◉慈善事業家としての側面

現在、カルロスはビジネスの第一線を三人の息子たちに任せ、第一の関心をメキシコ・ラテンアメリカにおける教育・保健や社会福祉・雇用対策への慈善事業(フィランソロピー)に向けています。

例えば教育面では、2008年に彼が慈善事業のために設立したテルメックス財団とカルロススリム財団から、メキシコ国内の1400の公立学校に10万台以上のコンピュータが寄贈されました。他にもメキシコやラテンアメリカを中心に奨学金や学費補助・自転車の寄贈などの支援を続けています。個人的な寄付も含めて、約16万人の若者の大学進学を支援しました。
2011年には、複合都市開発の一部として、メキシコ、ヨーロッパなの美術品を中心に6万6000点を所蔵する入館料無料の「ソウマヤ美術館」を建設します。美術館の名前はなくなった夫人の名にちなんで名づけられ、愛妻家としての一面を覗かせています。
健康に関する慈善事業では、2007年にラテンアメリカ周辺地域の健康問題の対策のために、カルロス・スリム・ヘル研究所を設立しました。更に2010年にはハーバード大学とMITの共同で行っているガンと肝臓病・糖尿病に関するゲノム研究に対して約58億円を出資しています。
また雇用では、その所有する事業によってラテンアメリカ全体で20万人以上の雇用を創出しているようです。

以上カルロス・スリム・ヘル氏の生い立ちや彼が携わる事業について紹介してきました。世界一の大富豪の実像を少しでも掴んで頂ければ幸いです。
カルロス氏は典型的な実業家であり、企業買収における鋭い嗅覚と経営手腕で多くの成功を収めてきました。そして、彼が代表を務める通信会社系列は、中南米での成功ビジネスの好例でもあります。

なお、カルロス氏が基盤を置いている中南米ですが、今後も目が離せないチャンスに溢れた大陸です。
中南米ではかつての宗主国のスペインやポルトガルの影響が大きく、多くの国が同じような文化圏に所属し、言語もスペイン語(中南米の人口の63%)とポルトガル語(中南米の人口の34%)と非常に類似している言語で完結しています。しかしその一方で、中南米諸国は経済連携や規制・仕組みの統合が遅れ、様々な障害となっています。これらの障害が取り払われたとき、中南米各国は個別の小さい市場から、一気に魅力的な大陸市場に変わる可能性があります。
ほぼ地球の裏側に位置する中南米に対しては意識が薄くなりがちですが、今後も目が離せません。

BY RYU

【参考】

Carlos Slim helu
アメリカ・モビルとカルロス・スリムの立身出世物語
Grupo Carso
テルメックス、来季もザウバーのスポンサーを継続へ
Carlos Slim’s bulging portfolio
アメリカ・モビル、テルメックス完全買収を提案-約5000億円で
統合が中米市場の魅力を高める
中南米企業のグローバル化戦略