仕事に大きなやりがいを感じてひたむきに取り組んできて、気がつけばそれなりの収入が得られるようになった。このように実感している人は、資産管理会社を設立することによって、より効率的に蓄財しながら、出ていくお金も極力抑えて保全に努めるという次のステージへ進んでもいいかもしれません。

多くの富裕層が資産管理会社を設立する3つの理由

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そもそも資産管理会社とは、現金や預貯金、債券、株式、不動産などといった所有資産を管理することを目的として設立する法人のことを指します。いわゆるプライベートカンパニーで、利潤の追求や事業を通じた社会への貢献に励む一般的な会社とは一線を画し、あなたや家族の資産を有利に増やすことと、しっかりと守り抜くための存在です。

富裕層が主に資産管理会社に求めているのは、①自分が得ている収入に課される税金を抑えること:個人の所得税よりも法人の税制は何かと優遇されている②存命中に次の代への所得移転を円滑に進めること、③相続発生時に相続人の税負担を軽くすること−−といった3つのポイントに集約されます。それぞれについて、詳しく見ていくことにしましょう。

ポイント1:税金の負担軽減

同じ金額の年収(年商)であっても、個人が得たものとして所得税の対象となるケースと、法人が得たものとして法人税の対象となるケースでは、税負担がかなり違ってくることがあります。例えば、課税所得4,000万円超の個人に課される所得税の税率は45%(2020年6月時点)で、住民税と合計すると最高55%に達しています。

これに対し、資本金1億円以下の会社に課せられる法人税の実効税率は33.58%です。仮に5,000万円の年収があったとして、それを個人の所得として申告すると半分未満しか手元に残りませんが、資産管理会社が得た所得として扱えば、6割強も確保できるのです。

しかも、個人と比べて法人は経費として計上できる対象が広く、収益から損金を差し引くことも可能です。

ポイント2:家族への所得移転(生前贈与)も有利に進められる

資産管理会社を設立している人の多くは、自分の家族をその従業員として雇用し、法人に入ってきた収入の一部で給与を支払っています。こうして所得を分割することで、個人が単独で稼いでいたお金として申告するケースよりも、税負担を抑えられます。

個人間で単純に所得移転を行う(お金を分け与える)と、税制上では贈与とみなされます。生前贈与の非課税枠は1人当たり年間110万円で、個人間でこれを超える所得移転を行うと、最高税率が55%に達する贈与税を課されます。

その点、資産管理会社を通じて給与として支払う形式なら、年間110万円の枠にとらわれず、円滑に家族間の所得移転(生前贈与)を進められるわけです。

ポイント3:万全の相続対策を行って揉め事を未然に防ぐことも可能に

多くの富裕層が資産管理会社で得られるメリットの中でも特に重視しているのが相続対策です。相続税の申告・納税には「被相続人の死去を知ってから10カ月以内」という期限が定められており、それまでに納税資金をキャッシュで用意する必要が生じます。

富裕層の中には、現金・預貯金と比べて相続税評価額が低くなる点に着目し、複数の不動産を所有している人も少なくありません。ただし、不動産はすぐには現金化しづらいというデメリットがあります。

その点、法人所有の資産なら、その代表者が死去しても、相続の対象にはなりません。また、先述したように生前贈与も進められるので、存命中から道筋が明確になっており、相続発生後の遺産分割協議でも揉めにくくなります。

資産管理会社設立の3つのメリット、まとめ

万全の策を講じている富裕層の間では、資産管理会社を設立することは常識だと言われているようです。資産管理会社は一般企業とは異なり、資産のある人が資産管理会社を所有することで節税や家族間の給与、また相続対策などさまざまな面でそのメリットを享受できます。日本の税制上、法人名義の方が相対的に優遇されていることが多いため、管理会社を設立する効果は少なくないでしょう。

資産管理会社にはさまざまな活用法があり、蓄財した資産を次世代へとバトンタッチしていくうえで数々の利点があります。今ある資産を守り、さらに増やしていきたいと考えているなら、大いに注目して損はないでしょう。(提供:Wealth Road