最大の障壁となるのは「行政」の問題
そしてトヨタが衰退を避けられない最大の障壁となると予測されるのが雇用です。自動車産業はその裾野の広さから242万人の雇用を支えています。これはわが国の就業人口の4%弱を占める数字です。もし自動車産業が脱ガソリン車へと舵を切るとその雇用が失われてしまう。
実は、電気自動車化の動きについては90年代にアメリカのゼネラルモーターズが推進し始めたにもかかわらず、不可解な形で取りやめるという陰謀論のような事件が起きています。これは『誰が電気自動車を殺したか?』というドキュメンタリー映画にもなっている話です。
電気自動車化は雇用が失われる、ガソリンの需要が失われる、どちらの視点で考えてもアメリカの政治家が強い圧力をかけてくる要素がたんまりとある話です。そしてGMの電気自動車プロジェクトは実際に閉鎖へと追い込まれました。
トヨタが本気でCASEへと舵を切ろうとすると、そこに立ちはだかる最大の障壁はおそらく行政だということになるでしょう。両手両足に巨大な足かせをつけたままトヨタがあがき続ける2020年代に、それを横目にアメリカと中国の巨大IT企業は完ぺきなCASEのビジネスモデルを確立することになるでしょう。
あくまで2020年時点での状況から導出されたロジックではあるのですが、プロとしてはトヨタの衰退は回避しづらいものと読み取れるのはこのような理由からなのです。
鈴木貴博(経営戦略コンサルタント)
(『THE21オンライン』2020年06月30日 公開)
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