利回りには「標準」がある

続いて、2番目の「り」である「利回り」についてお伝えします。

どんな投資商品にも、標準的に想定される利回りがあるものです。

たとえば、毎月一定の金額を投資していく積立投資については、年間利回り1桁後半のパーセントが世界標準です。

その理由は、米国の代表的な株価指数であるS&P500の過去30年間の平均利回りが、1桁後半となっているから。ちなみに株価指数とは、株式の相場の状況を示すために、個々の株価を一定の計算方法で総合し、数値化したもの。日本の代表的な株価指数である日経平均株価(日経225)はご存じの方も多いと思います。

この株価指数を、複数の会社に分散投資していると考えれば、このくらいの利回りが標準になるということがおわかりいただけると思います。そして、このくらいの利回りがあれば、十分に私産を作っていくことができます。

一度に資金を投入する一括投資に関しては、高くても年間利回りは20%だと考えてください。世界中で投資の神様と言われている「ウォーレン・バフェット氏」の過去53年間の投資実績が、平均年間利回り20%強。世界一の投資家が全力で実行して出せる年間利回りを超えるのが難しいことは、容易におわかりいただけると思います。

高い利回りを求めればその分、リスクも高まりますので、特に初心者は、利回りを欲張らないことです。

流動性が低いと、いざというとき後悔する

最後に、3つめの「り」である「流動性」についてです。

流動性とは何かを簡単に言えば、「現金化のしやすさ」となります。ポイントは以下の2つです。

・現金化までにどれくらいの時間がかかるか

・現金化するためにかかる手数料がいくらか

最も流動性が高いものが銀行の普通預金です。手数料が少々かかることはありますが、24時間いつでも、ATMから現金を引き出すことができます。

これが定期預金になると、流動性が低下します。その代わり、金利は高くなります。流動性が低下する代わりに金利が高くなるのは、一定期間、引き出しを停止することで、預けられた資金を銀行が運用しやすくなるためです。

終身保険や投資信託になると、満期になる前に現金化するには手数料を払い、契約を解除する必要が出てきます。解約時の手数料がいくらかかるかによって、リターンが確定します。

極端な話ですが、運用利回りがとても優れた商品でも解約手数料が高いために、現金化した際に利益がなくなってしまうようなこともあります。あるいは、解約してから手元にお金が戻ってくるまでに1年以上かかるようでは、本当に必要な時にお金が足りなくなるリスクもあります。

以上が、投資に大事な3つの「り」です。何か金融商品に投資をする際には、ぜひこの順番でチェックしてみてください。

投機と投資は似ても似つかない

最後に一言だけ言っておきたいことがあります。それは「投資とはギャンブルではない」ということです。

ギャンブルは、投資ではなく「投機」です。この二つは、明確に違うものです。

投機とは、誰かが儲かれば誰かが損をするという、「ゼロサムゲーム」の世界です。ギャンブルが悪いとは言いませんし、そこで勝ち続けている人がいるのも事実です。ですが、それによって未来を設計するのはリスクが高すぎます。

ギャンブルを行うなら、なくなっても問題のない余剰資金でやることをオススメします。

一方、投資は、市場の拡大を背景に誰もが同時に資産を増やすことが可能な世界です。

例えば、日本よりも成熟度は低いが、日本以上に成長をしている国は新興国の中に数多くあります。資本価値が高い日本円をそのような新興国に投資することで、新興国の成長と同時に資産も増えていく。だから、誰かから何かを奪ったりすることなく、資産アップが可能となるのです。

その際、先ほどのようなポイントを意識することで、リスクを極力下げて長期的に堅実に利益を生み出すことができるようになるのです。投資とは決してマネーゲームではありません。

鈴木隆史(すずき・たかし)
日本私産運用協会代表理事
明治大学商学部卒業。食品(飲料メーカー)の営業と開発、青果物商社の営業マネージャーを経て、現在はファイナンシャルコンサルティング企業で活躍する。20代後半にビジネスにチャレンジするも失敗。クレジットカード7枚のリボルビング払いまで手を出し、一時は借金返済のためにトリプルワークを経験。自身がお金に関して何も知らなかったので、これから私産について勉強していく方々に分かりやすく伝えたいという想いが強い。子供向けファイナンシャル教育の底上げのためにも、まずは大人から基礎を学ぶ必要があると考えている。日本私産運用協会の理念に共感し、2013年に協会認定講師資格である私産運用プランナーに合格。以降、協会の講師とし公演活動を行う。ファイナンシャルプランナーの有資格者でもある。協会の理念を深く理解し、分かりやすく正確に伝えるその姿勢は、協会を代表する私産運用プランナーとして称賛を得ている。2015年より日本私産運用協会の代表理事に就任。また同年にファイナンシャルカンパニー日本法人の代表に就任。日本私産運用協会( http://j-pama.org/ )(『THE21オンライン』2020年03月27日 公開)

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