結果の概要:年末にかけて若干の加速
4月1日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
・2019年10-12月期の前年同期比伸び率は+2.1%、予想(1)(同+2.0%)より上振れ、前期(同+1.7%)から加速(図表1・2)
・2019年暦年での前年比伸び率は+1.3%、速報値(同+1.3%、同局が2月3日公表)から変わらず、前年(同+2.5%)から減速
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(1) bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
結果の詳細:金融セクターがけん引
需要別の実質GDP伸び率では、個人消費が前年同期比+2.5%(前期:同+2.5%)、投資が同+12.1%(前期:同+3.2%)、輸出が同▲2.5%(前期:同▲0.8%)、輸入が同+10.1%(前期:同+4.5%)であり、純輸出が大きくマイナス寄与したものの、投資の伸びがそれを補っているという形となった。個人消費については、2019年初に付加価値税が引き上げられたことを受け(18%→20%)、年初から消費が伸び悩んでおり、年末にかけても回復には至っていなかった。
さらに産業分類別(2)に実質GDPの伸び率を見ると(図表3)、「金融」セクターが最も伸び率が高く、前年同期比+11.9%を記録した。不動産業についても一時的に落ち込んでいたが、年末にかけては勢いを取り戻した。一方で、その他の第三次産業では不振な業種もいくつか見られ、「水道」「事務サービス」「電気・ガス」などでは、前年同期比でマイナス成長となった。
季節調整系列については、4月1日時点でロシア連邦統計局のウェブサイトから入手できなかったが、2019年7-9月期までの傾向は、図表4・5の通りであり、金融・不動産業が成長を押し上げている傾向が続いているとみられる。
2020年以降は新型コロナウィルス(COVID-19)の影響が大きくなるだろう。現時点でのロシアでの感染者数は他国と比較して少ないものの、世界的に人の移動が抑制されている。OPECプラスによる協調減産の決裂により、原油価格が低迷しているなかで、原油需要が急激に減少しているため、ロシア経済に与える打撃はかなり大きいと見られる(3)(図表6)。
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(2)自家利用の財・サービスについては便宜的に第三次産業(その他)に含めた。
(3)OPECプラスによる協調減産の決裂したため、原油での増産が可能であれば、数量ベースで輸出を押し上げる材料になりうるものの、ロシアではすでに高水準での生産を続けており、追加増産の余地があまりない。
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高山武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
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