世界の航空業界は新型コロナ禍で過去最大の苦境に立たされている。日本も例外ではなく、国内航空大手のANAホールディングス(以下、ANA) <9202> の2021年3月期第1四半期(4〜6月)決算は1088億円の最終赤字となった。後段で述べる通り、ANAの株価は4月6日に2060円の安値を付けたあと、非常事態宣言の解除で6月8日の高値2936円まで43%戻していた。だが、その後は新型コロナウイルスの感染「第2波」の再燃等が警戒されて6月の高値を抜けない状態が続いている。
今回は世界の航空業界とANAの現状を見ていこう。
新型コロナ危機、世界の航空会社を直撃
6月9日、世界の8割以上の航空会社が加盟しているIATA(国際航空運送協会)は、2020年の世界の航空会社の最終利益が843億ドル(約8.9兆円)の赤字に転落するとの見通しを示した。背景には新型コロナ危機の影響で旅客需要が前年比半減の22億5000万人に落ちこむとの見立てがある。各国の航空会社は政府や銀行などからの支援(資金調達)で対応しているが、民間からの借り入れ等を合わせた負債は2020年末で5500億ドルに達する見込みであり、需要が戻らなければ、この負債が航空会社の経営を圧迫する可能性があると指摘している。なお、IATAは2021年についても158億ドル(約1.7兆円)の赤字を予想している。
実際、世界の航空大手の4〜6月期決算は赤字が大きく拡大した。赤字トップは米デルタ航空で売上88.5%減、約6100億円の赤字、2位は仏エールフランス‐KLMで売上89.3%減、約3000億円の赤字、3位は米アメリカン航空で売上85.7%減、約2200億円の赤字となっている。加えて、体力のない航空会社の中には破綻に追い込まれたところもある。たとえば、タイ航空やノック・エアラインズ(タイのLCC)、中南米のラタム航空、メキシコのアエロメヒコ、英ヴァージン・アトランティック航空、イースター航空(韓国のLCC)等が破綻状態にある。
リーマン・ショックを超える危機に直面
日本も例外ではない。冒頭で述べた通り、ANAの4〜6月期決算は売上が75.7%減、最終赤字が1088億円となった。同じく日本航空 <9201> は売上78.1%減、937億円の赤字となっている。