択となります。
多くの社長は、利益が出たら法人税を下げるために、節税対策として保険に入ったり、固定資産を購入(たとえば車など)したりします。その結果、自己資本の蓄えができず、経営の谷間に陥ったときに蓄えがないことを後悔します。
役員報酬から増資するために役員報酬を上げると、損金が増え法人税は下がります。その代わり、個人の源泉所得税は大きく増えます。法人税と所得税を比較すると、法人税率より所得税率のほうが低かった(当時)ため、法人・個人トータルの税金という面でもメリットがあり、増資という方法が有効でした。
また、せっかく増資しても、会社の資金が減れば、自分が苦労して稼いだ報酬も水のように流れて消えたことを意味します。
そう考えると、会社の資金に対して非常に厳しい見方、無駄なことはさせない考え方が自然と生まれました。当時は1000円の経費でも事前申請させるほどでした。増資を繰り返した経験が資金を増やす経営に繋がり、お客様へ提供する資金改善術として転化していったのです。
増資が銀行の信頼を生んだ。多額の融資を受け10億円のビルを購入
役員報酬からの増資と利益の蓄積で7年後、自己資本9000万円、自己資本比率95%の会社にすることができました。
それでも当時の売上は2億円(現在18億円)で、支店はあったものの、札幌中心に事業を営んでいた時期でした。
あるとき、メインバンク(札幌)の支店長が訪ねてきて、「東京に差し押さえたビルがある」と10億円のビル購入の話を持ち掛けられました。
当時の会社規模から考えると、10億円のビル購入というのは考えられないほど大きな話でした。それでも、増資を繰り返し自己資本比率を高めたことが銀行からの信用を生み、多額の融資を引き受けていただき、東京に自社ビルを持つことになりました。
最初は、全フロアを自社で使用していましたが、自社では使いきれないほどのスペースだったため、テナントに貸し出し賃貸用不動産の事業を展開するようになり、安定した収益へと育っていきました。
そして、借入金が減ってきたら新たなビルの購入を繰り返し、現在は東京で4つのビルを所有しています。
その不動産収益が会社経営の安定化をもたらすまでになりました。
本業においても、東京で自社ビルを持っていることがお客様の信頼感、安心感に繋がっていますし、採用面においても、しっかりした会社と評価してもらえるという大きな効果に繋がっていると感じています。
NBC式資金改善術は、まず資金を残すこと、次に資金を増やすこと、そして資金を活かすことという3段階になっています。資金を残すために、増やすために、経費を少なくする、在庫を少なくする、売掛金は早く回収する、固定資産は持たないなどの体質づくりからスタートします。資金を活かす段階になると、賃貸不動産の取得、新規事業への進出といった成長戦略に繋がっていきます。まさに、NBCグループがここに至るまで実践してきたことの歴史といえます。
役員報酬から増資する最大の目的は、
(1)上り坂、下り坂、「まさかの坂」が来たときの準備 (2)将来の成長の「翼」にするための資金にすること
です。
増資をし、資金を大切にし続けていれば10年、20年、30年先に自分が想像できなかったような会社になれるはずです。会社は資金に困らず、社長は豊かな人生が送れ、社員には高い給与が払えて、みんな楽しく暮らすことができます。
オーナー社長は、すべての責任を一人で負うものです。質素倹約に努めて資金を増やす体質を築けば、その先には最良の人生が待っています。
NBC式資金改善術は、資金を大切にする考え方から始まり、利益率を高くして資金を増やす経営術に繋がり、付加価値の高いビジネスへ転換する極意なのです。
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