(本記事は、松尾昭仁氏の著書『1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人』集英社の中から一部を抜粋・編集しています)
10年後 食えない人は、謙虚が美徳だと思っている 食える人は、礼儀正しくも図々しい
日本人の多くは謙虚であることが美徳だと信じています。もちろん、それを否定するつもりはありませんが、謙虚すぎることは、意図せずに自分の評価を下げる結果となってしまいます。
自分では控えめな姿勢で接しているつもりでも、相手にはバカ正直に受け取られるおそれがあります。「この人は自信がないんだ」という印象にもなりかねません。最初にそんなイメージを与えてしまえば、仕事を任されることもないでしょう。本当は実力があるにもかかわらず、過小評価をされてしまったら損です。
もちろん、年上の人や目上の人に謙虚に振る舞うことは大切ですが、いつでもどこでも控えめな姿勢で接することは自分にとってマイナスになりかねません。
謙虚な姿勢に徹するのは、ある程度、人間関係ができてからでも遅くありません。それまでは、「礼儀正しくも図々しい」というスタンスを貫くことが大切です。
価格交渉をする際、「当社のサービスは通常50万円です。いかがでしょうか」とお伺いを立てるのと、「当社のサービスは50万円です。それ以下の価格ではお引き受けすることはできません」と言い切るのとでは、どちらがインパクトがあるでしょうか。
前者だと、「少し安くしてもらえませんか」と価格交渉の余地を与えることになると同時に、相手に主導権を渡す結果となってしまいます。一方、後者の場合は、多少図々しいという印象を与えるかもしれませんが、それ以上に、サービスに対する自信と信頼を相手に与えます。むしろ「50万円で受けてもらえるなら安いかも」と思わせるかもしれません。
相手に悪く思われたくないばかりに、した手に出てしまう人がいます。しかし、相手のことを気遣って謙虚に振る舞っても、人はエスパーではないので、あなたの本当の意図が伝わるとはかぎりません。
●結果を出す人は頼むのがうまい
ベストセラーとなった『伝え方が9割』(佐々木圭一著、ダイヤモンド社)の中で、デートに誘いたい相手には、次のような言葉が有効だと書かれています。
「パスタがおいしいお店があるんだけど、いつなら空いている?」
これは、食事に行くことを前提とした質問ですから、「私とデートしてくれませんか?」と誘うよりも、何倍も確率は高まるでしょう。
物怖じせず頼みごとができる人は、結果的に得をします。真摯な態度でお願いすれば受け入れてもらえることも多いのです。
私のビジネス著者養成スクールを通じて商業出版を果たす人にも、礼儀正しくも図々しい人が多くいます。
出版企画書が編集者の目に留まったスクール生は、実際に編集者と企画会議通過を目指すステップへと進みます。しかし、なかなか出版が実現しない人は、ここで謙虚になりすぎてしまうのです。出版社の編集者は多くの著者を抱えて忙しい人が多いので、ただ連絡を待っているだけでは、なかなか前に進みません。下手をすると、編集者に忘れられ、そのまま企画が立ち消えになってしまうケースもあります。「相手は忙しいから」と連絡するのを躊躇していると、前に進まないこともあるのです。
一方で、素早く出版が実現する人は、礼儀は守りながらも、図々しくお願いをしていきます。
「出版企画書を修正したのですが、打ち合わせのお時間をいただけませんでしょうか?たとえば、来週5日と6日の午後の予定はいかがでしょうか」というように、実際に会って企画を前に進めていきます。
お金に困らない人は、礼儀正しさと図々しさのバランス感覚がすぐれています。お金に困る人は、たいてい押しが足りていないケースが多いので、まずは自分のコミュニケーションの仕方を点検してみてください。
10年後 食えない人は、「すみません」と声をかける 食える人は、「ありがとう」と声をかける
飲食店の注文で店員を呼ぶとき、あなたは何と声をかけていますか?
「すみません」と言ってはいませんか。
会社やビジネスの場で「すみません」が口ぐせになっている人がいます。「すみません、〇〇さん。会議室の予約をしてくれないかな」などと上司が部下に「すみません」を使うこともめずらしくありません。
しかし、「すみません」は、もともと謝罪の言葉です。話しかけるときにも「すみません」と使うのは謙虚であることを美徳とする日本らしい習慣とも言えますが、「すみません」を連呼する人は過小評価されるリスクがあります。
「すみません」と使った時点で、相手よりもポジションが下ということになり、自信がないというイメージにつながりかねない。
店員を呼ぶときは、「注文をお願いします」などでいいでしょう。ただし、横柄な態度は厳禁。上から目線で「ちょっと!」「こっち、よろしく」などと呼びつけるような言い方は、不快感を与えますし、かえって小物感が出てしまいます。店員も人間ですから、横柄な態度の客には「もう二度と来るな」と心の中で思われていてもおかしくありません。
売れない営業マンに共通するのは、自信のなさがにじみ出ている人です。自社の商品やサービスを堂々と売り込めないような人から買いたいお客様はいません。自信のない営業マンは、「すみません」など謝罪の表現を連呼する傾向があります。
「お忙しいところ、すみません」 「すみません、こちらの資料をご覧ください」 「この商品は3万円になります。すみません……」
本人は無意識に使っているのかもしれませんが、相手からは軽く見られてしまい、対等な交渉ができないリスクがあります。
お金に困らない人は、「すみません」ではなく、「ありがとう」が口ぐせです。店員が料理を運んできてくれたときに「ありがとう」、食後には「おいしかった。ありがとう」という言葉が出てきます。
ビジネスの場でも「ありがとう」が口ぐせになっています。部下に「会議室の予約ありがとう」、お客様にも「お時間をいただき、ありがとうございます」。相手も「すみません」と言われるよりは、「ありがとう」と言われたほうが気分がいいでしょう。
●書いた文字にも人格があらわれる
自信のなさは、言葉だけでなく、書く文字にもあらわれます。
当社のセミナーでは参加者にアンケートを書いてもらうことがありますが、自信がなく、お金に困っている人ほど文字が小さく、筆圧が弱い。だから、とても読み取りにくいのです。
一方で、ビジネスで成功しお金に困っていない人ほど、書いた文字が力強く、堂々としています。面白いほどに文字で、自信のありようが判別できるのです。
最近では、履歴書をパソコンで作成する機会が増えているようですが、一方で「履歴書は必ず手書きで提出してもらう」という採用担当者や経営者も少なくありません。
「文字は人をあらわす」という言葉があるように、その人が書いた文字で、ある程度、人柄や仕事ぶりを想像することができるからでしょう。
あなたが書く文字は、どうでしょうか?
もし小さくて弱々しいなら今の自分に自信がもてていないのかもしれません。それなら形から入るのも悪くありません。文字を力強く、堂々と書くように意識してみましょう。とくに自分自身の名前は重要です。卵が先か鶏が先かという話になってしまいますが、大きくて力強い字を書くようにすることで、自分が徐々に変化していくかもしれません。
10年後 食えない人は、コネを毛嫌いする 食える人は、コネ・ファーストに徹する
私たちが生きる資本主義社会の原理は、経済的な利益を追求することです。だから自分に得をもたらしてくれる人を優遇するのは当然です。お客様や付き合う人に差をつけるのも当たり前なのです。
相手に好かれるか嫌われるかで、得られるものが違ってきます。だから、お金に困らない人は自分に利益をもたらしてくれる人を大切に扱うことにためらいがありません。
もちろん、裏で賄賂を渡して便宜を図ってもらうことなどは罪にあたることがありますし、汚いやり口をすればしっぺ返しをくらうのが世の常です。
しかし、使えるコネは、どんどん使うべきです。なぜなら、ビジネスの一部はコネクションで成り立っているケースが多いから。
たとえば、誰よりも稼いでいる高級車のディーラーは、紹介営業を得意としています。高級車の顧客は富裕層が多く、友人や知人も同じレベルのお金持ちであることがほとんどです。
もしひとりの顧客に気に入ってもらえれば、「知り合いを紹介してください」とお願いすることができます。当然、それなりに収入があって車の買い替えを考えていそうな人を紹介してくれるでしょうから、契約も成立しやすい。保険の営業なども、同じく「コネ」が売上に直結します。
私がいる出版業界もコネがモノを言う世界です。
著者になりたい人が、出版社にいきなり企画書を送りつけても、ほとんどがなしのつぶてで終わります。
本を出したい人は多いので、出版社にはたくさんの企画書が持ち込まれます。私が付き合いのある編集者のみなさんに聞くと、「一つひとつの企画書にじっくりと目を通す時間はない。だからタイトルだけを見て、廃棄する場合がほとんど。持ち込み企画から実際に出版を果たせる確率は1%もない」というのが共通の見解です。
一方で、こんな証言をする編集者も多くいます。
「ただし、知り合いから紹介された企画書であれば、必ず目を通す。企画や著者のプロフィールが魅力的なら出版が実現する可能性は高い」と。
たとえば、担当の著者から「私が世話になっている人が本を出したがっている」と頼まれたら、編集者も無下には扱わないでしょう。
私が主宰するビジネス著者養成スクールは、編集者とのコネクションを提供する場でもあります。30人を超える編集者が一つひとつの企画書を見てくれるからこそ、著者デビューを果たす人が後を絶たないのです。
●親のコネは「神様からのギフト」
お金に困らない人は、使えるコネはとことん使います。そして、コネクションをつくることを怠りません。だからこそ、稼ぎ続けることができるのです。
「コネに頼るなんてカッコ悪い」「コネを使うなんて、汚い人間がすることだ」などと、毛嫌いする人は意外と多い。
そういう人は、芸能人の二世タレントを「親の七光りでデビューするなんて許せない」と怒りをあらわにするものです。しかし、親のコネもその人の才能(神様からのギフト)のひとつ。芸能界はきびしい世界ですから、いくらコネを使っても実力がなければ後々淘汰されていきます。
最も避けなければならないのは、実力や能力があるのに、それを発揮する場がないということです。自分の能力をフルに活用し、お金に困らないためには、効果的なコネクションを見つけて使うことが大切なのです。
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