不動産投資やローンの仕組みについて少しかじったことのある人ならば、「マイホームよりも賃貸の方がコスパが良い」と考える向きは多い。あくまで条件によるので必ずしもそうなるわけではないのだが、出口戦略を考えておかないと、不動産は将来的に膨大な出費を強いる「お荷物」となりかねないからだ。

ところが、不動産の負の側面を知りながら、マイホームを所有するのが『億を稼ぐ人の考え方』著者である中野祐治氏である。

中野氏の著書から、不動産が「負の遺産」となりうる仕組み、またそれを知っていてもマイホームを購入した中野氏の体験談を見ていこう。億を稼ぐ人ならば誰しもが常識として持っている、「資産」に対する考え方が垣間見える。

(本記事は、中野祐治氏の著書『億を稼ぐ人の考え方』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)

家を買うなら、借り入れせずに買え

家
(画像=PIXTA)

「持ち家は資産」という常識もつくられたものです。「車は資産」という常識も同じです。

資産とは、持っているとお金が増えるものであり、負債とは、持っているとお金が減っていくものです。

そう考えると、家も車も自分で使っているかぎり負債です。

家であれば、一度入居してしまうと価値は大きく下がります。固定資産税は持っている間はかかるし、傷んでくると修繕費もバカになりません。自動車も同様です。車検、駐車場代、重量税、自賠責、ガソリン代。どれも私たちの口座からお金を奪っていくのです。

しかも、ローンを組むと利息まで持って行かれます。

とくに住宅ローンを組んで家を買ったなら、住む人にとっては負債であり、銀行にとっての資産であるということになります。

日本の住宅ローンの起源

日本で住宅ローンが始まったのは、明治時代。

意外なことに、銀行などの金融機関ではなく、不動産業からでした。

日清戦争が終わり、経済が活性化してくると、これまで住宅の取得にあまり縁のなさそうだった一般市民が家を買うことを検討するようになりました。

しかし、このころは住宅ローンのような制度がなかったことから、一般の金貸しから資金を借りて家を買うという方法しか取れませんでした。そのため高利貸しなど、悪質な業者が暗躍するようになり、社会問題となっていました。

この状況を憂慮した安田財閥の始祖である安田善次郎が、「東京建物」という不動産会社を興し、ここで建物の売買から、それに伴う割賦(かっぷ)払いの制度を創設したのです。

1896年のことですから、じつに120年以上前に住宅ローンは始まったのです。

そして、その後、小林一三(阪急電鉄の始祖)による「土地付き住宅の月賦販売」が功を奏して、関西地区での中間層の土地購入が広まるきっかけとなりました。

小林一三は明治の終わりごろ、いまの阪急電鉄の元になった鉄道を開業しました。

当時は鉄道建設ブームで、すでに阪神、南海、京阪などは都市間を結ぶ鉄道として開業していました。そんななか、小林一三は大阪の中心・梅田から、ほとんど人の住んでいない寒村に電車を走らせたのです。

「あんな田舎に電車をつくって、バカじゃないだろうか」と誰もが思いました。

しかし、彼は鉄道を開業させる前に、沿線に広大な土地を買っていました。そして区画をしっかり計画した住宅地を開発しました。急速な工業化によって、大阪などの大都市の住環境が悪化しつつあることに目をつけていたのです。

「郊外に住んで、都市に通勤する」という常識をつくり出したということです。

おまけにその住宅に、一般の会社員が買えるように「月賦」という支払い方法を取り入れました。サラリーマンでも買えるような仕組みを提供したのです。

これで小林の開発した郊外住宅は、飛ぶように売れました。

かつての日本は高度経済成長期で、人口もどんどん増え、土地代も上がり続ける特殊な時代でした。住宅ローンで家を買った人は、土地と家の価値が上がり、買ったときよりも高く売れて、それによって財を成した人も多かったようです。

しかし、いまはどうでしょうか?

高度経済成長期でもなく、土地の価値がどんどん上がっていく時代でもありません。

買った瞬間から値段が落ちていくものに対して、長期ローンを組んで、莫大な借金をするのはいかがなものでしょうか?

日本はこれから人口がどんどん減っていきます。

ですが、新しいタワーマンションはどんどん建ってきています。どう考えても供給過多です。将来は空室だらけになり、資産価値が上昇するどころか、むしろ下落する一方です。

それなのに、

「賃貸住宅に居住していたら、家賃は毎月捨てているようなもの」
「同じくらいの金額の負担をするのであれば、持ち家に払ったほうが資産になる」

などの常識を、誰かが刷り込んできたのです。

とりわけ、近年都心部に続々と建設されたタワーマンションは、都心居住の象徴として人気が高いです。タワーマンションを買った多くの人が、将来自分が手に入れたマンションが値上がりすることを期待しているといいます。

本当に「将来資産になる」のでしょうか。

私はあるとき、都内のとある湾岸タワーマンションを「買った場合」と「賃貸の場合」でシミュレーションしてみたことがあります。

こまかい数字は省略しますが、とあるタワーマンションの一部屋を買った場合は「8587万円」でした。

これが賃貸住宅の場合、住んでいるマンションは自分の資産にはならないものの、25年間で「6250万円」の賃料を支払うだけで済みました。

さて、本当に大事なのはここからです。

賃貸より25年間で約2337万円も多くのお金をつぎ込んだとしても、「26年目からは自分の資産になる」というのが〝持ち家有利論〟の根拠となっています。

たしかに、賃貸住宅は26年目以降も賃貸住宅です。

しかし25年後、ついに自分のものとなったマンションは、どんな資産になっているのかということに想いをめぐらす人はあまりいないようです。

ローン完済後にそびえ立つのは、経年劣化著しい「築25年のマンション」です。一部のブランド立地のマンションを除いて、資産価値が上昇する可能性がほとんど期待できないなか、(資産価値を維持向上させる)修繕工事のための追加費用が必要になります。

入居者世帯も、25年もたてば時代の変化の波にさらされる。全員が同じように希望を持って取得した湾岸タワーマンションも、すっかりコモディティ(汎用品)化していることでしょう。

建物代が不動産価値の多く(試算では4分の3)を占めるタワーマンションは、25年もたてば、劣化によりその価値が半分以下になっていても不思議ではないのです。

純粋に資産価値に重点をおいた「投資」として捉えた場合、25年後に取得額を維持できず、場合によっては半額くらいに元本が減じてしまう投資商品は、本来誰も買わないでしょう。

あなたが長期ローンを組んで家を買って、得をするのは誰か?

不動産業者、建設会社、固定資産税が入る地方自治体、金利を得る銀行……彼らがつくった常識に踊らされてはならないのではないでしょうか。

家を買いたい!その理由は何ですか?

ここまで偉そうに語ってきたのですが、私はこのことを理解したうえで、持ち家を建てました。もちろん考えがあってのことです。

ちなみに私は賃貸派です。でも、妻が持ち家派なのです。

私は昔から、お金ができたら自分自身はタワーマンションに住みながら、できたお金で収益物件を買い、家賃収入を得ようと思っていました。

実際、結婚して子どもが生まれてからは、大阪市内のタワーマンションの33階に住んでいました。

事業をがんばっていった結果、1億円のキャッシュをつくることができたので、「そろそろ収益物件を買いたいな」と妻に話したところ、妻は「子どもがもうすぐ小学校に入学するから、家を建てたい」と言いました。

私も妻も同じメンターに学んできたので、「持ち家はお金を生まない」ということは、もちろん妻もわかっていました。

そのことをわかっている妻が、それでも家を建てたいというのであれば、それを叶えてあげたいと思い、妻へのプレゼントだと思って家を建てることにしたのです。

私の父が昔に自営業で建築士をしていましたから、父に設計デザインを一緒に考えてもらいました。父も喜んでいたので、少しは親孝行ができたかなと思っています。

どうせ建てるなら面白い家にしたいと思い、地下室をつくりました。

地下1階、地上3階と屋上テラスがある家で、土地と建設費用で2億円かかりました。

地下室は35畳のバールームにし、友人を呼んでパーティができるようにしました。プロジェクターとミラーボールとスモークマシンも付けました。

1階は玄関を入ったらガラス張りの駐車場があり、2台の愛車が飾ってあるように見えるようにしました。あとはお風呂と脱衣室。脱衣室が暑かったり寒かったりしないように、エアコンをつけました。2階は50畳のLDKと家事室と妻専用の洗面台。アイランドキッチンで毎日妻が美味しい手料理をつくってくれています。3階は寝室と子ども部屋2つと書斎と納戸の5部屋。屋上は50畳でソファーとテーブルがいくつかとガゼボがあり、屋上でBBQや5メートルの竹で流しそうめんをしたりしています。

7000万円だけ借り入れをしましたが、5年でほとんど返したので、金利もほとんど払っていません。お金を生む資産になっているわけではないですが、妻も子どもも両親も友人も喜んでくれているので、まあいいかなと思っています。

私の場合は、「妻と子どものため」と「親孝行」という理由があったため購入しましたが、それでも1億円のキャッシュができたうえで、さらに金利でも損をすることのないように計算して購入しました。あなたもどうしても家を購入したいということであれば、「何のために?」を冷静にジャッジすることです。

賃貸のほうがいいという意見は変わりませんが、私のように数年で住宅ローンの返済ができたり、一括で土地付きで無理なく購入できる場合に限り、購入するのもアリだと思います。

億を稼ぐ人の考え方
中野祐治
株式会社YAPPY代表取締役。ほかにも複数の会社を経営する実業家。飲食店、オーガニックショップ、人材派遣事業、講演会、業務コンサルティング、ビジネストレーニング事業などを多岐にわたって展開する。大阪府大阪市生まれ。神戸大学卒業後、シャープ株式会社(SHARP)に入社。24歳で経営のメンターと運命的に出会い、そこからメンターに学び始める。26歳のときに親族の借金を肩代わりしていた両親が夜逃げ。借金取りが家に押しかけてくることも経験。その経験から、1回きりの人生を全力で生きると決める。人生において「すべての人を勝利に導く」をビジョンとして掲げ、事業の道に踏み出し、27歳で独立。そのビジョンを実現していくために、「すべての人の幸せのお手伝いをする!」を経営理念として、人々の多様化するニーズやライフスタイルの変化にいち早く応えるために、さまざまなサービスを展開している。39歳ですべての事業からの収入が年収1億円を超える。500人規模から1000人規模の講演会を毎月開催し、多くの若者からメンターと慕われる、いま注目の起業家。

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