(本記事は、松尾昭仁氏の著書『1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人』集英社の中から一部を抜粋・編集しています)

10年後 食えない人は、「完璧」になるまで打席に立たない 食える人は、とりあえず打席に立って、フルスイングする

全力
(画像=Sergey Nivens/Shutterstock.com)

ビジネスで成功した人や高収入を手にした人に「成功した秘訣は何ですか?」と尋ねると、かなりの確率で「目の前のことを懸命にやっていたら、いつのまにかうまくいっていた」といった類いの答えが返ってきます。

世間でよく、成功した経営者や起業家の成功ストーリーが語られますが、その多くは結果論というのが現実です。「これをしたから成功した」という話の多くは、後付けであることが多いのです。

「結果論」と言ってしまうと元も子もありませんが、成功した人には、共通点も存在します。

それは、チャンスと見たら、それを逃さずに行動を起こすことです。

実業家の堀江貴文さんは、著書の中でこんなことを述べています。

「バカは三振を恐れずとりあえず打席に立って、バットをぶんぶん振るから、うまくいくことがある」

能力が高くても、打席に立たなければ、目の前のチャンスをつかむことはできません。毎日こつこつ素振りをしていても、球を打たなければ、ヒットもホームランも生まれないのです。

逆に、能力や準備が不足していても、まぐれ当たりで、結果を出すことができるかもしれません。あるいは、実際に打席に立ってみたら、案外ピッチャーの球が遅く見えて、自分らしいスイングをできるかもしれないのです。

「成功する確率は半分くらいしかない」とチャレンジすることをためらっている人がいますが、50%の確率でうまくいくなら挑戦したほうがいいでしょう。完璧になるまで準備をしていても成功の確率は0%のままなのですから。

完璧になるまで準備ばかりしていないで、打席に立ってスイングしてみることが大切です。相手の投手よりも実力が劣っているなら、バットを短く持ってミートを心がけたり、意表をつくセーフティーバントを試みたりする。そうすれば、ホームランは打てなくてもヒットは打てるかもしれません。フォアボールで出塁できる可能性もあります。

●バットを振る経験が「自信」につながる

たくさん打席に立つことを心がけていると、ときどきヒットを打てるので、それが小さな自信になり、次のバッターボックスに向かう勇気がわいてきます。

現在、起業家として活躍するHさんは、中学時代バスケットーボールに打ち込んでいましたが、ひょんなことから高校ではレスリング部に入部することに。まったくの素人だったHさんですが、県内にレスリング部がある高校が5校しかなかったこともあり、インターハイ出場を果たします。

もちろん、それなりに実力もあり、努力もしたのでしょうが、本人曰く「ライバルが少なかったからインターハイに出場できたのは間違いない」とのこと。しかし、レスリング部時代に勝ちぐせがつき、今も自信につながっているといいます。

一方で、高校野球やサッカーはライバルが多い。甲子園の常連である強豪校に進学できたとしても、ほとんどが2軍、3軍に甘んじて、甲子園もスタンドで応援することになります。つまり、「打席」に立つことさえかないません。試合に出られなければプロの目にも留まらないのです。

ビジネスでも、ライバルの少ないところで勝ちぐせをつけるのもひとつの手です。

10年後 食えない人は、目的そのものが変わってしまう 食える人は、目的達成のための手段を変える

きびしい競争のなかでも生き残る企業は、収益の手段を変えていきます。

たとえば、IT企業のミクシィは、かつてはSNSで一世を風靡しましたが、現在、同社のSNSを使用する人はほとんどいません。フェイスブックなどの新興企業に市場を奪われてしまったからです。

しかし、ミクシィはそのままつぶれることなく、現在はゲーム事業を柱として、上場企業の立場を維持しています。

優秀なリーダーも、いい意味で「朝令暮改」が習慣になっています。まわりからは言っていることがコロコロ変わるという印象を受けるかもしれませんが、あくまでも変わっているのは手段で、目的はぶれていません。

「新規事業を成功させる」という目的は変わらなくても、それを達成するための手段は臨機応変に対応する。実際、ビジネスを動かしていると、速いスピードで状況が変わっていき、トライアル&エラーを繰り返すことが当たり前になります。そのような状況では、ひとつの手段にこだわっていたら命取りになります。

たとえば、最初は新サービスが若者をターゲットとしていたけれど、事業を進めていく中で高齢者のニーズが高いとわかれば、アプローチの方法を変えていく。新サービスを成功させるという目的さえぶれず、結果が出れば、手段を変えること自体、まったく問題ないでしょう。

人も企業も、すでに時間や労力を費やしていることは、簡単にはやめられません。手段を変えることによって、これまでの努力が無駄になるように感じられるからです。このように、すでに支出され、もう回収できない費用のことをサンクコスト(埋没費用)と呼びますが、最終的にお金に困らない人は、今していることをやめて、別の手段をとる決断ができるのです。

●資産家になるために大学中退

私の起業セミナーに参加したSさんも、目的達成のために手段を変えた典型例です。Sさんの人生の目的は、お金に困らないだけの資産を手に入れること。学生の頃から人生の目標を定めていたSさんは、36歳の現在、4500万円の年収を得る資産家として、その目的を成し遂げました。

Sさんの場合、資産家になるまでの過程がユニークです。高校卒業後、理系の一流大学に入学したのですが、1年生のときに中退してしまいました。というのも、大学の先輩の就職先を調べてみたところ、多くがメーカーの研究職として就職していたものの、年収1000万円以上の年収は現実的ではない、と判明したのです。

この大学を卒業しても「資産家になる」という人生の目標を達成できないと知った彼は大学生活に早々と見切りをつけたのです。

通常であれば、せっかくだから大学を卒業してから方向転換しようと考える人が多いと思いますが、Sさんの場合、理想とは違う結果しか得られない4年間をムダにすることが許せなかったのでしょう。

Sさんの例は少々極端かもしれませんが、お金に困らない人生を手に入れている人は、目的達成のために手段を変えることをいとわないのです。

一方で、お金に困る人は、目的そのものが変わってしまう傾向があります。

たとえば、年収アップのために英語を勉強し始めたにもかかわらず、英語を学ぶばかりで仕事に使わない人はその典型。私のセミナーにも、起業が目的だったにもかかわらず、資格や英語の勉強ばかりしている参加者が少なくありません。

自分が実現したいことは何だろうか。その目的を見失ってしまうと、いつまでたってもお金に困る人生から抜け出すことはできないのです。

10年後 食えない人は、苦手なことを克服しようとする 食える人は、苦手なことは得意な人に任せる

お金に困らない人生を送っている人に100%共通していることがあります。それは、自分の得意なことで勝負していることです。

プレゼン力やコミュニケーション力がすぐれている人は、営業のジャンルで他を圧倒する実績を残します。儲かる投資物件を見つける能力のある人は、不動産の世界で結果を出しています。

勝てるジャンルに絞っているのです。

得意なことのほうが早く結果が出やすいですし、ストレスを抱えながらイヤなことに取り組む必要もありません。お金に困らない人生を手に入れたければ、得意な分野やスキルで勝負することが重要です。

たとえば、あるクリーニング店の店主は、「染しみ抜き」が得意で、他のクリーニング店では対処できないようなひどい染みも落とすことができます。だから、立地がよいわけでもないのに、注文が絶えません。なぜなら、8割の顧客が同業のクリーニング店だからです。他のクリーニング店では落とせない染みを落とすことで、勝ち組になっているのです。

また、ある住宅内装の施工業者は、らせん階段の取り扱いと設置に特化し、不況下でも生き残ることができたそうです。らせん階段は特殊なジャンルで、他の施工業者では扱いにくいため、「らせん階段なら、あの業者に頼むしかない」というのが業界の常識になっているとのこと。

得意なことに注力するということは、それ以外を切り捨てることを意味します。お金に困らない人は、苦手なことは人に任せます。そして、自分は得意なことに時間と労力を割くのです。

●ホームページ制作は、本当にあなたがすべき仕事か?

一方で、お金に困る人は、苦手なことを必死で克服しようとします。

起業セミナーの参加者であるGさんは、専門知識を活かしてコンサルタントとして独立することを目指していました。ところが、状況を聞いてみると、「ホームページのつくり方を勉強しているところ」とのこと。自分自身の“顔”となるホームページを自作するつもりだというのです。

もちろん、コンサルタントとして仕事を獲得するならホームページは必要ですが、素人がイチからホームページ作成のスキルを学べば時間もかかりますし、クオリティーの低いものしかできないでしょう。専門家のホームページが、素人感いっぱいで安っぽければ、お客さんは依頼することを躊躇するに違いありません。

ホームページを自作する時間があるなら、新規顧客獲得のマーケティングや事業の戦略を考えるべきです。その代わり、ホームページの作成は業者に発注する。それなりにコストはかかりますが、必要経費として見積もるべきなのです。

苦手なことは、仲間と組むことで克服することもできます。

当社のセミナーには、デザインが得意な人、弁護士や司法書士といった専門資格をもっている人など、さまざまなスキルや知識をもっている人が集まります。そのため、お互いの事業に必要なスキルを提供し合う関係が自然とできあがっていきます。多種多様なスキルや知識をもっている人と組むことができることも、お金に困らない人の特徴なのです。

10年後 食えない人は、「説明」ファースト 食える人は、「結論」ファースト

お金に困る人と困らない人との差は、話し方にもあらわれます。

プレゼンや説明を聞くとわかりますが、仕事で成果を出す人は、最初に結論から始めます。「私の提案は○○です。理由は3つあります。ひとつ目は……」というように。つまり、お金に困らない人は、最初に結論から話す、「結論」ファーストが身についているのです。

一方、仕事で成果が出ない人は、結論が見えないまま話を進めるので、聞き手を不安にさせます。つまり、「説明」ファーストになってしまうのです。

「説明」ファーストになりがち人は、「今月のノルマは達成できそうか?」と上司に尋ねられたとき、まず状況説明から始めてしまいます。

「あのお、実は取引先のA社から契約をいただくはずだったのですが……、先週になって突然先方から電話がかかってきまして、どうやらA社の社長から担当者に『もっと他のやり方も検討してみてほしい』と指示があったようで……」

話を聞いているほうはじれったくて仕方ありません。「で、ノルマは達成できそうなのか?」と。おそらく説明するほうは、ノルマを達成できないから、その言い訳を必死に訴えているのでしょうが、これでは逆効果です。説明ファーストだと、上司やお客様から高い評価を得ることができません。

お金に困る人が言い訳から入る一方で、お金に困らない人は、先と同じ質問にも「結論」から入ります。

「今月のノルマにまだ10%足りません。実は、A社との契約で困ったことがありまして……」

このような結論ファーストであれば、上司は説明を聞きながら、善後策を考えることができますし、なにより「いったい何を言いたいんだ!」とイライラすることはありません。

●お金に困らない人は決断も早い

「結論」ファーストの人は、意思決定も明確です。

たとえば、仕事を頼まれたとき、「できる」「できない」の判断もスピーディーです。「できる」と思えば、「やります。ぜひやらせてください!」と即答。今の自分のレベルでは少し難しい仕事であっても、「やります。ただ、経験のない仕事なので、やり方を考える時間をください」と仕事を受ける前提で回答します。

仕事を依頼したほうからすれば、即答してもらったほうが気持ちいいですし、「彼を信じて任せてみよう」という信頼感にもつながります。

反対に「この仕事は自分の手には負えない」と判断すれば、「申し訳ありませんが、できません」とはっきりと意思表示をします。「安請け合いしたけれど、結局できなかった」という事態になれば信用を失うことになります。

一方、「説明」ファーストの人は、同じようなシチュエーションでも即断即決ができません。「先週から他の仕事が忙しくて……できるかどうか……」などと状況説明から入り、ひどい場合は、判断を相手に委ねてしまうこともあります。

これでは、仕事を頼んだほうは、「他の人にしよう」という気持ちになります。みすみすチャンスを失うことになってしまうのです。

10年後 食えない人は、常に全力投球 食える人は、最初と最後だけを押さえる

「全力で頑張ります!」

日本では、いつでも全力で努力することが美徳とされている面があります。もちろん、最初から最後まで全力投球できるのが理想ですが、終始、力を入れ続けるのには無理があります。

野球のピッチャーでも、1回から9回まで全力投球していたら、体力がもちません。

一流の投手ほど「打たせて取る」などの投球術を駆使して力を温存し、長いイニングを乗り切ります。

ビジネスでも同じことが言えます。最初から最後まで全力で取り組むのは、時間も労力もかかります。要領よく結果を出し続けている人ほど、力の入れどころをコントールしているものです。

最初と最後だけを押さえるのもテクニックのひとつ。

私が地方の講演会に講師として招かれたときのこと。当日出迎えてくれた主催者とは初対面だったのですが、さわやかな笑顔で出迎えてくれました。このとき、「今日はいつも以上に頑張ろう」と思いました。それほどに第一印象がよかったのです。

そして講演後の懇親会を終えて帰ろうとしたところ、主催者がすかさずタクシーをつかまえてくれました。私を乗せたタクシーが動き出してから、ふとバックミラーに目をやると、その主催者は、タクシーが見えなくなるまでずっと頭を下げ続けていたのです。このとき、「よい主催者に呼んでもらえて本当によかった」と感動しました。今もそのときの光景は忘れられません。その方とは、ぜひまた一緒に仕事がしたいと思ったのは言うまでもありません。

事例をもうひとつ紹介しましょう。

身内の例で恐縮ですが、建設会社を長年経営している父親は、自身が大学4年生のとき、就職を間近に控え、単位が足りず卒業できないというピンチに陥りました。

そこで、父は担当教授の自宅まで押しかけ直談判することに。雨の日の夜、自宅を訪ねますが、教授は出てくれず、対応してくれた教授夫人に事情を話し、いったん帰宅しました。そして、翌朝早くもう一度訪ねたのです。すると、雨に濡れた父の顔を見た教授は「昨日の夜からずっと立っていたのか!」と勘違いして驚き、風呂に入っていくように促したのです。結局、単位はもらえ、無事卒業できたそうです。

まるで笑い話のようですが、ある意味、ビジネスの本質をあらわしているのではないでしょうか。相手に評価されるには、タイミングや努力の魅せ方も重要なのです。

●プレゼンも最初と最後が成否を握る

お金で困らない人は、最初と最後に神経をつかっています。

第一印象に二度目はありません。

そして、別れ際の印象というのも、相手の記憶に残るものです。

たとえば、終始なごやかなムードで打ち合わせを終えてエレベーターに乗り込んだとき、扉が閉まる間際に相手が不機嫌そうな表情を見せたらどうでしょうか?「あれ?何かまずかったかな?」と、余計な想像をするかもしれません。

それくらい、人は最初と最後の印象に大きく左右されます。お金に困らない人は、人と会うときも力の入れどころを熟知しているのです。

プレゼンでもポイントは最初と最後です。もちろん、中盤も重要ですが、どんなによくても、最初と最後で失敗すれば、すべてが台なしになる可能性すらあります。最初で自分の主張とポイントを簡潔に表現し、力強い言葉で最後を締める。そんなプレゼンは、聞き手にインパクトを残します。

一方で、お金に困る人は、常に全力投球です。力を抜かずに全力を尽くすことは美しいことですが、すべてを完璧にこなすのは簡単ではありません。必ずどこかでボロが出ます。だから、メリハリをつけるほうが、相手に好印象を残すことができるのです。

1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人
松尾昭仁(まつお・あきひと)
起業コンサルタント。出版プロデューサー。日本心理カウンセラー協会正会員。ネクストサービス株式会社 代表取締役。高等教育機関、各種団体、民間企業より、講演・セミナー・研修、メディアからの取材も多い。 『コンサルタントになっていきなり年収650万円を稼ぐ法』など著書多数。

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