コロナ禍において、自宅で料理をする人が増えているという。食べものは健康を構成する基本要素であり、健康は経営者にとっても大きな関心事だ。
今回は『アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事 高脂質・低糖質食で、みるみる腹が凹む』出版記念企画として、監訳者の金森重樹(かなもりしげき)氏に話を伺った。
金森氏自身、多くの企業オーナーであり、歯科医院を経営していたことから健康分野にも造詣が深い。ダイエットに関するTwitterアカウントのフォロワー数は12万人を超え、そこでダイエットonlineサロンを主催している。
「経営者のための健康的なダイエット」をメインテーマに全5回のインタビューを実施。
連載最終回は、医療情報に惑わされずリテラシーを高めることの勧めについて伺った。(聞き手:山岸裕一、編集構成:上杉 桃子)※本インタビューは2020年4月に実施
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人間の腸はライオンや草を食べないオオカミの仲間
--前回は、骨が理想的な栄養食だとのお話でした。続きを伺います。
人類は何を食べてきたのか。歯だけではなく腸から考えようとなると、例えば馬や牛は体長に対して10倍や20倍も腸が長い。なぜ長いかというと、腸で草を発酵させて、そこで生まれるアミノ酸を間接的に吸収することで栄養を得ているんです。
ところがライオンやオオカミはたったの4倍です。ライオンやオオカミは草を一切食べないので直接、高エネルギー物質を吸収するだけ。だから腸は短くていいんですよ。
人間の場合は4.5倍なんです。つまり、人間の食性はほぼ肉食なんです。食物繊維や野菜をちょっとでも食べれば便秘になるのは当たり前なんです。腸の長さが短く、食物繊維は詰まるからむしろ便秘を悪化させる。 (参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3435786/)
人間の腸は肉食に適する構造を持ってるから、高エネルギーの脂質が多いものを摂ることを前提に作られているんです。
―なるほど。
ここで1つだけ反論が来るんです。マッコウクジラはイカを食べるけど、腸が長いではないかと。マッコウクジラの腸の長さはたしかに牛や馬に近いです。なぜかというと、マッコウクジラは牛と同じ系統に属する(ウシクジラ目)からです。
鯨って鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)といいます。これは形態解析ではわからなかったのが、分子生物学というDNAから調べる方法で調べたら、もともと牛と同じ系統だよねという話なんです。それが陸からの水生化により、陸で体重維持ができるような、高エネルギーの海藻を確保できなくなったからイカを食べて仕方なく生き残っただけなんです。
だから、マッコウクジラは除外して考えるべき。それを除けば、ヒトは食性がほぼ肉食に考えても問題ないわけです。
私は、人間が便秘になる理由は、骨髄主食だったものが骨を食べなくなってマグネシウムが不足したからだと考えています。だからマグネシウムのサプリでの摂取は人間の代謝に必須です。
人のエネルギーで必要な補酵素、補因子は本来、骨から摂る場合は正常に作動するのが、現代は野菜を食べる事で肉と骨を食べる場合と比べたらビタミン、ミネラルが欠乏しているわけです。ひとつ簡単な例を挙げると、200グラムのお肉から取れる鉄分と同等のものをほうれん草から摂ろうと思うと、毎日バケツ4杯分です。 (参照:方丈社 「うつ消しごはん」 藤川徳美 著 (2018年) )
なぜならば植物では非ヘム鉄で、動物はヘム鉄だからで、吸収量が10倍以上違います。そうした不足を補うのにサプリではなく食品からでもいいんですが、ならば毎日、骨だけを食べなさい、それができないならヘム鉄よりもさらに吸収率のよいキレート鉄を飲みなさいといいたいです。
また、野菜からマグネシウムを摂れないので、サプリメントから摂りなさいということなんです。あとは、マグネシウム以外にビタミンCと脂質が足りないから便秘になるんです。食物繊維は先ほどの論文のように関係ないです。私は年単位で一切野菜を食べていませんが、便秘になったことがありません。
アメリカで巻き起こったアンセル・キーズvs.ジョン・ユドキン論争
第1回でもお伝えしましたが、私はもともと、歯科医院の再生経営を行っていました。歯科医院の再生経営を行う中で見つけた論文が、冒頭の「4週間、歯を磨かない代わりに、4週間の食べ物の中でしっかりと糖をカットする方法」です。 (参考: https://aap.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1902/jop.2009.080376) これをパレオ、旧石器時代食ダイエットともいいます。旧石器時代の食事をしたらどうなるかという実験論文を目にしたのが最初のきっかけで、それによって口腔内環境が改善されたというんです。
しかしこれはある意味で当たり前の話です。つまり、サバンナに歯ブラシの製造業者は存在しないですよね。サバンナに棲むライオンやハイエナは毎日、ものを食べたあとに歯を磨きますか?
だから本来、人間が正しいものを完璧に正しい状態で食べたら一生歯を磨かなくても良いのです。虫歯や歯周病になることなく持ちます。歯が欠けるというのはサバンナでは命が尽きるときなんです。
それで、私も自己実験をしようと思ったわけですね。そしたら、口腔内環境もすごく良くなりましたけど、びっくりするぐらいのスピードで急速に痩せていくわけですよ。
もうひとつのきっかけは、ジャーナリズムNGOのワセダクロニクルです。世の中のテレビ番組に「名医が教える」と銘打ったものがあるじゃないですか。それらの健康番組は、ほとんどスポンサーの意向や製薬会社の意向でキャスティングが決まります。 (参考:https://db.wasedachronicle.org/)
番組にキャスティングをされる段階で、例えば日本糖尿病学会の意向を受けたり、製薬会社からワイロをもらいながら皆さんコメントをしていたりします。スポンサーの意向によって結果が取捨選択されて、結果が捻じ曲げられることでに正しい情報をつたえられていません。
その最大のものが、アイゼンハワー大統領が心臓病になったときに心臓病の原因は何かと論争が起きた、通称「アンセル・キーズvs.ジョン・ユドキン論争」です。
なぜ心臓病になるのかと当時大々的に学者を巻き込んで行ったんですが、アンセル・キーズは「動物の脂によって血管が詰まるから心臓病になる」といった。
一方、イギリスのジョン・ユドキンは動物の脂は関係ないと。糖質によって血管が詰まると。「糖質がインスリンで中性脂肪に変わって、血管が詰まる」といった。
どちらが勝ったかというと、動物の脂肪で血管が詰まるから心臓病になるんだ、という話にそのときはなった。(でも後に裏の事情が発覚します)。
話を少し戻すと、ワセダクロニクルのデータベースに、製薬会社が医療関係者への贈り物やお弁当や食事接待とか交通費、宿泊費、知見の紹介料などを出していますが、このデータベースを使えばどこの製薬会社がその医師にいくら払ったかがわかるようになっています。テレビの情報ではなく、スポンサーのついてない論文の結果にこそエビデンスとしての価値があります。つい最近になって「動物の脂はむしろ心疾患リスクを減らして、糖が悪者だった」ということが発覚しました。
その当時は動物の脂で血管が詰まって心臓病になるといったアンセル・キーズが支持されたんですけど、アンセル・キーズの実験は実は全米砂糖協会が3人の研究者らに5万ドルの賄賂を贈ってやらせていたんです。その後、30年間も脂が体に悪いとされていたため、アメリカでは肥満者が激増したんです。 (参考1:https://www.huffingtonpost.jp/foresight/sugar_b_14275570.html 参考2: https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2548255)
脂を摂らない「ローファットブーム」が起きたから肥満になったんです。ローファット(低脂質)の食品は美味しくありませんから、味を整えるために糖が入っているんです。本当に低脂質にすると美味しいと感じないから、そこで同じ程度の美味しい状態にするために糖を入れた。
だから、低脂肪はイコール高糖質と思ってもいいくらいです。これによって、アメリカの肥満者が激増していったわけです。たとえば『カロリー計算』の前提のアトウォーター係数とか『PFCバランスが良い食事』とか、『脂質が心疾患の原因』とか前提が嘘の世界の中いろんな実験をしているから、根っこの常識が違っているんです。
悪者にされていた脂肪こそが健康にとって重要な役割を果たす
―よく分かりました。最後に、健康を維持するためのダイエットを続けるコツはありますか
オンラインサロンではTwitterで毎日記録をつけています。体重の増減は前日食べたものではなく3日前から前日までのものが影響しています。
毎日の記録によってフィードバックを得ながら、自分の食事を見直していくことが大切だと思います。記録すること、フィードバックを得て改善することによってPDCAサイクルを回していくことが継続のコツかと思います。
―この書籍をどう読んでほしいか、メッセージをお願いします。
アンセル・キーズvs.ジョン・ユドキンの論争で悪者にされていた脂質こそが健康にとって重要な役割を果たすことについて、本書がいままでの脂質に対する常識を変えるきっかけになれば幸いです。
―ありがとうございました。
※個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません。
(提供:THE OWNER)