(本記事は、野呂泰史氏の著書『金持ち社長のお金の残し方・増やし方〜売上を下げて、資金を増やす経営〜』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)
NBC式資金改善術
次のステップで資金改善を行います。
1:全社員へのアンケート調査
記名(場合によっては匿名*)式で、他の社員には一切開示されないことを前提に本音を記載いただきます。
【設問項目例】 (1)現状の会社および所属している部門の問題点を上げてください (2)ご自身の仕事のなかで、次のように感じられたこと、あるいは感じていることを教えてください [面倒なこと/やりにくいこと/疲れること/バカらしいと思うこと/これでは儲からないと思うこと/腹が立つこと……など]
2:個別面談
個別面談は、アンケートで特に厳しく、タイムリーな指摘をした社員の方(殊に、会社に対し批判的な社員)から優先的に実施します。その理由は、会社に批判的な社員がやる気になれば、大きな成果が出る可能性があるからです。
資金難の会社の幹部は「当社の社長は優しいです。仲間を大切にします。社員はとても仲が良く……」などと記載してきます。「企業の倒産の前に精神の倒産がある」「鯛は頭から腐る」と言いますが、組織のトップがだめだと、その影響が徐々に組織に蔓延していきます。そうした意味で、会社に批判的なことを率直に回答してくる社員には期待ができるのです。
3:資金改善委員を任命
アンケートと個別面談の内容を踏まえ、役職に関係なく相応しい社員を資金改善委員に任命します。資金改善委員会は現状の組織体制を壊し新たに組織化するのではなく、小回りが利くようエリア・小集団の中で展開します。
たとえば、残業撲滅委員・外注委員・クレーム対策委員・経費削減委員など、委員は現状の問題点を改善する責任者として起用されます(権限移譲し責任を明確にする)。
【委員会活動事例】 ・残業は原則禁止:忙しければ全員で支援して就業時間内に終わらせることを原則とします。
・13時に全社員集合:本日残業が発生する可能性がある人に挙手をさせ、そのほかの社員に委員から支援を指示します。
こうした取り組みの結果、無駄な残業をなくし全員で生産性を高めることに成功しています。
・外注コストを下げて社内で内製化:繁閑関係なく、年間を通じて外部に配送業務を発注することが「当たり前」になっている会社がありました。
外部への発注は必ず委員の許可を得ることとし、極力内製化を実施。さらに、内製化によって削減したコストに対し、褒賞金を支給することにしました。
4:社員の意欲・動機付けシステム(褒賞金制度)を新設・運用
残業せずとも生産性が上がれば、残業代以上の褒賞金を支給することが可能な制度をつくります。外注費の一部を社員へ還元するなど、委員が軸となり資金改善に対する取り組みをきちんと評価する仕組みをつくり運用します。
社員に2つの目標を与えます。
(1)下限目標:ここまでは達成しなければ給与を維持できませんという目標。 (2)評価目標:下限目標を超えた目標。資金・利益に貢献した場合に支給される褒賞金。賞与に加算される。
この2つの目標と実績を、個人・チームごとに見える化することで意識を高め合います。
5:クレームゼロ運動の実施
クレーム(ミス)カードを活用し、全社員で共有します。一人のクレーム(ミス)は全員のクレーム(ミス)という意識を持って、改善活動に繋げます。
6:成功体験カードの運用
従来の仕事のやり方を改善し、成果を上げた社員には成功体験カードを提出いただき、全社員で共有します。良い取り組みを水平展開し改善を全体のものとするための仕掛けです。
社長はどちらを選択しますか?
「勘定合って銭足らず」の経営をしたくなければ、利益が増えたらそれ以上に資金が増える経営をしなければなりません。
たとえば売上10億円、限界利益率30%の会社の場合、売上を10%下げ限界利益率を10%上げた場合と、売上を10%上げ限界利益率を10%下げた場合の利益はほぼ同じです。しかし、資金には差が生じます。
資金を減らす経営とは、利益率を下げてでも売上を上げる経営です。売上は同業者との競争を意味します。よって、安売りに陥ることになり、それが資金を減らす最大の原因です。なぜなら、売上が上がれば原価高になり、売上が上がれば在庫も増え、仕入れも増え、売掛金も増えるからです。
つまり運転資金が不足し、利益率を下げることで原価高となり、経費も投資も必要になるということです。売上を上げる経営とは、本来何も良いことはないのです。
ところが、先述したように社長が資金の増やし方がわからず、資金を増やすことと資金を回すことを混同している場合、売上偏重の経営をしてしまうのです。
しかしそれでは、運転資金が不足し、金融機関からの借入金に依存することになります。そればかりでなく、いつまでも借入金は返済できず、金利のみを払い続ける負のスパイラルに陥ります。
他方、資金が増える経営とは、売上を下げて、利益率を上げる経営です。手っ取り早い方法としては、利益率の低い仕事を断ることで平均利益率を上げ資金を増やします。営業社員には自身が担当する取引先の売上・限界利益率・限界利益額の実績を集計させ、次にランキング表を作成させます。
そして、限界利益率が最も低いランキング下位の会社の売上を10%下げるというシミュレーションを行います。すると、営業社員は「あれ?利益率が高くなっている?」と気づきます。このようにして、売上を下げて資金を増やす経営のコツを、営業社員一人ひとりに体感させるのです。
同じ商品を販売しているライバル会社間でも利益率は異なります。売上は他の会社と比較できますが、利益率は仕入れ方、売り方など会社の体質であり、社長の決断の結果を表すものです。最終的に利益率の格差が資金の格差となって表れます。
同じ業界、同じ商品でも一流企業が販売する商品は高くても売れます。単価が高ければ資金が増え、増えた資金で投資するという好循環で、さらに会社は成長するのです。
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