外国人労働者は500万人規模に
さて冒頭で「人口問題は一番確実に予測できる未来だ」という話をした通り、2030年問題は必ず起きる未来です。だから行政も既にその対応に乗り出しているのです。
それが何かというと、昨年国会で議論となった「外国人労働者のビザ条件の緩和」です。具体的には単純労働者にもビザを発給することが決まりました。
都会で生活をする人は見慣れた光景ですが、コンビニにしても外食にしても東京の労働現場は外国人労働者抜きには成立しません。統計によれば国内で働く外国人労働者は150万人規模にまで増加しており、年率2桁の増加率で増え続けています。
この条件を単純労働者に開放すれば、さらに外国人労働者は増加するでしょう。単純計算で毎年10%ずつ外国人労働者が増加すると仮定すれば2030年にはその規模は500万人に達します。
2030年の日本の人口構成で圧倒的に不足するのが若年労働力であることを考えると、日本経済のインフラが2030年においても維持できるためには外国人労働者が激増する以外に解決策はなく、実際に行政はその前提で政策の舵を切っているわけです。
当然のことながらこの政策変更は、保守派の日本人から見れば日本文化の変質を伴います。
外国人労働者が少数派だったからこそかすかに維持できてきた日本のビジネス文化が、外国人労働者が主力になることで大きく変わることになる。さらにはビジネスだけにとどまらず日本文化自体が維持できなくなるリスクが顕在化する。これが予測不能な一つ目のリスクです。
70代まで働く社会はもう目前に来ている
労働力の確保という点では2030年にはもう一つ、大きくあてにできる生産年齢人口が増加します。それが前期高齢者です。
昨年、金融庁が受け取りを拒否した「豊かな老後のためには2000万円の金融資産が必要だ」という内容の有識者会議のレポートがありました。現実には超高齢化社会では老後にお金が必要なことには間違いありません。
一方で、私たちが年金を受け取ることができるタイミングは徐々に後ろ倒しになっています。いずれ私たちも70代前半まで働かなければ普通の生活が成り立たなくなるというリスクが見え隠れしはじめています。
おそらく2030年の未来はそうなるでしょう。だとすれば後期高齢者以外の高齢者人口はその大半が引退者ではなく実質的に労働力人口だということになります。生産年齢人口の定義は15歳以上65歳未満の層を指しますが、労働力人口とは「働く意思のある人口」を指します。
つまり生産年齢人口が850万人不足する時代でも前期高齢者が働き続ければ労働力人口は増加するわけですが、その社会はおそらく高齢者にとって居心地の悪い社会になるという二つ目のリスクが内在します。