「副業解禁」どころか「専業禁止」というユニークな制度を導入しているIT企業がある。同社の公式サイトを覗くと、パラレルワークを通じて、従業員のプロ意識やマネジメント能力を高め、「どこでもやっていける」という自信をつけてもらう狙いがあるようだ。
同社の存在は、個人にとって副業は一つのスタンダードとして定着しており、社会にとって副業推奨が不可逆な流れとなっていることを象徴している。そして、その変化をいち早く察知し、動き始めることが「億を稼ぐ」ための近道ではなかろうか。「勤務先は副業NGだから」と言い訳していると、置いてけぼりを食らうかもしれない。
(本記事は、中野祐治氏の著書『億を稼ぐ人の考え方』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)
空前の「大副業時代」の到来
たまに、「私の会社は副業禁止なんです」と言う人がいますが、政府が副業を推奨していることはご存じでしょうか?
2018年に厚生労働省によって、モデル就業規則にあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文章が削除され、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という規定が新設されました。
つまり、国が率先して副業・兼業を推進しているということです。
政府が副業を推奨する4つの理由
政府が副業・兼業を推奨している主な理由は4つあります。
【政府が副業・兼業を推奨する理由1】
- 「人手不足対策」
大きな社会問題として、少子高齢化に伴う「働き手」の不足があります。
ひとつの会社でしか会社員が働くことができなければ、高齢化社会の進行と共に、ますます人手不足が深刻になっていきます。そこで政府は、副業促進活動に舵を切り、サラリーマンが複数の仕事を持つことができる制度を整えたのです。
【政府が副業・兼業を推奨する理由2】
- 「増税対策」
日本の財政悪化は歯止めがかからず、借金は増え続けています。国民の収入を増やさなければ、税金の支払いがされなくなる。そのことを政府は懸念しているのです。副業をすることによって収入が増加し、税金が支払われやすくなることを期待しているのです。
【政府が副業・兼業を推奨する理由3】
- 「年金対策」
定年後の生活を心配する声があとを絶ちません。
年金受給額が下がっていくことが懸念されているからです。
政府は、国民に「副業を通じて収入を増やし、将来へ向けた貯蓄につなげてほしい」というメッセージを送っているのです。
【政府が副業・兼業を推奨する理由4】
- 「国民一人ひとりの生産性アップによる国力強化」
人々が副業を通じて経験値を増やし、生産力を上げてほしいという狙いもあります。国民の生産力は国力そのものなので、今後待ち受けているさらなるグローバル化の時代に向けて、日本全体で世界経済への価値を上げたいのです。
また、アメリカなど他国に比べて、日本は圧倒的に起業家が足りません。副業を通じてビジネスが生まれる可能性も期待しているのです。
企業が副業を推奨する2つの理由
以上の4つは政府、つまり国の理由ですが、もちろん企業にも理由があるようです。
企業が副業を認める背景は、簡単に言うと2つです。
【企業が副業・兼業を推奨する理由1】
- 「社員の生活を永続的に保証することが困難になってきているため」
1つめは後ろ向きな理由で、主に大手メーカーの工場などに多いです。
業績悪化により給料ダウンが避けられず、「会社の給料だけではあなたの生活は保証しきれないので、自分でプラスオンで稼いで、自分の生活は自分で保証してくださいね」ということです。
これと同じ考え方の代表的な日本企業に、日産自動車、三菱自動車、キヤノン、ブリヂストン、デンソー、花王、トヨタ車体、三菱ケミカル、東芝、富士通などがあります。
【企業が副業・兼業を推奨する理由2】
- 「優秀な人材の流出を避けるため」
2つめは前向きな理由で、「優秀な人材を確保する」ためです。
優秀な人材であればあるほど、各種プロジェクトからの誘いや、会社を通さない形で直接仕事を依頼されるケースも多くなります。
副業規定の制限があると、「副業がNGなら会社を辞めようかな」と、より魅力的で自由度の高い会社に引き抜かれてしまうということが起こります。
これは企業にとって大きな痛手であり、リスクです。ならば「優秀な人材を組織に留めておくために、副業を容認しよう」ということになるのです。
これと同じ考え方の代表的な日本企業に、エンファクトリー、サイボウズ、リクルート、メルカリ、アクセンチュア、ビズリーチ、ヤフー、グーグル、クラウドワークス、日本オラクル、ソフトバンク、ディー・エヌ・エー、エイチ・アイ・エス、日本マイクロソフト、ミクシィ、ロート製薬、ユニ・チャーム、レノボ・ジャパンなどがあります。
自分で自分の所得を上げる、スキルや環境はありますか?
とくに株式会社エンファクトリーは「専業禁止」、つまり「会社の仕事だけをしていてはいけない」というユニークな制度を導入しています。
自身の事業を持つことで起業家精神やスキルが身につくので、人材が早く育ち、本業のほうも加速しているといいます。
株式会社エンファクトリー代表取締役社長CEOである加藤健太氏は、次のように述べています。
「個人が会社に尽くしきることって、リスクのある世の中だと思うんです。リーマンショックのときもそうでしたけど、多くの企業がリストラを実施しましたよね。そのなかで副業の禁止を外す会社も出てきた。ひとつの会社で一心不乱に働くことでの保障がなくなる、不確実な時代だと実感しました。だからこそ、人生や仕事を自分自身でデザインする必要がある。主体的な選択肢を持っておくことって、個人として必須だよねっていう考えです」
ヤフーも副業を認めています。すでに副業を持つ社員の数は数百人に上るそうです。ヤフーの湯川高康チーフコンディショニングオフィサーは、
「社員の面倒を会社が一生見られるわけではない。社員にも個人としていろいろな経験を積んで準備をしてほしい。会社はその環境を整えるべきだ」
と述べています。
すでに世の中はこれだけ変わっています。経済の先行きが見えない不確実な時代において、収入源が会社の給料だけというのはリスクが高いと思いませんか?
リーマンショックのような経済危機や、震災などの大きな自然災害が起これば、瞬時に経済が停滞し、個人の所得はますます打撃を受けます。大企業でも突然倒産するリスクもあります。収入源が1つということはかなりのリスクです。
私も実際に会社員時代に、副業として週末起業をしました。
当時の会社の就業規則は見たことがありませんでした。
「会社の仕事を疎かにする気はないし、土日のプライベートの時間を自分の将来のために使うんだから、別にいいじゃん」
と思ってました。
一度だけ酔った勢いで、同僚に起業のために勉強していると言ったことがありました。
そのときは、こんなやり取りをしました。
「起業なんて危ないからやめとけ、お前が成功できるわけがない!」 「いきなり会社を辞めるわけじゃないし、週末の休みを使って立ち上げるから大丈夫」 「休みの日にまで勉強して仕事するなんて、よくやるな」
彼は、休みの日は普通に遊んでいました。大反対されて一瞬は凹みましたが、自分の人生をよくするためにがんばろうと思い、継続し、人生を変えました。
その同僚がいま、何をしているかは知りません。
ですが、ひとつ確かなことは、私たちが当時いた会社は大リストラをしたということです。彼の人生がよくなっていることを祈るばかりです。
公務員だって安泰ではありません。
労働者の所得を上げて、大きな社会保障費を賄うための副業・兼業の解禁という流れです。
そうなると民間や公務員など関係なく、労働者は自分の所得を上げなければ、今後は生活水準を維持することができなくなるはずです。
社会保障費を確保するためには、公務員だから副業は禁止などと言っていられないのです(いまでも正確には公務員の副業は〝制限がある〞だけで〝禁止〞ではない)。
近い将来、公務員の副業が解禁されることは間違いないでしょう。
そのとき、あなたには所得を上げるために必要なスキルや環境はありますか?
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